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OKAYAMA AWARD2025_Nominator.03 木多 隆志
20 March 2026
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2019年の区切りから5年を経て、 オカヤマアワードが再び開催される。 蓄電池、環境リサイクル、循環型林業、 金工家具、恐竜研究、うらじゃ踊り。 ステージに立つのは他分野6名の受賞者だ。 本誌では各受賞者の歩みと活動を紹介する。




Nominator.03
木多 隆志  KITAWORKS 代表 

鍛えた金属と暮らしの美学。 津山の工房から生まれる唯一無二の家具。

鉄や真鍮、ステンレスと木材を組み合わせ、精緻な溶接と徹底した仕上げで一点物を制作するKITAWORKS。 町工場の技術と自らの美意識を重ね、住宅から商業空間まで多様な現場で支持を広げてきた。 比類なきミニマルで研ぎ澄まされた佇まいのプロダクトは、次なる舞台として欧州での発表を視野に入れる。


産業と表現の両面を広げ、岡山発クラフトの未来を担う

1978年、岡山県津山市に生まれた木多隆志氏は、父が営む溶接工場の仕事場で幼少期を過ごした。高校卒業後は地元の金属加工会社に勤めたが、作業に充実感を持てず退職。自然と共に生き、余計なものを手放す暮らしに憧れて長野の山小屋で働くなど、ヒッピー的ともいえる生活を試みた時期もあった。しかし理想と現実の隔たりは大きく、最後に残ったのは「自分はやはりものをつくることで生きたい」という確信だった。結果として父の工場に戻り、溶接技術を基盤にものづくりを深めていくことになる。2007年に自宅用の家具を製作した経験が転機となり、2009年に社名を『KITAWORKS』へと改め家具制作を専業化した。工房で生まれる家具や什器は、鉄・真鍮・銅・ステンレスを主材に、用途に応じて木材を組み合わせて制作される。徹底した研磨で溶接痕を消し込み、構造自体を端正に際立たせる仕上げは同社の大きな特徴だ。すべての製品はオーダーメイドであり、一点ごとに細部までこだわり抜かれる。シグネチャーとなった真鍮キャビネットは特に人気が高い。熟練した技術に裏打ちされた強度と、ミニマルな設計がもたらす美しさを兼ね備え、量産品にはない唯一の存在感を放つ。一脚の椅子に二日を要することもある丹念な仕上げは、かつて「物を持たない生活」に憧れた本人の記憶を反転させ、いまは「長く使うほど価値が増す家具」というかたちで結晶した木多氏の価値観を映し出している。2024年には、15年にわたる活動の集大成となる作品集『WORKS』を刊行。写真家・坂倉圭一が捉えた造形と、橋詰ひとみによるアートディレクションが加わり、工房に漂う空気までもが誌面に凝縮された。そこに並ぶ家具群は、素材と時間に向き合い続ける姿勢そのものを記録している。岡山はヒノキをはじめとする木材文化が厚く、木工メーカーの数は多い。しかし金属を主材とする家具づくりは稀少であり、KITA WORKSはその空白を埋めてきた稀有な存在だ。木材優位の地域に金属加工の精度を重ねることで、岡山発クラフトの存在感を高める先駆的な役割を担っている。今後は欧州での発表を視野に入れ、国際的な評価の獲得も現実味を帯びてきた。オカヤマアワードは、町工場の高度な加工技術に独自のデザイン哲学を結びつけ、金属クラフトという領域を岡山で確立した点を評価した。KITA WORKSの作品と姿勢は、産業と表現の双方を広げながら、次代の岡山のものづくりに新しい視点と可能性を与えている。

15年の制作をまとめた作品集『WORKS』。家具の造形や仕上げの細部に加え、工房の風景が収められており、KITAWORKSの世界観を知ることのできる一冊。公式ウェブサイトで購入可能(税込金額¥7,700) 。

真鍮キャビネットは特に接合方法など工夫を凝らした代表作。木材に通ずる質感と経年によって変化する表情が特徴で、住宅や店舗の空間に品のある独特の存在感が生まれる。

津山の工房で溶接を行う様子。1978年に創業した当時は産業部品を中心に製作しており、その技術基盤が現在の家具づくりへと応用されている。トライアンドエラーを繰り返しながら新たな表現を探求している。





PROFILE

○木多 隆志

KITAWORKS代表。1978年岡山県津山市生まれ。父の溶接工場を継承し、2009年より家具・什器の製作を専業化。鉄・真鍮・銅・ステンレスと木材を組み合わせた一点物を中心に制作。Arts & Scienceでの展示や伊勢丹新宿での常設など都市部でも発表を重ね、国内外の展示会でも注目を集めている。


HP.https://www.kita-works.com/
INSTAGRAM.kitaworks



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