Special Feature
RIKUTO OKADA / TRYHOOP OKAYAMA
長年にわたりトライフープ岡山の主軸として活躍してきた岡田陸人選手。彼のプレースタイルはアグレッシブで、常にチームを鼓舞し続ける存在だった。そんな彼が今シーズンをもって現役を退くというニュースは、多くのファンにとって驚きと寂しさをもたらした。クラブと共に歩み続けた10年間。その軌跡を、彼の言葉とともに振り返る。
Photography: Masatoshi Kaga(BEAR-MON),
Interview&Text:Machiko Kawano(PLUG),
Special Thanks: TRYHOOP OKAYAMA
岡田陸人の軌跡
5人制トライフープ岡山創設以前、3人制バスケットボールからスタートし、今年で10年目になります。トライフープ岡山が創設されてからは8年で、自分が加入したのは創設から1年後、26歳の時でした。 数えきれない思い出が今蘇ってきますが、今後のキャリアを考えるきっかけになった出来事といえば、2022−23シーズン中のことです。最初はホーム開幕戦の岐阜戦、次はアウェーの静岡戦で脳震盪を2回経験したんです。どちらも救急搬送されて。身体は大丈夫でしたが精神面で実はかなりナイーブになり、この経験が今後のキャリアを考えるきっかけにもなりました。まっ先に家族に相談しました。「次にまた脳震盪を起こしたらバスケを辞めなきゃいけないかもしれない」と話したら、妻から「まあ、またなった時に考えればいいじゃん」と、意外にも軽い返答が返ってきて(笑)。それで吹っ切れました。支えてくれた家族、特に妻の存在があったからこそ地元クラブで信念を持ってプレーを続けることができたといま実感しています。 でも、30歳を過ぎて、いろいろ考えることが増えました。自分のプレースタイルは運動量が多く超アグレッシブ。決して選手生命が長いスタイルではありません。ある日、妻に「もう辞めようかな」と相談したら、「もう少しできるとは思うけど、よく頑張ったんじゃない?」と言われたんです。その言葉を聞いたとき、「まだやれる」ではなく、「ここまでやってきたんだ」という気持ちが自然と湧いてきたことに気づいて。それで、引退を決意しました。
ブースターへの想い
岡山県を代表するグループ企業「SUENAGA Group」は、物流事業やトヨタ事業、マクドナルドフランチャイジーなど、多岐にわたる事業を展開する12の企業が集まり、地域に欠かせないサービスを提供し続けている。その一員である「岡山土地倉庫株式会社」と「岡山通運株式会社」は、グループの中でも地域の物流の中核を担う企業だ。岡山土地倉庫は、物流関連の総合的な事業を展開し、高速道路や空港などの交通の要衝5ヶ所に物流拠点を配置。全拠点の延べ床面積は岡山県内でトップシェアを誇る。岡山通運は全国への荷物の輸送から保管、荷役まで一貫して対応できる物流サービスが強みだ。今春、長年にわたって西日本の物流適地である岡山の産業を支え続けてきた両社は、ユニフォームのデザインを一新することとなった。デザインを手掛けたのは、世界的に活躍するファッションデザイナーの相澤陽介氏だ。自身のブランド「White Mountaineering(ホワイトマウンテニアリング)」を展開するほか、多数の企業の制服やユニフォームのデザインを手掛けたことでも知られている。2018年、相澤氏はトヨタ自動車のディーラーである全国の「トヨペット店」のメカニックスーツを制作。2024年には、岡山トヨペットの社内レーシングチーム(現(株)K-tunes)の車両とレーシングスーツのデザインを担当した。今回の制服デザインを引き受けた経緯について、「代表の末長さん直々にオファーを頂き、その熱量と丁寧さに背中を押されました」と相澤氏は語る。 「いろんなプロジェクトのお話を頂くことも多いのですが、実際にカタチになるのは稀かもしれません。双方にとって良い仕事にする上で、その企業のトップがデザインの価値に対して理解があることは重要なファクターだと思います」。
岡田陸人 Talking with トライフープ岡山
「同級生が皆バスケ部に入部したから自分も。」岡田選手がバスケをはじめたきっかけは単純なものだった。でも、その後国体に出るほどの優れた選手へと成長し、一時代を共にする仲間と出会い、選手生命を全うした。トライフープ岡山創設以前からのメンバーである、中島代表、大森GM兼HC、そして、今後のトライフープ岡山を昇格へと導く重要なピースである5人のチームメートに岡田選手とのエピソードを語ってもらった。
大森) 「僕と陸人はクラブ創設以前から時を共にしてるので今はもう家族ぐるみの付き合いです。夜飲みに行くと陸人はいつも途中で帰っちゃう。大体1時間半くらいがリミットで(笑)。どんな時も自分のルールに従って動くんですよね。年越しで我が家に集まった時も23時45分に帰っちゃいましたし(笑)。」
