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五百旗頭監督の新作映画『能登デモクラシー』
13 May 2025
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PLUG MAGAZINE vol.63の不定期連載企画「社研部」にご登場いただいた五百旗頭幸男監督の新作映画『能登デモクラシー』が、5月17日(土)より全国で順次公開スタート。岡山では6月13日(金)から、シネマ・クレールにて上映されることが決定した。
さらに、翌日の6月14日(土)には、五百旗頭監督ご本人による舞台挨拶も予定されている。五百旗頭監督の新境地とも言える新作をぜひ劇場で鑑賞してほしい。



『穴水より、愛を込めて』

本作は能登半島の中央に位置する石川県穴水町を舞台にしたドキュメンタリー。 誰がために政治はあるのか、誰がためにメディアはあるのか、 私たちはどう暮らしを守っていくのか、その問いに真正面から応えていく1本になっており、まさに五百旗頭幸男監督の真骨頂にして新境地といえる作品。


■五百旗頭幸男監督 メッセージ
いつからか記者会見は劇場化し、手っ取り早くビューを稼ぐためのコンテンツと化した。映画の舞台、 穴水町には定例会見がない。NHKと民放テレビの取材がほぼ入らず、「ニュース砂漠」が近づく過疎の町で、権力監視の役割を最も担い、町民の信頼が最も厚いメディアは、80歳の元教師が発行する手書き新聞だった。配布は月2 回、部数は500部。「バズる」とは隔絶した世界線に、地域を愛し、地道に信頼を紡ぐオールドメディアの姿がある。



“微妙”で“絶妙”なバランスがとれた終わり方で考えさせられ、田舎社会の今後の変化、続編が気になるドキュメンタリー映画
中川生馬(車中泊スポット「田舎バックパッカーハウス」代表、穴水町民・移住者)




Introduction 光の当たらないところに光を当てる

能登半島の中央に位置する石川県穴水町。人口は 7000 人を下回り、若者と高齢者の数がともに減りゆく 「人口減少の最終段階」に入っている。コンパクトシティを推進する町の中心部から悪路を進んだ限界集落 に暮らす元・中学校教師の滝井元之さん。2020 年から手書きの新聞「紡ぐ」を発行し、利益誘導型の政策や町の未来に警鐘を鳴らし続けている。穏やかな穴水湾をのぞむこの町の伝統漁法「ボラ待ちやぐら」。我慢 強さは町民性ともいえるが、滝井さんはこう記す「何もしなければ、何も変わらない」。石川テレビのクルーは市井からの眼差しにローカルメディアの存在意義を重ねながら、惰性と忖度蔓延る役場と町議会の関係の歪さを浮き彫りにしていく。

2024 年 1 月 1 日、能登半島地震が発生した。

カメラは思わぬ事態に見舞われた町と人びとの営みをつぶさに見つめる。そして、同年5 月に放送されたテレビ版が、穴水に大きな風穴を開けた。「このままでは町がなくなる」。声を寄せ、届け、耳を傾ける。映画は確かな変化の芽吹きを映し出していくのだが――。
監督は石川テレビの五百旗頭幸男。『はりぼて』では富山市議会の不正を暴き、市議が次々とドミノ辞職。ムラ社会の父権的な空気をあぶり出した『裸のムラ』は、映画公開後に馳浩石川県知事の定例会見拒否問題にまで発展した。映画の終盤、ここぞとばかりに、まことしやかに囁かれる穴水町最大の“タブー”に斬り込んでいく五百旗頭。投げかけた言葉に込めた思いとは。

この町で、この国で、果たして民主主義は生き残れるのか。 一縷の望みに賭ける穴水からのラブレター!







comment

能登の物語を観ることで能登の人を応援できれば……なんて些か傲慢な意気込みで観始めたが、むしろこれは能登の外側にいる人々を奮い立たせるエンパワーメント・ドキュメンタリーだ。
衰退の一途を辿る民主主義を手繰り寄せ、自らの手で社会を操舵し始めた穴水の姿は希望そのもの。
「なら 我々も政治を変えられるのでは?」と鼓舞されずにはいられない。
この社会で市民が持つ力を思い出させてくれる、今この国に最も必要な映画ではないだろうか。
――ISO(ライター)

