ONIGIRINO
ダンサー / DJMoe
ダンサー / インストラクターHINATA
ダンサー / インストラクターmee
ダンサー・インストラクター / Glamorous Stage 店長
#SPECIAL TALK_岡山在住の若手ガールズダンサー4人に聞いてみた
4 STYLES, 4 VIBES !
ヒップホップ、ロック、ファンク——
最近の若者にとって「踊る」という行為の枠組みは、もはやジャンルの垣根を越えて以前よりずっと自由に広がっているようだ。ストリートから華開いたダンス文化は、今や日本の学校教育にまで取り入れられ、子どもたちにとって慣れ親しんだ表現手段となりつつある。それはもちろん、岡山でも例外ではない。私たちの生活にぐっと身近になったダンス。
某日夕刻に集合してもらったのは岡山市・表町のバー『POM POM』。まずは 、岡山のダンスシーンについて話を訊いた。
mee
「地域によってダンスシーンの個性は全然違うなって思ってます。やっぱり東京は仕事としてのニーズが比べものにならないほど多い。所属するスタジオとか友達同士の繋がりが強力に作用して、有名な歌手のバックダンサーになってほしい、MVに出てほしいって声がかかるんです。東京ではそれが当たり前だけど、ストイックなダンスシーンがあるのは都会でもアングラなゾーンだけかも知れません。岡山は仕事としての土壌がまだ十分でない代わりに、ダンスを究めようとする人にとっては望ましい環境があるかも。岡山のダンサーは、皆それぞれが自分のスタイルを見つけて活躍できている人が多い印象ですね。」
meeは、安室奈美恵に憧れて4歳からダンスを始め、さまざまなジャンルのダンスを習得。DREAMS COME TRUEやAIなど、人気ミュージシャンのバックダンサーとして数々のステージに出演している。数多くのコンテストで優勝・入賞を果たし、今や岡山のダンスシーンを引っ張っていく若手のリーダー的存在だ。現在は倉敷市のダンススタジオ『Glamorous Stage』の店長兼インストラクターとしても活動している。彼女の声かけで、岡山ダンスシーンの次世代を担う期待のホープ、Moe、ONIGIRINO、HINATAの3人が集まってくれた。Moeは、小学校中学年からヒップホップを中心に多様なジャンルのダンスを学び、高校卒業後は韓国へ語学留学の傍らK-POPの本場でダンススキルを磨いた。ONIGIRINOは、7歳からダンスを始め、岡山、四国、大阪を中心にさまざまなダンスコンテストで優勝・入賞を果たし、2022年にはGENERATIONS from EXILE TRIBE「My Turn」MVに出演したほどの実力派。HINATAは、小学2年生からダンスを始め、MIMMIやAIのバックダンサーを経験し、現在は岡山と韓国の2拠点生活中だ。
mee
「私たちは、同じスタジオに属しているわけでもなくて、普段はバラバラで活動してるんです。Moeは地元が近くて、小さい時から仲良くしてました。ずっと『ファンです』って言ってくれている娘(笑)。ONIGIRINOは、最近遊びに行った先で偶然仲良くなって、すごく頑張ってる娘なのでみんなに紹介したくって今回の企画に誘いました。彼女はDJとしてクラブシーンでも活動しています。HINATAは私がインストラクターを始めた時からの言わば一番弟子。10年以上の付き合いになるかな。私が初めてプロデュースしたチームにも来てくれた娘です。今日はめちゃくちゃいいメンバーが集まりましたよ!」
彼女たち4人は、2000年以降に生まれたいわゆるZ世代。この世代が持つ特徴は、個性や自分らしさを互いに認め合い、助け合うことのできる、高い協調性だと言われている。次世代を担う彼女たちは、地元のダンスシーンにどんな想いを持っているのだろう。それぞれの視点から岡山の新たなキャッチフレーズを提案してもらう中で、幼少期の思い出やダンサーとしての気づきを、ありのままの言葉で語ってもらった。
岡山の新しいキャッチフレーズは?
