LOCAL PRIDE -Okayama-
片山 正通(株式会社ワンダーウォール)

“情報も並んでいる物もフラットになり 地域格差がなくなった今、 「手に入らないもの」は地方にこそある” 

世界一忙しいインテリアデザイナー と言っていいだろう。これまでに手掛 けたプロジェクトは、東京はもちろん、 NYやパリ、ロンドン、ドバイなど世 界中に点在し、現在も、外務省が旗 を振る『JAPAN HOUSE』 をはじめ複数のプロジェクトが国内 外で同時進行中。その活動はもは や”インテリアデザイン“というよ り、空間を媒体とした”ブランディ ング“という様相を呈している。そん な、持ち前の好奇心の強さと軽快な フットワークでパワフルに活躍する片 山正通さんの素地が培われたのは、 高校卒業までの 18 年間を過ごした 故郷・岡山県岡山市だ。

圧縮された空白の時代

「地元は 10 年位前に岡山市に編 入されたんですが、僕がいたころは まだ赤磐郡瀬戸町で。本当に何も ないところでしたよ。若いころはそれ が嫌で嫌でしょうがなかった。でも、 今になって、ああいう時代があってよ かったなと思うんです。何もないな りに雑誌を読んだり音楽を聴いたり して、東京や海外のカルチャーを貪 るように取り込んだあの時代があっ たからこそ、あこがれとかフラスト レーションが圧縮されて、原動力に なった。だから東京で仕事をするよ うになってからは、フルスロットルです よね。会いたいと思えば誰にでも会 える。やりたいと思えばどんな仕事 でもできる。そう信じて突き進んで きました。その感覚は今もずっとあ る。ということは、僕はいまだに東京 の人間になりきれていないというこ となのかもしれませんけどね。修学 旅行で来て、そのままいるような」。

『手に入らないもの』は今や地方にある

一方で、故郷を飛び出し世界中の 街という街を見てきた今だからこ そ、地方の強みに気付いた部分もあ る。現在では情報は地域格差なく あらゆるところまで広がり、物流 も発達。どこにいても同じ条件で 同じものが手に入るようになった。 「それでも『手に入らないもの』は、 やっぱりあるんです。そしてそれは 今や、都会ではなく地方にある。都 会では絶対に見られない自然あふ れる風景、そこに行かないと味わえ ない空気や新鮮な食べもの。お金で もテクノロジーでも手に入れられ ないものが、地方にはたくさんあり ます。そこにたどり着くまでは面 倒だし時間もかかりますが、だか らこそ見つけた時、手に入れた時は 本当に嬉しいもの。地方創生ってい うのは、そういう”その場所ならでは の価値“を見出していくことなん じゃないかと思うんです」。 そのことをあらためて実感させら れたのが、故郷・岡山では初のプロ ジェクトとなった岡山県新見市のワイ ナリー『domaine tetta』 (2016)だ。4年がかりで完成した のは、豊かな自然の中に佇むコンク リートの塊のような、長方形の建 物。重力に従って果汁を移動させ るワインづくりのシステム”グラビ ティフロー“を採用したワイナリー としての機能を最大限に追求した 結果、シンプルな”装置“に行きつ いたという。 「不要なものをそぎ落としていっ たら、それがそのままワイナリー のエッセンスを集約したようなシン プルな建屋になりました。エントラ ンスからテラスに抜ける開口を広 くとっているのは、建物の中にいて も、周囲の自然との一体感を感じ られるようにするためです。コンク リートの外壁も、もともと石灰産 業が盛んだったというここの地域性 を反映しているんですよ。そういう 土地のストーリーも、そこにしかない もののひとつなんです。僕らの仕事っ て、表面的なデザインだけじゃなく て、本質がきっちり宿ってないといい ものにはならないんですよ。その点 『domaine tetta』は、 ワイナリーとしての機能だけでなく 土地の魅力という本質も宿り、いい と言われるものになったんじゃない かと思いますね」。

潜むポテンシャルに光を当てる

完成したワイナリーの目の前に は広大なブドウ畑。辺り一帯には 晴れの国と呼ばれる岡山らしい青 空が広がる。ここならではの風景 を眺めながら、大学教授でもある 片山さんは思う。 「地方も学生も、もっと自分の得 意なものを生かすべきなんです。誰 かの真似をするより、その場所やそ の人ならではの魅力を掘り起こした 方が、輝きが何倍にもなる」。 世間で良いと言われることを真似す るのではなく、身近に潜むポテンシャ ルに光を当てる。そこにこそ、地方 創生のカギはあるのかもしれない。

片山 正通/株式会社ワンダーウォール代表、インテリアデザイナー、武蔵野美 術大学空間演出デザイン学科教授。代表作に『INTERSECT BY LEXUS』(東京 / 2013、ドバイ/ 2015、ニューヨーク/ 2018 予定)、『ピエール・エルメ・パ リ 青山』( 東京/ 2016)、外務省主導の海外拠点事業『JAPAN HOUSE LONDON』(2018 予定)他多数。http://www.wonder-wall.com

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