草の根新聞と、その活動を報じたテレビによって、民主主義の萌芽が見える。
間違いなく良作、だけど、なんだか五百旗頭さんらしくないな……と思っていたら、最後にすげぇのきた!
問い質すタイミングも含め、最高だ。
これぞ五百旗頭ワールド。民主主義は、やっぱり簡単じゃないよね。
――大島新(ドキュメンタリー監督)



手書きの闘いを、同じ想いで支える人たちがいる。
過疎の止まらない町の未来をあきらめない。あきらめさせない。
一通一通が紡いできた連帯の輪は、地震の後にこそ濃く広がっている。そのたしかな軌跡が残された。
滝井さん夫妻の記録は、能登の各地で地震の前から奮闘してきた人たちにも光を当てるものだ。
そして能登だけの問題ではないと、自分にも支える手があることに気づかせてくれる。
――小森はるか(映像作家)


世界の極東に位置し、少子高齢化社会を迎えた島国、日本。能登デモクラシーはそのまま日本のデモクラ
シーを映し出している。
果たして僕らは慣例を抜け出し、自分たちで社会を再建することが出来るのか?
僕らに滝井さんのような在り方が出来るかどうか。人のために動く彼の背中には猫さえも安心して乗っかる。
――ダースレイダー(ラッパー)


能登で最も小さな自治体、穴水町。穏やかな海とおおらかな人々、選挙をすれば投票率は 70%超え…。
何ともうらやましい!と思いきや、一皮剥けば権力の濫用、惰性、波風立てず「なあなあに」が蔓延。
この国の等身大を見た。それに抗い続ける地元の小さな独立系メディアと、立ち上がり始めた町民たち。民
主主義の芽を育てていくために大切なものは何かを教えてもらった。
――前田亜紀(映像ディレクター/プロデューサー)




監督:五百旗頭幸男(いおきべ・ゆきお)

1978年兵庫県生まれ。同志社大学文学部社会学科卒業。2003年チューリップテレビ入社。スポーツ、県警、県政などの担当記者を経て、16年からニュースキャスター。20年3月退社。同年4月石川テレビ入社。ディレクター作品に「異見~米国から見た富山大空襲~」(16/ギャラクシー賞奨励賞・日本民間放送連盟賞優秀賞)、冬季は閉鎖されている立山黒部アルペンルートの通年営業化計画を検証した「沈黙の山」(18/ギャラクシー賞選奨・日本民間放送連盟賞優秀賞)など。17年に富山市議会の政務活動費不正問題を追ったドキュメンタリー番組「はりぼて~腐敗議会と記者たちの攻防~」にて文化庁芸術祭賞優秀賞、放送文化基金賞優秀賞、日本民間放送連盟賞優秀賞などを受賞。20年、同じく富山市議会の不正を追い続けた映画『はりぼて』を砂沢智史とともに監督し劇場公開。全国映連賞、日本映画復興賞などを受賞した。21年、石川テレビ移籍後に発表したドキュメンタリー番組「裸のムラ」にて地方の時代映像祭選奨を受賞。22年、「日本国男村」で日本民間放送連盟賞最優秀賞を受賞。富山市議会政務活動費不正受給問題の取材では菊池寛賞、日本記者クラブ賞特別賞、JCJ賞、ギャラクシー賞大賞を受賞。著書に「自壊するメディア」(講談社、共著)、「富山市議はなぜ14人も辞めたのか~政務活動費の闇を追う~」(岩波書店、共著)。
X:@yukioiokibe
映画「はりぼて」HP
映画「裸のムラ」HP


劇場情報



<開催概要>
名称:『能登デモクラシー』
日時:2025年6月13日(金)〜公開
   6月14日(土) 15:45の回上映後、五百旗頭幸男監督による舞台挨拶
会場:シネマ・クレール(http://www.cinemaclair.co.jp/
映画公式WEBサイト:https://notodemocracy.jp/
料金:当日一般1900円、学生1500円、シニア(65歳以上)1400円

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