#5. TALK_語学留学中の6人に聞いてみた
岡山外語学院
#岡山に住んで実感
「住みやすさと安心感」
留学生から見た岡山県とは?様々な国から集う6人の留学生にインタビュー。
留学生から見た岡山県
日本人は「キャッチフレーズ好き」な国柄ではないだろうか。
五七五のリズムが身に染みているのか、制約ある文字数の中でインパクトを残す手法が特に好まれている気がする。ちなみに、日本最古のキャッチフレーズは、約300年前の江戸時代につくられた〈土用の丑の日〉なのだとか。現代でも、民間企業や地方自治体が各々のフレーズを必ず一つは掲げている。我が岡山は県のキャッチフレーズを「晴れの国おかやま」とはいうものの、それは日本全国の都道府県と比べた場合の話。海外の人々から見た岡山県はどのように映っているのだろうか。
今回インタビューしたのはアジア、ヨーロッパなど世界各地から日本語を学びに来岡した留学生6人。「岡山外語学院」に在籍する生徒だ。岡山外語学院は、 日本語教育を通じてグローバルな視野を持った人材の育成を目指す日本語教育機関。1984年に岡山市の中心部に設立され、現在は400名近い留学生が日本語を学んでいる。同学院にはアジアを中心に世界25カ国以上からの留学生が在籍。多国籍な学生が集まる環境では日本語を共通言語とした交流が生まれ、日本への理解を深めながら着実に国際感覚を養うことができるという。
6人の留学生は出身地も年齢も、岡山での在住期間もバラバラだ。岡山にきて4ヶ月のサウンさんは、ミャンマー出身。「岡山はとても住みやすい場所ですよ」。と語ってくれた。中国出身のリナさんは、岡山が日本語を勉強するのに適した場所だという。「東京や大阪は都会すぎて騒がしいし、遊びに行きたくなる誘惑も多い。岡山で約1年間生活しましたが、とても静かで暮らしやすいです」。また、イギリス出身のニコラさんは「岡山はロンドンと比べてリラックスできる」と感じているようだ。そして、ライナスさんの出身地はスウェーデンの小さな町。「スウェーデンは町にも自然が溢れています。今では慣れたけど、初めて岡山に来た時には植物が少ないと感じました。岡山は、私にとっては大都会です。そうじゃないっていう人もいるけど(笑)」とライナスさんは笑う。パキスタン出身のカムランさんは「兄が岡山にいた時期があり、親近感もあったので、自分も留学先として岡山を選びました。ここはとても静かで住みやすい場所だと思います。でも、イベントの時期は駅前がめっちゃ騒がしくなる!」と指摘をくれた。シギットさんは「岡山にはちょうどいい雰囲気がある。インドネシアにある故郷の町と似ている」と郷愁を交えて語ってくれた。6人の留学生からヒアリングした岡山県のインプレッションとしては、やはり「住みやすい」「安心できる」などの意見が多かった。岡山は〈晴れの国〉というだけあって、台風や地震などの自然災害が少ない。また、静かで治安も良いため、学生が安心して勉強に集中できる環境が整っているようだ。
岡山にキャッチフレーズをつけるなら?
留学生たちに岡山の印象について話し合ってもらい、各々の経験を踏まえたキャッチフレーズを提案してもらった。そこには、私たちでは気付けない、ちょっと意外な岡山の特徴を発見する事ができる。
ライナスさん
「岡山は誰にでもフィットする街だと思います。この街には、大企業も中小企業もあり、IT関係者も、農業従事者もいます。私はスウェーデンの小さな町の出身で、岡山はかなり都会だと感じました。実は私の生まれ故郷も偶然「晴れの町」と呼ばれているんです。岡山の人は、心が〈晴れやか〉です。あと、みんな優しくて、ウェルカムな雰囲気で接してくれるのが心地良いですね。」
サウンさん
「私も、岡山県には優しい人がいっぱいいると思います。ミャンマーから日本にきて日が浅い頃は知らないことばかりで困ることも多かったけど周りの人が自然と手を差し伸べてくれる。おかげで充実した生活を送っています。」
ニコラさん
「私にとって、岡山は slowlyな街ですね。ゆったりとした空気の流れに癒されます。ロンドンの人はみんな『very busy』で、とにかくいつでも忙しそうにしています。街中も混雑していますから、気が休まらない。岡山にきてから心穏やかな時間を過ごせています。」
リナさん
「岡山県は、养老の街だと思います。とても静かで、お年寄りが多い印象。物価は東京や大阪よりも安いですし、自転車での移動もしやすく、交通費も抑えられます。あと、岡山の人たちは生活のリズムがゆっくりだから、居住してみて、とにかく生活しやすいと感じました。お年寄りの方にも過ごしやすい場所だと思います。」
カムランさん