mee
《バイブスの国おかやま》
「岡山のダンサーは、第一印象がシャイというか控えめな人が多いんです。でも、実はものすごいパッションを秘めている。踊り出すと、一気にスイッチが入って、バイブスが爆発する、そんな人が多いと感じています。先輩や後輩、生徒たちを見ていてもそう思うし、県外から来たダンサーさんも『岡山のバイブスすごいね!』って言ってくれるんですよね。これはダンスに限らず、岡山県人の多くに言えることなんじゃないかな。普段は表に出さないけど、内に秘めた熱量がすごい。『バイブスの国おかやま』という言葉がキャッチフレーズならその辺りがわかりやすいかなと。」
Moe
《私たちが繋ぐダンスシーン》
「生徒から指導者という立場になって、改めて先生方や先輩方の偉大さを実感することが増えました。小中高生の頃は、先生方のおかげで岡山のいろんなステージに立たせてもらったし、成人してからはストリートダンスの本質に触れる機会を与えてもらいました。岡山のダンスシーンを、ゼロから築いてきた方々へのリスペクトはすごく大きいです。だからこそ、次の世代へその文化を繋げていくのが、自分たち若手の役目だと思っていて。生徒だけじゃなく、ダンスに関係のない人たちにも広めていきたい。そんな想いを込めて、『私たちが繋ぐダンスシーン』という言葉を選びました。」
ONIGIRINO
《みんな好きなことで生きていく》
「岡山には、自分の好きなことを突き詰めて、それを仕事にしている人が多いなと思います。ダンスもそうだし、古着やエスニック料理、コーヒーとか、それぞれのジャンルでこだわりを持って活動している人たちがみんな魅力的なんです。それに、業種の垣根を越えて互いに協力し合う文化が根付いている。職種や年齢は関係なく、差別や区別もない、みんなで支え合いながら何かを作り上げる雰囲気があるんです。だから、岡山はエネルギッシュでキラキラしてる街だなって思います。」
HINATA
《貪欲さニッポンイチ岡山》
「私は昔から負けん気が強いほうだったけど、よく考えたら、周りのダンサーもみんな負けず嫌いでした(笑)。だからこそ、お互い切磋琢磨してこれたんだと気づいたんです。県外のダンサーの方から『岡山のダンサーは都会の子たちにない貪欲さを持ってるね。その気持ちは絶対に失わないでほしい』と言われたことがあって。その言葉を聞いてから、やっぱり岡山のダンサーには独特の貪欲さがあるんだとわかりました。私たちの下の世代の子たちにも、貪欲に成長しようとする姿勢を受け継いでほしい。だから『貪欲さニッポンイチ岡山』という言葉を選びました。」
これまでの人生で影響を受けたフレーズは?
mee
《1%の才能と99%の継続》
「ダンスを始めたきっかけでもある安室奈美恵さんの言葉に、『1%の才能と99%の継続』という至言があります。才能だけで成功する人はほとんどいなくて、やっぱり努力を積み重ねることが大事。最近は特に才能のある若いダンサーが増えてきているけど、それだけで突き抜けるのは難しい。みんな必ずどこかで努力してるし、継続しているからこそ今がある。自分もそうだし、周りの先輩方を見ていてもそれを実感します。好きな言葉はいろいろあるけど、自分にとって一番影響を与えたのは、やっぱりこの安室ちゃんの言葉ですね。」
Moe
《小さな巨人(작은거인)》
「高校卒業後、3年間韓国に留学していたんですが、そのとき通っていたスタジオの先生に『小さな巨人(작은거인)』ってよく言われていました。私は身長が150センチに満たなくて、身長を理由に夢だった仕事を諦めたこともあります。でも、そのスタジオの先生は、私の得意なことや可能性を見抜いて、アドバイスしてくれたんです。小さいからこそ大きく動く練習をたくさんしたし、身体のサイズに関係なく強く踊ることを意識してきました。だから、この言葉をもらったときはすごく嬉しかったですね。見た目や条件を言い訳にすることなく、自分の強みを見つけて活かすことが大事なんだなと実感しました。」
ONIGIRINO
《何にもとらわれず、自分らしく》
「私は誰かの言葉というより、いろんな人の話を聞いて、自分なりにまとめた言葉があって、それが『何にもとらわれず、自分らしく生きる』です。私、好奇心旺盛で、いろんなことに挑戦したいタイプなんですよね。ダンスもジャンルに縛られず、自分らしいスタイルを作りたいし、もっといろんな表現を取り入れていきたい。だからこそ、自分をひとつの型に押し込めず、広い視野を持っていたいと思っています。焦らなくても、やりたいことを続けていれば、自分がたどり着くべき場所に行き着くはず。だから、誰かに決められた道を進むんじゃなくて、迷ったら全部やってみる。それが私のスタイルですね。」
HINATA
《チャンスは自分でつかむ》
「韓国で成功した日本人のダンスインストラクターの方から、『チャンスは巡ってこない。自分でつかむものだ』という言葉を聞いたとき、霧が晴れたような気持ちになりました。それまでは、こんなに頑張ってるんだから、いつかは結果が出るかな、いい仕事がもらえるかな、と安易に期待していたんですが、それだけじゃダメなんだと気づかされました。自分で行動を起こさないと、何も変わらない。環境のせいにしたり、誰かがチャンスをくれるのを待っているだけでは、厳しいダンスの業界で生きていくことは難しいんです。この言葉を大切にしながら、いまも努力を続けています。」
岡山のダンスシーンにこれから必要なことは?
