LIFE HUNT
MOTOKO&JAY

信じれば、世界のどこにいても出会い、導かれる。シンプルなふたりの答えはベンガラの町、吹屋の暮らし。

赤銅色の石州瓦とベンガラ格子、堂々とした美しい町屋が立ち並び、多くの観光客に愛される吹屋ふるさと村。江戸時代末期から明治にかけ、地区の豪商たちによって、同じコンセプトの元で建てられた街並みは文化遺産だ。当時としては驚くべき先進的な思想が息づくこの町で暮らすのは、モトコさんとジェイさんの家族。モトコさんは埼玉生まれ、東京育ち。ジェイさんはネパール生まれ。2人は3年前、まったく縁のなかった吹屋へ、直感を頼りにインドからの移住を果たした。吹屋にたどり着くまでの人生も興味深い。まずモトコさん。東京で美容師として働いていた後、一念発起してロンドンへ。言葉や文化の違いにとまどいながらも必死で励んだ結果、技術と人柄が認められ多くの俳優やモデルに指名されるまでに成長。自信もつき楽しかったが、自分のお店を持つために帰国。しかしその後、人生最大の挫折を味わうことに。心のバランスを崩し、無味無臭、無色彩、感覚がシャットアウトされた状態が1年以上続き、仕事も断念。回復を目指してもがく中、友人に誘われ、思い切ってインドへ。2週間で帰国した友人と別れ、そのまま放浪の旅を続けた。

彼女からみたインドは、東京やロンドンのような先進国とは違い、精神世界と現実世界が融合していると感じたという。ヨガやレイキを学び、スピリチュアルな体験を通して、気付けば色鮮やかなもとの自分の世界が戻っていた。「自分次第でどうにでもなる、自分しかいないんだ」インドで、目が覚めるように気づかせてもらったと言う。一方のジェイさん、16歳で出稼ぎのためネパールからインドへ。シャーマンである父に代わって家族のために必死で働き、お金を貯めてはネパールへ戻って両親に渡し、またインドに戻る。そんな生活を続けていた。林業、土木業、きのこ栽培、ガラス工房…、様々な仕事を重ねる中、ある会社に入社した数年後に任された社員食堂での調理の仕事が、彼の才能を刺激。この仕事が、ジェイさんの料理人人生の原点となる。4年間社員食堂に勤めた後、友人のゲストハウスにコックとして招かれる。場所は、インドのリシュケシュ。2人はこのゲストハウスで必然的に出会った。混沌のインド・リシュケシュから、運命の町・吹屋へ。インド北部に位置するリシュケシュは、インドヨガの聖地としても有名な場所。人種、言語、精神世界のるつぼ、混沌とした世界で出会ったふたりは運命に導かれるように夫婦に。ゲストハウスを営みながら穏やかに日々を過ごし、やがてモトコさんは愛息を出産した。しかし出産を通じてインドの医療体制へ不安を感じ、第ニ子を授かったタイミングで日本への帰国を決意。先だってモトコさんと子どもだけで実家のある東京へ戻り、出産準備と家族で暮らせる移住先を探し始めた。

全ての「生」を感じる場所で暮らす喜び。

日本の西から順に気になる町を探す中、岡山は吹屋の町に目が留まり、本能的に『ここだ!』と感じた。「先進的で便利な暮らしは地域の文化を壊すと思う。その地に息づく暮らしや習わし、その場所が持つエネルギーを肌で感じながら生きたいと、私たちは考えていたの。ホームページで吹屋の町を発見した時は、鳥肌が立つような思いだった」とモトコさんは話す。ジェイさんに連絡したところ、彼も即答。「前世でここに暮らしたことがあるかもしれない」と話すほど、2人は吹屋の町に共鳴した。すぐさま移住の準備を開始し、1年後、吹屋へたどり着いた。家族4人の新しい暮らしがはじまった。3年経った現在、ジェイさんはキャリアを活かし、移動式カレーショップ『きいろい台所』を営んでいる。インド仕込みのカレーの特徴は、昔ながらの伝統製法でホールから手挽きした、健康的で安全なオリジナルスパイスを使用していること。素材となる鶏肉や野菜や米は、すべて地産であること。みんなが安心して美味しく食べられるカレーだ。

高梁市を中心に、様々な場所へイベントなどに出向き活動を続けた結果、評判が口コミで広がり、人気店として軌道に乗せることができた。次なる目標は、モトコさんが美容師としての活動を吹屋の町で再開すること。「吹屋は小さな町だからこそ、皆で一緒に暮らしている感じがして心地いい。切り取られたような青空。夜になると本当に掴めるんじゃないかと思うくらい近い星空。それは3年暮らした今でも、子どもと一緒に思わず足を止めて眺めてしまうほど美しい。手付かずの自然や生物の壮大な生を全身に感じるの。」と、吹屋に魅了され続けている。「住民も少ない場所で不安はあるが、2人で運命を感じたこの場所でなら、未来は明るいと思える」そう語る笑顔は穏やかながら力強い。モトコさんのヘアサロンは、この夏のオープンを目指して準備中。オープンの際はロンドン仕込みのサロンワークを体感しに、吹屋まで足を運んで貰いたい。(移動式カレーのお店『きいろい台所』/営業期間4〜11月※出店場所はHPもしくはFacebook[キッチンカー、ネパール人シェフのきいろい台所]より検索。高梁市吹屋地区周辺は、夜のテイクアウトも可。前日までに要予約。 http://kiiroidaidokoro.com/)

編集者PLUG

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