「岡山は、日本語の勉強に向いてる街だと思います。なぜなら、都会は周りの人も英語で話せる場合が多いから。 本気で学ぶなら、日本語しかできない人たちに囲まれていた方がいいと思います(笑)。」
シギットさん
「岡山は全てが『ちょうどいい』、と感じています。故郷インドネシアのバンドンという街に雰囲気が似ていているのですが、共通点は都会すぎず田舎すぎないところ。岡山に来てまだ日は浅いですが、とても心穏やかに毎日を過ごせています。」
概ねポジティブな感想を得られたが、私たちにとってはちょっとアイロニーを含んだものも。岡山県民が見落としているかも知れない地域の良さや特徴を、岡山外語学院で学んだ日本語で話してくれた。
KAMRAN/カムラン
パキスタン出身 日本の滞在期間は約2年。観光サービス業で 日本の文化を紹介したいと考えている。
日本語学ぶなら OKAYAMA
カムランさんの新しいキャッチフレーズ
SIGIT PERMANA/シギット ペルマナ
インドネシア出身 日本の滞在期間は約4ヶ月。将来の夢は、 世界中を旅しながら本を書く作家。
中庸のまち
シギットさんの新しいキャッチフレーズ
MCCLEMENTS NICOLA CAROLINE/メクレメンツ ニコラ カロライン
イギリス出身 日本の滞在期間は約1年半。就きたい職業は 日本文学の翻訳家。
“Relaxing place”
ニコラさんの新しいキャッチフレーズ
6人が考えるオカヤマ
ワンフレーズから見える世界の景色
「母国」と「岡山」。「内」と「外」。今度は、留学生たちに自身の母国について話を聞いてみた。彼ら彼女らが岡山のキャッチフレーズを考える際、きっと自分が生まれ育った場所と比べたはずだからだ。6人の母国の中には、日本人にとってそこまで馴染みのない地域もある。そこで、彼らの独断と偏見で故郷にもキャッチフレーズをつけてもらいながら、母国を紹介してもらった。
ニコラさん
「故郷のロンドンは、『世界一忙しい街』ですかね。私はロンドンの中心部にも、ロンドンの郊外にも住んだ経験がありますが、道行くほとんどの人が忙しそうに過ごしています。でも、忙しい都市生活と文化的な生活との二面性もあります。博物館や美術館が多いので、意識的に雑踏からエスケープすることもできる。世界で有名なものは、ビートルズ、ローリングストーンズなどの音楽です。世界中の人々が一度は耳にしたフレーズがロンドンから生まれています。日本人は音楽だけでなく、映画も好きですよね。ハリーポッターシリーズからイギリスに興味を持った方も多いと思います。」
ライナスさん
「自分の住んでいたスウェーデンのカールスタード地域は、とても田舎でした。スウェーデンの西にあり、ほぼノルウェーとの国境近くになります。スウェーデンのカールスタードは偶然にも「晴れの町」と呼ばれていますが、その理由は天気とは関係ありません。昔からカールスタードの人々はいつも明るく、朗らかだとされていて、スウェーデンで優しい行動をすると、『カールスタードの対応だ』と言われるほどでした。心が晴れやかという意味で、晴れの町なんですよ。大自然の中で暮らしていると、都会に比べて精神が整うという感覚はあるのかなと。」
カムランさん
「ぼくの生まれ故郷のグッチンワラは、小さな村です。自分で野菜や家畜を育てて生活していました。農業の経験は誰にも負けませんよ。母国での生活と岡山に来てからの生活は、全然違います。キャッチフレーズは、〈バンジャピ〉にしました。岡山弁で言えば〈そうなんじゃ〉、関西弁で言えば〈そうなんや〉みたいな意味です。方言のような言葉で、みんなが日々よく口にする言葉だから選びました。グッチンワラの人間性とか文化がこの言葉に集約されているように思います。」
リナさん
「私は、中国の東にある青島(チンタオ)という地域に住んでいました。青島ビールというと多くの人が気づいてくれる、あの場所です。しかし、実はリンゴの産地として知られる地域なんです。だから、私の故郷は〈リンゴの町〉というキャッチフレーズにしました。紅富士という品種のリンゴで、とても赤くて、大きくて、甘いことが特徴です。日本では当たり前くらいの価格ですが、中国ではかなり高級だと感じられる価格で売られているんですよ。青島も岡山のように天気が良いため、美味しいリンゴを育てることができるんです。」
サウンさん
「ミャンマーのシャン州が私の故郷です。国の東部にあり、タイや中国、ラオスなどの国境と接しています。農業が盛んな地域で、ゴールデン街という場所があります。特に稲作が有名で、テレビで取り上げられたこともあります。金色に輝く稲穂が象徴的なので〈ゴールデンな街〉ということにしておきます(笑)。」
シギットさん