向井) 「僕が陸人と初めて会ったのは高校の時で、彼が1年、僕が3年の時の練習試合でした。『小さくて上手い子がいるな』っていう印象でした。」
中島) 「第一印象は〈全然喋れへん人〉でした(笑)。大森と僕が陸人を呼び出して、はじめてチームに誘った時も反応がなくて、不安なのかなと思って質問しても『はい』か『うん』しか言わない(笑)。びっくりするほど喋らない人でした。今では考えられないですよね(笑)。」
岡田) 「3人制のプロチームがどんなものか分からなかったんですよ。当時はまだ3人制ってメジャーじゃなかったし。でもバスケが好きだったので、とりあえずやってみようって感じで。実際試合をするまでプロとしてプレーするという実感が全くなかったんです。」
トライフープ岡山にとっての「岡田陸人」という存在
大森) 「岡山出身で、ずっとチームを支えてくれた象徴的な存在です。特に子供たちからは『リクト』と呼ばれる憧れの選手。ディフェンスの姿勢なんかは、子供達の間では『リクトディフェンス』と言われています。」
髙畠C) 「僕は2023年にチームに加入しました。それまでは対戦相手だった陸人の印象は、「オラオラ系のディフェンス職人」でした(笑)。でも、チームメートになってその印象は150度くらい変わりました。陸人はまさに縁の下の力持ち。ディフェンスはもちろん、シュートもめちゃくちゃ上手いし、何よりもプレー以外の部分で若手選手への気配りをしてくれて、キャプテンの自分と若手選手の繋ぎ役みたいなことを率先してやってくれて。いつも、何かあれば真っ先に陸人に電話していました。キャプテンとして彼の献身的な動きにすごく助けられたし、彼がいたからキャプテンができたと思ってます。」
ハッサン) 「僕が最初に岡田さんと出会ったのは福岡のチームでやっていた頃に3人制バスケで対戦した時です。やんちゃな雰囲気で少し怖かったのを覚えています。24歳位かなと思ってたので、トライフープ岡山に加入して岡田さんの年齢を聞いてめちゃめちゃびっくりしました!」
向井) 「この中では、大森さんの次に陸人と長く一緒にやってきたのですが、不思議なんだけど、良い意味でずっと距離感が変わらないんですよ。普通7年もいたらもっとベッタリになってもいいと思うんですけど、僕らは『ちょうどいい距離感』なんですよね。移動中とか2人で車内でいても、一言も喋らなくても普通というか。とにかく何の気負いも感じない関係というか(笑)。おじいちゃんになっても、たぶん陸人とはお歳暮を贈りあったりするのかな。それくらい、自然なんですよね。
浦野) 「僕は2023年に加入しました。陸人さんを初めて見た時『ヤンキーがいる』って思った(笑)。ヒゲで金髪ってなかなかいないじゃないですか(笑)!しかもあんま喋らないし、怖いなって。でも加入後は本当に、日毎に仲良くしてもらって。昨シーズンは二人で『2連勝したらラーメン食べる』みたいなこともしたんです。いい思い出です。
濱田) 「僕は2024年に加入したのですが、大学1年のとき国体で岡山と地元の高知で試合したときに陸さんのことを知りました。チームの先輩から「岡山に岡田っていうめちゃくちゃうまいスーパースターがいる」って聞いてて、実際マッチアップして『この人ヤバい、めちゃくちゃ上手い』って。それが第一印象です。上手くてすかしたイメージしかなかったけど、実際チームに加入したらイメージは激変しました。とにかく面倒見が良いんです。自分も含め若手の話をいっぱい聞いてくれるしチームメート一人ひとりのことをいつも気にかけてくれる。ヤンキー気質な所も魅力だし(笑)。
向井) 「陸人のように、クラブチームに地元出身の選手がいるって誇らしいことだと思うんです。陸人が抜けると地元出身選手がいなくなるけど、彼のような象徴的な選手がまた現れるといいなと期待しつつ、自分がチームを牽引しなければと気合いを入れ直しています。」
髙畠C) 「僕はまだ加入して2年ですが、トライフープ岡山は〈泥臭いこと〉を厭わないチームだと感じています。それは、陸人がやってきた泥臭く地道な努力やひたむきさが作り上げてきた素晴らしい土壌です。チームとして、それを伝統として引き継いでいかなければならないと思います。スポーツの世界でも人間性はやっぱり大事で、人間性がなければ上達もない、チームとして昇華もしていかない。岡田陸人がどれだけ特別だったか。居なくなって感じる穴は大きいはず。近い将来、岡山出身で陸人のバトンを渡せるような人が出てきてくれたらいいな、という希望を持ちつつも、向井を筆頭に自分たちで陸人が築いたこの土壌をしっかり引き継いでいきたいと思います。2025-26シーズンのトライフープ岡山も、どうぞよろしくお願いします!
〈 SPECIAL THANKS 〉
TRYHOOP OKAYAMA https://tryhoop.com/