アンダーグラウンドの寵児世界中が注目するアビリティ
音楽で成功するためにギターを抱えて上京する。インターネットの登場以来、こうした行為は必ずしも必要ではなくなった。世界中どこにいても自分の楽曲を発表して届けることができるからだ。しかし、現実として地方都市にいながらスターダムを駆けあがれるアーティストは数えるほどしかいない。サノケイタは類稀な才能とライブパフォーマンスが世界で評価され、いわば逆輸入的に日本でも頭角を現した、そんな数少ない気鋭のトラックメイカーだ。幼少期から兄の影響でテクノやハウスを聴きながら育ち、独学でトラック制作を始めた。本格的にアーティストとして生きていくのを決断したのは18歳。以来、朝から晩までほとんどの時間を音源制作に費やしてきた。2012年のデビュー以降、Mister Saturday NightやLets Play Houseなどさまざまな海外名門レーベルからハイスピードでリリースをし続け、Panorama Barをはじめとしたヨーロッパツアーの敢行、さらには「Red Bull Music Academy」への日本代表としての参加など国外での活躍が際立つ、テクノ・ハウスシーンでいま最も脚光を浴びている若手の一人だ。これだけ世界から注目されても、拠点は岡山から変えるつもりがないという彼は、岡山の穏やかな気候や文化が「風土の音」として楽曲にも表れていると話してくれた。また、音楽の先輩、気の合う仲間のいる岡山でのライフスタイルがあるからこそ良い楽曲が生まれるとも感じているそうだ。2016年にリリースされたアルバム「THE SUN CHILD」のジャケットを見れば、岡山の人ならばそうした彼の思いの一端を感じるかもしれない。自身のレーベルも立ち上げたいま、世界で感じたものを岡山にフィードバックしながら、今後は隠れた岡山の才能をプロデュースしていくことも考えている。アンダーグラウンドシーンと地方都市、それぞれのこれからの隆盛は、KEITA SANOのような存在にかかっていると思わずにはいられない。
○KEITA SANO
1989年生まれ、岡山在住。海外の名門レーベルからハイスピードでリリースを続けるトラックメイカー。ライヴでは自身の楽曲を再構築しフロアへと落とし込む。