LOCAL PRIDE —
秋元 康(A K B 4 8グ ループ、乃木坂46、欅坂46の総合プロ デューサー)

「アイドルなんて興味ない」っていう人に
支持されるにはどうすればいいかを考える”

美空ひばりが歌った昭和の名曲「川の流れのように」をはじめ、80年代の「なんてったってアイドル」(小泉今日子)、90年代の「ガラガラヘビがやってくる」(とんねるず)、近年の「恋するフォーチュンクッキー」(AKB48)、「不協和音」(欅坂46)など、手掛けた作品は枚挙に暇がない。昭和から平成へ時代をまたいでもなおヒットメーカーとして時のカルチャーをけん引し続ける秋元康さんの目に、地方はどう映っているのだろう。「例えばカープが勝った時の広島の熱狂ぶりとか、佐賀の県立高校が甲子園で優勝した時のあの盛り上がりを見ると、素直にいいな、すごいなって思いますね。生まれは目黒区ですが、東京の人間にはあんな風に地元が一体になってひとつのチームに熱くなることってほとんどないですから。ちょっとした憧れというか、うらやましい気持ちはあります。だから結婚して妻の実家の福井に”帰る“ようになった時は、ちょっとうれしかったですね。自分にも田舎ができたみたいで」。

弱小野球部とアイドル

そんな秋元さんが総合プロデューサーを務めている「AKB48」のイメージは甲子園を目指す高校球児で、秋葉原の高校に新設された野球部に未経験の素人ばかりが集まって、泥まみれになりながらがむしゃらにグラウンドを駆け回り、試合に勝ち抜き、少しずつ、少しずつ、甲子園に近づいていくll。そんな高校球児のストーリーを「会いに行けるアイドル」というコンセプトに重ね合わせて誕生したアイドルグループだ。が、実際のAKB48プロジェクトは、そんなシンプルなエピソードでは終わっていない。AKB48誕生から3年後の2008年、秋元さんは姉妹プロジェクトとして名古屋市・栄に本拠地を置く「SKE48」を発足。その後も「NMB48」(大阪・難波)、「HKT48」(福岡・博多)、「NGT48」(新潟)などを次々と立ち上げ、17年には瀬戸内地方7県をまたぐ「STU48」を結成。野球部どころか、アイドル甲子園ともいうべき巨大なプロジェクトは、今も進行形で広がり続けている。専用の船上劇場で公演を予定している「STU48」を含め、「AKB48」以外の”ホーム“はすべて地方。各地方からの誘致合戦が巻き起こったのは言うまでもない。

強烈なコンテンツが地方へと人を運ぶ

地方創生とのリンケージは飽くまでも結果であって、それ自体が目的ではない。ただ、地方創生を考える上で、強烈なコンテンツを持ち、それを活用して人を呼び込む仕組みをつくるのは極めて有効だと秋元さんは言う。「例えば石川県の『金沢21世紀美術館』には全国から人が来場しているし、うまい料理が食べられる店があると聞けば、高い交通費を払ってもわざわざ地方まで食べに行く人がいる。僕自身もそういうことはよくあって、地方の料理屋に通い詰めたこともあるし、ついこの前も神戸にうまいパンがあると聞いてスタッフに買ってきてもらったばかり。要は、そこに魅力的なコンテンツがあれば、人は動くということです。地方の人の中には今も東京や大阪をうらやむ人がいるけれど、所詮は隣の芝生。確かにひと昔前は雑誌やテレビに取り上げられたり口コミが広がったりするのにも時間がかかったから人口密度の高い都会に優位性があったかもしれない。しかし、今はインターネットで世界中に瞬時に情報が拡散する時代。もはや地域格差なんてないに等しいんですよ」。

根拠も正解もない

とはいえ地方が常に頭を悩ませるのは、いかにその魅力的なコンテンツを生み出すかだ。これまでも方々でゆるキャラが生まれ、新ご当地グルメが開発され、コンパクトシティーを掲げる地方市街地には続々と巨大な商業施設が建設されてきた。しかし実際には、大金が投じられたものの軌道に乗らず、地方創生どころかその足枷になり果てた事業も少なくない。「何が正解だったのかは、誰にもわからないでしょうね。別のやり方だったらうまくいったのかと考えても、比べようもないから結局分からない。つまり、正解はどこにもないんです。ただひとつ言えるのは、何をやるにせよ、コンテンツとなる施設をつくったりイベントをしたりするなら、それを『点』で終わらせてはいけない。『点』があるなら、それを『線』にして『面』にするところまで考えないと、カタチにはなりません。僕が歌詞を書く時にいつも考えるのは、AKB48のファンだけじゃない、アイドル好きでもない人に支持されるにはどうしたらいいかっていうことです。ファンならどんな歌でも支持してくれるかもしれない。でも、それだけでは何も広がりません。『欅坂46なんて知らない。だけどあの歌が言いたいことはなんか分かる』って思ってもらえるから、次につながっていくんです。地域創生論もそれと同じで、一部の人が頑張ってイベントをしただけでは、そこで帰着して終わり。本当に何かを成そうと思うなら、人と人がつながって、ちゃんとその次をつくっていかないとだめですね」。そのカギは、”根拠のない自信“と”人の縁“、そして最後は”継続力“なのだ、と秋元さん。「AKB48を企画した時もそうでしたけど、根拠を求めようとすると、結局みんな同じところへ行ってしまう。だから根拠なんて逆にない方がいいし、そもそも正解がないのなら根拠があろうとなかろうとそれで行けると信じるしかない。また、人の縁っていうのはすごく大事で、SNSで情報をつなげるのも人ならば、地域創生の取り組みを広げていくのもやっぱり人で、誰かと誰かが縁で繋がって地方は創生していく。どんなに一生懸命やってもうまくいかない時はあるのだけれど、そこであきらめてしまうのではなく、じゃあ次はどうすればいいだろうと考えれば、それは途中経過になる。最終的にはその継続力が、成功と失敗を分けるんだと思いますね」。

秋元 康/ 作詞家。A K B 4 8グ ループ、乃木坂46、欅坂46の総合プロ デューサーを務め、ほぼ全ての楽曲の作 詞を手掛ける。テレビ番組の企画構成、 映画の企画・原作、CFの企画、マンガの 原作など多岐にわたり活躍中。著書に、 小説『象の背中』(扶桑社)、『趣味力』 (NHK出版)ほか多数。

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