LOCAL PRIDE -Shizuoka-
広瀬すず

今までの自分を作ったのは、若さと強運。これからは、本物の力を示さないといけない

21世紀の逸材の羞恥心と本気力。

 二階堂ふみ(24)を筆頭に、土屋太鳳(23)や杉咲花(20)、永野芽郁(19)ら世紀末生まれの女優たちの存在感が増している。その中でも頭ひとつ分抜きん出た存在感を放つのが、今年6月に20歳の誕生日を迎えた広瀬すずだ。 4歳上の姉・広瀬アリスが専属モデルを務めていた雑誌のイベントに来場した際、関係者の目に留まり、周囲に押し切られる形で「ミスセブンティーン2012」にエントリー。見事、同年『セブンティーン』専属モデルとしてデビューを果たした。人前でポージングや演技をすることに恥じらいのあった彼女自身にとって芸能界デビューは気乗りのしないことだったが、その性格は自他ともに認める「負けず嫌いの完璧主義」。「こうなってしまったら、とことんやるしかない」と、モデル業をこなしながら映画やドラマにも次々と出演。15年の映画『海街diary』では綾瀬はるかや長澤まさみら一流女優達にも決して劣らぬ好演を見せ、若干16才にして日本アカデミー賞新人俳優賞にも輝いた。 芝居に対するストイックな姿勢と役へ込める魂の強さで映画関係者たちから「近年まれにみる逸材」と評されてきた彼女の人気ぶりは、ブレイクから数年を経た今も勢いを増すばかり。NHKの連続朝のテレビ小説『なつぞら』(2019年4月スタート)のヒロイン・奥原なつ役にも抜擢され、国民的大女優への階段を着々とのぼりはじめている。

何もない特別な場所。

とはいえ、役者という仕事は決して楽なものではない。俳優というと華やかな面ばかりが目に付くが、公開・放映のタイミングや物語の設定に合わせて季節と真逆の衣装を着なければならないのは序の口で、連日連夜の撮影で一日の睡眠時間が3時間を切ることもある。ある俳優が役作りのため4ヵ月で20㌔もの減量をしたのは有名な話だが、ほかにも膨大なセリフの暗記や、役どころに応じた知識や技術の習得、トレーニングなど、24時間365日をその生業に投じる気概がなければ一瞬にしてその座を奪われる厳しい仕事でもある。だからこそ、彼女らは自らに立ち戻る時間を求めて、あるいは次なるステージに立つ源泉を求めて、束の間の休息を使って旅をする。そんなとき女優・広瀬すずがしばしば目指すのは、中学卒業までの15年間を過ごした故郷・静岡だ。「静岡って、自然が豊かなんです。何もないけど、何年も東京で過ごしているとそれがすごく特別なことに思えるんですよね。地元での一番身近な思い出というと中学校時代で、過去も振り返らないし将来のこともまだピンとこない絶妙な年ごろだったので、自由で、気楽で、何でもないことがすごく楽しかった。学校の窓から富士山をぼーっと眺めたことや、学校から家までの20分の道のりを友達とおしゃべりしながら40分くらいかけてだらだら歩いたことが、何てことないけどとても幸せな時間だったなって、すごく思うんです。もし地元にいてもこのお仕事を続けられるなら、今すぐにでも戻りたいくらい本当に大好きな場所です」。

司令塔と女優業。

そんな静岡時代の思い出の中でも一番深く心に残っているのは、小学生の頃から8年間続けてきたバスケ部活動だ。159㌢と決して長身ではなかった彼女のポジションはポイントガード。味方ゴールから一番離れた場所からゲームの流れを俯瞰し味方の得意や強みを引き出しながらゲームメイクする、いわばチームの司令塔的存在だ。一見女優業とは無関係の単なる部活動だが、この時培われた大局観や洞察力は、女優業にも大いに生かされている。「今年の夏に公開された映画『SUNNY』の大根監督から『空気を作るのがうまい』って言って頂いてはっとしたんです。確かに周りの人たちの気持ちを読んで行動する方なのかなって思います。もともと一歩離れたところから人間観察する癖があって、『こういう場面では、人はこんな風に行動するんだな』って思ったり、表情からその感情を読み取ろうとしたりすることはすごく多い。その過程で蓄積された記憶が自分の引き出しになって、演技や現場での振る舞いに表れるっていうことはあるかもしれないです」。 その『SUNNY』では、美女らしからぬコミカルな表情と演技で強烈な印象を残した。

活躍の裏に芽生えた危機感と決意。

芸能界に飛び込んでから一年足らずで女優デビューを果たし、その後5年間で20数作近い映画・ドラマに出演。もはや若手と呼ぶのもはばかられるほどの華々しい実績を積み上げてきた彼女だが、意外にも今、これまでにない大きな岐路に立たされているという。「素晴らしい作品に恵まれて、幸いにもこれまで楽しくお仕事を続けてこられましたが、それは10代という年齢や運の良さもすごくあったと思うんです。高校生の時に高校生役を演じるのはイメージもわきやすいし、共演者の方やスタッフさんたちにもすごく助けて頂きました。だけど今年ついに20歳になって、これからもどんどん年齢を重ねていくとなると、演者としてちゃんと力がないと絶対に通用しなくなる。ちょうどそんなことを考え始めたときに『チア☆ダン』で共演させていただいた天海祐希さんから『悔しい思いをたくさんしなさい』って言われて、すごく胸に響きました。同世代で素晴らしい女優さんたちもたくさんいる中で、今『このままじゃダメだ』っていう気持ちがすごく芽生えてきてるんです」。 20歳にして、これだけの結果を残し、その上でなお自らを厳しく見つめる慎み深さをも持つ。その姿に、一時のブームでは終わらない未来の大女優の証を見るような気がした。

広瀬すず

女優、モデル。雑誌『セブンティーン』の専属モデルとして2012年にデビュー。2013年放映のテレビドラマ『幽かな彼女』を皮切りに女優業にも精力的に挑戦し、2015年公開の映画『海街diary』では「日本アカデミー賞 新人俳優賞」をはじめ各賞を総なめ。2019年度前期放送の連続テレビ小説100作目となる『なつぞら』(NHK)ではヒロインを務める。


編集者PLUG

シェアする