INTERVIEW
LOCAL PRIDE -YAMAGATA-黒木 理也(co-founder / owner)
04 February 2020
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音楽、ファッション、カフェなどを 融合したライフスタイルブランド「MAISON KITSUNÉ」の 創業者である黒木理也さん。 パリ・NYから日本に凱旋した世界的な活躍の原点とは。

“「KITSUNÉ」はライフスタイルそのもの”

フランス・パリを拠点に、音楽レーベル、ファッションブランド、カフェなど、様々な活動を行うライフスタイルブランド「MAISON KITSUNÉ」の創業者で、ディレクターとして活躍している、黒木理也さん。12歳でフランスに渡り、大学では建築を専攻。2001年、ダフト・パンクの元マネージャーで、DJ・音楽プロデューサーとして活躍していたジルダ・ロアエックと意気投合し、パリで「KITSUNÉ(キツネ)」をスタートした。以来、エスプリの効いたフランスらしさのある「ニュークラシック」をコンセプトに、あらゆる角度から世界を魅了し続けている。 音楽とファッションが好きな2人の情熱が結晶し、業界の垣根を越え、様々なカルチャーを融合させたプロジェクトは、オーガニックにその輪郭を広げてきた。

郷土で育んだ感性が、パリやNYで開花

フランス・パリのイメージが強い黒木さんのルーツが、山形県上山市だということはあまり知られていない。「何もないところだからさ、言ってもみんな知らなくてね」というが、上山市は、江戸時代には城下町や宿場町として栄えた歴史ある温泉地。7歳まで暮らした黒木さんの中にある記憶は、「食だね。食の感覚。山形って水も空気もきれいだし、だから食にうるさいのかもしれない」と回顧する。 「寿司屋で日本酒を出されて『これ、おいしいな』って思うと、不思議と山形産だったりしてね。山形の酒なんて知らないのにね。それと果物も好き」と嬉々として語る。「ゼロから5歳ぐらいまでの育ちって影響するよね、ずっと。きっと一生ね」。 何もない地方都市に生まれたからこそ、そのピュアさゆえ、パリやNYの大都会に出て行った時の影響が大きかったのかもしれない。「僕たちは、ゼロから『キツネ』っていう会社を立ち上げて、つくりながらいろいろ学んで、オーガニックに育ったブランドなんだけど、何も怖くないっていうのは、そういう(山形で育ったという)ボトムから来てるからかもしれない」と。

音楽とファッションを両輪に急成長

2005年のファーストコレクションの3年後にはパリに初の直営店をオープンした「KITSUNÉ」。2013年には東京・南青山に、カフェを含む日本初のフラッグシップショップ2店を同時にオープン。代官山、新宿と、日本展開を加速させた。2011年A/Wよりブランド名を「MAISON KITSUNÉ(メゾン キツネ)」と一新。音楽では、世界の最先端のサウンドを、さまざまなプラットフォームで送り出すミュージックレーベル 「KITSUNÉ MUSIQUE」を立ち上げ、飲食では、本格的なコーヒーを提供する『CAFÉ KITSUNÉ』をオープンするなど発信チャネルを増やす。

ポテンシャルがあるのに地方は、何もしてない

急成長する「MAISON KITSUNÉ」は、2016年に「ストライプインターナショナル」と資本提携。以来、パリ、NY、香港へと出店。「ハワイ、バリ、ジャカルタ、ソウルも絶好調。上海にも出店しました」。 いっぽう日本では、6月に大阪・南堀江に関西初の路面店を出店。9月26日には岡山市内にコーヒーロースター「CAFÉ KITSUNÉ ROASTERY」を立ち上げた。「なんで岡山かっていうと、まず空気がいい。ここで焙煎したら、本当に、自分たちのやりたいブレンドができるんじゃないかなっていう予感がした」と黒木さんは、岡山に降り立った時の直感を語る。「焙煎して自分たちのブレンドができても『うち、コーヒーにうるさいですよ』みたいな雰囲気にしないで、誰が飲んでも普通においしいと思える空間にしたい」。ロースターをメインに据え、「飲みたい人はマシンを見ながら飲めるような」スタンドスタイルに。このファクトリーで焙煎した豆は、ゆくゆくは全世界の「CAFÉ KITSUNÉ」で飲めるようにするという構想もあるそうだ。

自分のフェスを開きたいいつかは故郷でも

パリ時代に薫陶を受けた音楽は、黒木さんにとってもジルダにとっても欠かせないファクターだ。2002年に音楽レーベルを立ち上げ、手掛けたコンピレーションアルバムが大ヒット。その後も積極的に才能あふれるニューカマーを発掘し続けている。これまでもTwo Door Cinema ClubやYears & Years、Parcelsなど様々なアーティストをプロデュースしてきた。決め手は、「いい音楽。それだけ。パンクだろうがソウルだろうが、テクノだろうが、ジャンルにはこだわらない。いい音であればリリースしてシェアしたいし、うちのプラットフォームを使って、自分の発想力や感動をシェアしたい人はウエルカム」。 プロデュースだけでなく、いつかはフジロックのような自分のフェスを開きたいという夢もあるという。「故郷の山形でも? もちろん、何かやりたいですね」と地元への思いも忘れてはいない。

カルチャーでありライフスタイルである

ファッション、音楽、飲食をボーダーレスに往来しながら、進化し続けてきた「KITSUNÉ」。黒木さんは、今後そのどの業態にウェートを置くかなどと考えたことはないという。「気づけば自分たちの生活スタイルがビジネスになっていた。やりたいことは増えていってるけど、自分の生き方が自分のプロファイルを変えてくと思うから、それに任せます」。 先鋭的な彼の言葉としては意外でもあるが、自分たちのやりたいことや環境に合わせて、あくまでもオーガニックに事業を進化させてきたカンパニーらしい。 立ち上げから一貫して「ライフスタイルブランド」と銘打っているのは、「KITSUNÉ」自体が、とりもなおさず、黒木さんとジルダにとってのカルチャーであり、ライフスタイルそのものだからなのかもしれない。

○くろき・まさや
1975年生まれ。12歳でパリに移住、大学で建築を専攻。2002年、ジルダ・ロアエックと共にライフスタイルブランド「KITSUNÉ(キツネ)」をスタート。08年パリに初の直営店をオープン。12年にはNYに、13年以降は日本各地にショップをオープン。16年に「ストライプインターナショナル」と資本提携し、香港、韓国、上海に出店し、今年は大阪や岡山(ロースタリー)への出店、表参道(カフェ)のリニューアルオープンが控えている。今後は渋谷や京都、バリなどにも出店予定。

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