COLUMN
VOL.05 古市大藏の岡山表町慕情。
26 August 2020
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岡山のまちづくり・ひとづくりの立役者であり世話人、古市氏による表町を舞台にした考察コラム。

世界が注目する瀬戸内、そして岡山の優位性とは

昨年ニューヨークタイムズが発表した「2019年に訪れるべき52ケ所」に、日本で唯一「瀬戸内」が選ばれました。いまや瀬戸内は世界中で注目される場所であり、観光地としての評価も急上昇しています。これを最近のトレンドのように捉えている方も多いかもしれませんが、実はいまに始まったことではないのです。かの松下幸之助は、日本中がインバウンドを叫び始める遥か前、昭和29年に「観光立国の弁」という論考を発表し、日本の観光政策の必要性を訴えました。その中で彼が定義した日本の一番の魅力が「日本の景観美」。日本の自然の美しさは世界一、二位であると。その代表的な場所として、富士山と並んで瀬戸内海を挙げたのです。近代ツーリズムの祖と呼ばれ、 世界初の旅行代理店を設立したトーマス・クックもまた、「欧州の湖という湖のほとんど全てを訪れているが、瀬戸内海はそれらのどれよりも素晴らしい」と述べています。私は今まで世界各地、数にして109の国を訪れてきました。自然が美しいところ、街並みが素晴らしい所など感動した地域はたくさんありますが、これら他のどの地域と比較しても瀬戸内が素晴らしい場所だというのは、私も実感していることです。ここで岡山の人に自覚していただきたいのは、瀬戸内というエリアにおける岡山の優位性は確実にある、ということ。「岡山」は瀬戸内の玄関口であり、中継地の役割を担う場所です。さらに、食・景観美・アート・医療や健康という癒しもある。こういった総合力において岡山は優れていると思います。有名な寺社がある、特産品があるなど、何かワンポイントで秀でている観光地は他にもたくさんあるでしょう。しかし、これからの観光は総合力なのです。岡山の人はよく「岡山って住みやすいけど何にもないよね」と言いますが、そうではない。その「住みやすさ」を実感できる街こそ、総合的な魅力があると言えるのではないでしょうか。いま、瀬戸内だけでなく岡山でも、世界から観光客を呼び込もうというインバウンドの気運が高まっていますが、まずは国内に向けてその魅力を伝えていくことが大切だと思います。日本の方に来てもらい、その良さが世界に発信されていく、それが世界から観光客が訪れる第一歩となるのではないでしょうか。そのためには、やはり岡山の人が「岡山良いとこだよ」と声を大にして発していかなければならないのです。岡山県民はPR下手だとずっと言われてきましたが、そろそろ克服しなければなりませんね。いまこそ、平均点の岡山から脱皮する時期。岡山は開花前夜にあるのです。

開花した観光地・岡山に生きる「表町Reデザイン」

これまでは「爆買い」という言葉に象徴されるよう、「モノ」を求める旅行が主流でした。しかしこれからは、モノよりコト、「心の癒しを求める旅」に関心が高まるのでは、と思っています。このニーズに合致するのが、これからの岡山です。先ほど、岡山は開花前夜にあると述べましたが、開花するには県民の意識変革も必要なのです。自分の街を正しく前向きに評価し「岡山良いよ」と自信をもって発信すること。さらに、食・景観美・アートなどそれぞれの要素が今の素材をとことん磨き上げていくこと。この両方が観光地・岡山の魅力を高めるために必要になってくるでしょう。ここで私のテーマは、やはり「表町」です。「岡山なんにもない」でなく、「ちゃんとあるんだよ」ということを表町でもって実証していきたい。その中で私の目指すかたちが「表町Reデザイン」というものです。奇しくも私の考えと類似することを、岡山市出身のグラフィックデザイナー原研哉さんも言われていました。今年、岡山商工会議所が行った創立140周年記念式典で原さんが登壇し、「未来資源としての岡山」という講演をされました。その中で岡山の現状を「滞在するための動機付けが弱い」と指摘し、後楽園に続く観光・文化施設の整備を提案するとともに、「ずっと大事に受け継がれたものを未来資源としてどう活用するかが大事」と話されていた。まさにこれが「Reデザイン」なのです。「一回行ってみよう」から「何度も訪れたくなる」《クセになる岡山》となるために。まず私は表町を、岡山の文化を感じられる場所にしていきたいと思います。美味しい食、癒しはもちろん、備前焼や地元のアーティストの作品を展示する場所があっても面白いでしょう。ここに来れば岡山が分かる、岡山のショールームのような場所にしていきたいですね。そして、リピートしたくなるための重要な要素が人的関係だと思うのです。「表町Reデザイン」のコンセプトは人が集まり交わることで新たな価値を生み出すこと。まずは、食・アート・癒しで表町の価値を高め、その価値に共感する人を集める。その集まった人が同志となり、「自分たちで何とかせんといけん」という自助の精神で新たな価値を創り出していく。そんな未来の岡山のかたちを、表町から始めていきたいと思っています。

KOTYAE  カルチュラルアンドメゾン コチャエ

カフェ&企画型イベントホールを備えた多目的スペース。コンサートやカルチャー教室、ワークショップなども定期的に開催している。
岡山市北区表町3-5-19 / TEL:086-206-7788 / 営業:11:00~19:00/ 定休日:火曜日

表町桃太郎ジム

表町2丁目、旧エターフェビルにオープン。「心・体、みんな元気で表町」と掲げ、筋力増強やシェイプアップ、機能改善や介護予防など、多様な目的に対応したジムとして注目されている。
岡山市北区表町2-6-64雷電館3F / TEL:086-237-2111 / 営業:8:00~22:00 / 定休日:日曜日

古市 大藏 /(株)トミヤコーポレーション代表取締役 会長

1945年岡山市生まれ。世界の一流品を扱う時計・宝石の専門店を岡山県内に11店舗展開する㈱トミヤコーポレーションの代表取締役会長。岡山商工会議所副会頭のほか様々な地域経済団体でも役職に就き、長年に渡って岡山のまちづくりに尽力し、地域を担う若手の育成や教育にも携わっている。商人の精神「三方よし(売り手・買い手・世間)」に(地球・未来)を加えた「五方よし」の精神で地域の未来を見据える。
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