mee
「岡山のダンスシーンは、スタジオやジャンルの垣根がなく、ダンサー同士のつながりが強いのが特徴だと思います。インストラクターが複数のスタジオを掛け持ちしていることも多く、イベントではジャンルを超えて一緒に楽しんでいる。独善的だったり、閉鎖的な態度は、シーンの成長を阻害します。岡山にある独特のオープンな雰囲気を、もっと広げていきたいですね。未経験者も気軽に楽しめるイベントや、他地域とのコラボ企画も考えていきたい。新しいものに敏感な人もいれば、慎重な人もいるけれど、変化を生み出すことが大切。音楽が流れたら誰もが踊り出すような雰囲気が作れたら最高ですね。」
Moe
私は、韓国はもちろん、日本のアイドル文化も好きで、歌やダンスが生活の身近にあるのは素敵なことだと思っています。ただ、岡山のダンサーはかっこいいのに、自分から外へ出ていこうとしない人が多い印象です。地元で踊り続けるのも一つの道ですが、もっと広い世界にチャレンジしてもいいんじゃないかと思います。技術があるのに発信しないのはもったいないですね。
ONIGIRINO
「岡山にも、東京や大阪のトップダンサーに負けないくらいすごい人がたくさんいますが、なぜかあまり目立っていない。それが奥ゆかしい岡山らしさとも言えますが、自分をもっと表現してもいいと思います。直感を信じて、大胆に行動することで、シーン全体がもっと活気づくはずです。
HINATA
「もっと前に出る姿勢を持ってもいいと思います。自分をより魅力的に見せる努力をしながら、県外や海外にも目を向けることで、岡山のダンスシーンの可能性が広がるはずです。」
mee
「もっと『目立ちたがり屋』になっていいってことなのかな。」
ONIGIRINO
「岡山の人たち、もっともっと目立っちゃいましょう!」
それぞれの今後の展望は?
mee
「2025年3月1日から、倉敷市笹沖にあるダンススタジオ『Glamorous Stage』の店長に就任しました。10歳の頃から通い始め、初めてインストラクターとして指導した場所でもある、大切なスタジオです。これまで全国ツアーでアーティストのバックダンサーを務めたり、振付のサポートをしたりと、岡山を拠点にさまざまな経験を積んできました。でも、最近の岡山のダンスシーンを見ていると、少しずつ変わってきているなと感じるんです。特に、夜のイベントが減っていて、ダンスメインのイベント自体も少なくなっています。私が子どもの頃に憧れていた岡山のダンスシーンとは違う世界になっていて、それが良い部分もあるけれど、少し寂しく感じることもある。だからこそ、私自身が発表の場や学ぶ場を作っていきたいと思っています。自分のレッスンはもちろん、県外からゲストを招いたワークショップなども引き続き開催しながら、ダンサーだけでなく、さまざまなジャンルの人たちと繋がる機会を作りたい。例えば、映像制作やイベントを通して、ダンサー以外の人ともコラボレーションしながら、岡山を盛り上げるような動きができればいいなと考えています。」
Moe
「韓国から完全帰国して間もないですが、今年は岡山での再スタートの年。自分の存在を知ってもらうために、SNSの発信や日頃のレッスン、自分のチームづくりなど、いろんな形で活動を広げていきたいと思っています。従来にも増して、高校時代の同級生や、ダンスを習う子どもを持つお母さんたちから『ダンスを習いたいけど、その界隈に踏み込みにくい』という相談を受けることが多くなりました。ダンスをやった
ことがない人にとって、スタジオやダンサーの世界が閉鎖的に見えるのかもしれません。でも、もっと幅広い層にダンスの楽しさを知ってもらいたい。例えば、日中は会社勤めをしていても、夜にダンスを習いたい人や、子育てがひと段落して新しい趣味を始めたい50~60代の方たちにも、気軽にダンスを楽しんでもらえる環境を作りたいですね。長い空白期間があったにもかかわらず、温かく迎えてくれた岡山のダンスシーンに、今度は自分が何かを返せるようになりたいです。」
ONIGIRINO
「自分で言うのも照れくさいですが、何にもとらわれず生きていきたいと思っています。最近はDJも始めました。やっぱり、イケてる人って好きなことを複数持っている人が多い気がしていて。自分も、いろんなことを掛け持ちしながら表現を続けていきたいです。ダンスは音楽ありきの文化だから、音楽を知らないとさらに高みにはいけない。DJを始めたのも、音楽をより深く知るための一つの手段です。これからも、ダンスとDJ、そして音楽に関わることを続けながら、さまざまな形で表現を探求していきたいと思っています。」
HINATA