「インドネシアのバンドンは、〈英知の街〉です。教育機関や施設が多く、多くの大学があります。また、バンドンには図書館が12か所も建てられているほど、住民の知識に対する意識が高い。その影響か、昔から図書館に行き、本を読むことが好きでした。」
彼ら彼女らが、ひととき故郷に思いを馳せて考えてくれた母国のキャッチフレーズ。それらを聞いていると、日本人にとって馴染みがある場所も、そうでない場所にもグッと興味が湧いてくる。世界中、ありとあらゆる場所を、誰の視点で短い言葉に凝縮するか。キャッチフレーズはその地域を発信する上で、誰にでもできる優れた編集手法と言えるかもしれない。
CALAIS ULF LINUS/カレー ウルフ ライナス
スウェーデン出身 日本の滞在期間は約2年。公立学校の英語教師を目指している。
誰にでも “Fit” するオカヤマ
ライナスさんの新しいキャッチフレーズ
NANGSAUNG HNINOO/ナン サウン ニイン ウー
ミャンマー出身 日本の滞在期間は約1年。経理を学び、 母国で経営者を目指す。
やさしいヒトの街
サウンさんの新しいキャッチフレーズ
李 娜/リナ
中華人民共和国出身 日本の滞在期間は約1年。将来の夢は、 オンライン語学学校の立ち上げ。
养老の街
李娜さんの新しいキャッチフレーズ
夢と志を抱いて岡山にきた6人の留学生。
ここで日本語を学んだ先に描く未来とは。
岡山外語学院は、学生の夢を大切に、その実現に向けて最大限のサポートをすることを掲げている。最後は、本校で学ぶ未来ある留学生たちに〈日本語を学んだ先にある将来の夢〉の話を訊いた
サウンさん
「私は大学に進んで経理を学びます。経理を学んだ後は、民間企業に就職して経理事務を経験したいです。母国では母親が会社を経営しているため、ゆくゆくは私も経理を活かして仕事を手伝えたら面白いなと考えています。もしかしたら、最初は岡山の企業に就職するかもしれません。」
リナさん
「日本語と中国語と韓国語を学ぶオンライン語学学校の設立を目指しています。現在、韓国語はマスターしているので、ここで日本語をもっと習熟したい。二年半ほど中国語教師のバイトを経験していて、いまは教える側の練習中でもあります。オンラインならどこにいても仕事ができるし、この夢は絶対に叶えたいです。」
ニコラさん
「日本文学が大好きで、翻訳の会社で働きたいと思っています。日本語から英語への翻訳と、その文章の推敲がしたい。好きな小説は、谷崎潤一郎、江戸川乱歩らの一風変わった作品。日本人の綴る物語が好きで他のイギリス人にも読んでほしいと思うから、マニアックで知られていない作品を翻訳したいです。」
ライナスさん
「僕は日本の公立学校の英語教師を目指しています。スウェーデンで英語を学びはじめたのは僕が3歳くらいの頃。昔から英語を教えるのが大好きで、今も英会話教室で働いています。英語を話せない人が多いから、岡山では英語教育がより一層必要かもしれない(笑)。」
カムランさん
「将来は、観光サービス業に就いて日本文化を海外へ紹介したいです。外国人は日本に行きたいけど、言葉の壁がある点が悩み。パキスタン人も、日本に行きたい人がめちゃくちゃ多い!仕事に就くことができたらパキスタン人を東京、大阪といったところだけなく岡山にも案内したいですね。」
シギットさん
「僕は作家になりたいんです。世界中の国や街に行って、旅行記を書きたいと思っています。僕が生きた証を残したいですし、私の旅行記のファンが生まれたら嬉しいですね。そのため、1カ月に25冊、1年で150冊を目標に本を読むようにしています。日本語も英語も、自分の国の本も関係なく読んでいます。」
夢を抱いて日本を訪れ、岡山を選んでくれた若者たち。異国の地でそれぞれが目標に向かって学ぶ様には相応のストイックさと覚悟が伺える。 なにより、 岡山県は 「日本語を学びやすい県」だと知る事ができた。留学生たちが母国に帰った時、今度は岡山をどんな言葉で語ってくれるだろう。岡山外語学院の生徒の皆さんにエールと感謝を!
PROFILE
○学校法人アジアの風 岡山外語学院
1984年設立。当初は日本人の子どもから成人を対象に英語と各国語教育を行う。1992年に就学生のための日本語科の運営を開始し、1994年には日本語教師養成講座を開講。1997年には、ロシア・モスクワの東洋言語研究所(IPOL)と業務提携を締結。岡山外語学院モスクワ校を開校。2024年、文部科学省の認定する登録実践研修機関・日本語教員養成機関となる。グローバル人材を育て、人の輪を世界に広げていくことを目標に掲げている。
HP. https://okg-jp.com/
INSTAGRAM. okayamainstituteoflanguages
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