「今は日本と韓国を行き来しながら活動していますが、将来的には韓国に拠点を移したいと考えています。それが、今の自分の一番の目標です。これまでは、都会に比べて岡山はチャンスが少ないと決めつけていて、それを理由にチャレンジを諦めることもありました。でも、『チャンスは巡ってこない、自分でつかむもの』という言葉に出会ってからは、環境のせいにして何かを諦めるのは違うとはっきり言えます。この言葉をくれた先生には、もう一つ大事なことを教わりました。それが『根拠のない自信を持て』ということ。自分なんか…と思うこともあるけど、それを考えた時点で負けだと言われて、確かにその通りだなと。だからこそ、どんな状況でも『自分だからこそできるんだ』と思えるようになりました。まだまだ未熟だけど、韓国移住という目標を達成するために、もっと自分を磨いていきたいと思います。」
地元に深く根を張る人もいれば、迷いなく海外へ飛び出す人もいる。ただ、いまの若者たちにとって、そもそもフィールドやジャンルの境界など意味をなさず、とても曖昧なものになっているのかもしれない。それは、押し付けがましい多様性といった価値観の類ではなく、もっと自然と身体に染み込んでいる感覚なのだろう。いわゆる成功やゴールの形も、ついに本質から画一的ではなくなった。同じダンスという強みを持った4人も、それぞれの目指すべき景色へ向かって自分の足で力強く踏み出しているが、一つだけ共通していたことがある。それは、地元へのリスペクトと愛情だ。彼女たちの進む方向は少しづつ違って見えるが、いつかどこかで交わり、知らぬ間に岡山の街の流れを変えていくのかも知れない。
PROFILE
中央から時計回りに
○mee
ダンサー、インストラクター、Glamorous Stage 店長。2000年生まれ。4歳の時にダンスをはじめ、多種多様なダンスジャンルを学ぶ。2010年黒ドリダンサー広島メンバーとしてDREAMS COME TRUE×ポカリツアーにてイキイキゲリラダンスに出演。2011年Disney Live福岡公演キッズダンスショー、2016年AI THE BEST TOUR 2016 にバックダンサーとして出演した。2022年AI DREAMTOUR オーディションに合格しバックダンサーとして全国ツアーを回るなど幅広く活躍。2025年3月倉敷市のダンススタジオGlamorous Stageの店長に就任。
INSTAGRAM. meechandeesu
○Moe
ダンサー、インストラクター。2001年生まれ。小学校中学年からHIPHOPを中心に、様々なジャンルのダンスを学ぶ。高校卒業後、韓国へ語学留学の傍らK-POPの本場でダンススキルを磨く。INI、ME:I、BOY NEXT DOOR、Da-iCEなどのアーティストの振付にダミーダンサーとして参加。また、少女時代スヨン、K-POP新人アイドルグループのデビュー曲など振付を経験。“親しみやすい先生”をモットーに、地元岡山のダンススタジオ、NXGN NY STUDIO・studio Belief にてレッスン&ダンサー活動を再開。
INSTAGRAM. m770k
○HINATA
ダンサー、インストラクター。2003年生まれ。7歳からダンスを始める。小中学生時代はコンテストチーム “Baby:st”等で活動し、現在も”meel crew”に所属している。「NewJeans」、「aespa」、「ITZY」、「AI」、「MINMI」、「HANEUM」 etc..アーティストバックダンサー、「TWS」、「NCT WISH」、「未来少年」、「RIKIMARU」、「轟はじめ」、etc…振付ダミーダンサー「produce101 テーマソング ” LEAP HIGH! ” 」お手本ダンサーなどを経験。韓国、アメリカ留学を経たのち、現在は岡山と韓国を拠点に活動中。
INSTAGRAM. iamhinaat
ONIGIRINO
ダンサー、DJ。2003年生まれ。7歳からダンスを始める。2018年 大阪Dance Battle「High Time」優勝、2021年 freestyle dance battle「Dance Rice」準優勝、2021年 岡山freestyle dance battle「GARAPARK」優勝、2023年 岡山freestyle dance battle「capture」vol.1 優勝、2023年 2on2 freestyle dance battle「STAY STRONG」優勝など輝かしい経歴を持つ。2022年にはGENERATIONSfrom EXILE TRIBE「My Turn」のMVに出演する。
INSTAGRAM. onigirino_gyros