台風が過ぎ去ったばかりの9月、日曜日。県立岡山南高校の空は、清々しいほどに蒼く晴れ渡っていた。 校門から、ひとり、ふたり…次々と登校してくるのは、今回の特別授業を希望してくれた生徒の皆さん。 私たちが企画した「時間」をテーマにした特別授業は、高校生たちにとってどんな時間になるだろうか。
岡山南高校 新聞部 × プラグマガジン
【特別授業】
5時限目
#5.Lecturer
KIMI ONODA
小野田 紀美
参議院議員(自由民主党所属)
参議院外交防衛委員長
おのだきみ○
参議院議員(岡山県選挙区選出)
参議院外交防衛委員長
前防衛大臣政務官/元法務大臣政務官
アメリカ合衆国生まれ、岡山県瀬戸内市邑久町虫明育ち。
旧邑久町立裳掛小学校、清心中学校、清心女子高等学校を経て、拓殖大学政経学部政治学科卒業。ゲーム、CD制作会社にて、広報・プロモーションを担当。TOKYO自民党政経塾5期生。平成23年東京都北区議会議員に当選し、平成27年2期目再選。同年10月3日に区議会議員を辞職し、ふるさと岡山に帰る。平成28年7月第24回参議院議員通常選挙にて初当選。現在、参議院議員2期目。(※役職等、取材当時)
X. @onoda_kimi
INSTAGRAM. onodakimijimusho
YOUTUBE. 「小野田紀美公式YouTube」
若者の間で絶大な人気を得ている新鋭の政治家。
気さくで明るい笑顔の原点は高校時代に作られた迷い、
もがき、自分を確立するためのモラトリアム。
限られたわずかな時間をどう使えばいいのだろう
信念である《正義の味方》を貫くために走り続ける。
政治家の力を以て
悪事を正し理不尽を駆逐する
《正義の味方》を目指し
惑い多き時間を過ごす
この日、大型台風の接近と関東地方を襲った大雨により新幹線の運行がストップ。来岡が危ぶまれる中、登壇ギリギリの時間ではあるものの、奇跡的に無事岡山空港に降り立つことができた。岡山の空は青く澄みわたっていた。小野田紀美、参議院議員。法務大臣政務官と防衛大臣政務官を歴任し、現在は参議院外交防衛委員長を務めている。1982年アメリカ合衆国イリノイ州生まれ。1歳から母親の地元である瀬戸内市邑久町虫明で育つ。幼少期から曲がったことが嫌いで、《正義の味方》ヒーローに憧れていた。《正義の味方》を具体化する手段に迷っていた頃、小学生で手にした『まんが日本の歴史・卑弥呼』にインスピレーションを得て、政治家の道を志す。その小さな心の内に秘めていたのは「悪事や理不尽が起きない世の中を作る」という大きな意志だった。中学受験を経てノートルダム清心女子中学・高校の一貫校に入学するも、自身いわく「何もしなかった」。通学に2時間を費やすために、学生生活を謳歌する時間が足りなかったことも理由だが、最大の理由は「どうすれば政治家になれるのかわからなかった」ことにある。高校生の小野田は、漫画を読んだり、ゲームをしたりと、一見遊んでいるようにしか見えないかもしれない時間を過ごしていた。しかし自身にとっては非常に重要な時期を過ごせたと言う。
SNSから人気爆発
将来を嘱望される政治家
大学卒業後は、塾講師や雑誌編集、ゲーム会社などさまざまな職業を経験。いわゆる「地盤・看板・鞄」を持たないがためにタレント議員からのし上がるしかないかと考えてモデル業にも従事した。その後TOKYO自民党政経塾の塾生となり、2011年自民党の公認を得て東京都北区議会議員選挙で初当選を果たす。2016年には地元に戻り参議院選挙で岡山選挙区から出馬し当選。予算委員から文教科学委員、法務委員、議院運営委員、国会対策委員会、党の外交副部会長、ネットメディア局次長、青年局学生部長まで、ありとあらゆる役職を務めてきた。そして2020年菅内閣では法務大臣政務官に就任し、2022年第2次岸田内閣で防衛大臣政務官に就任する。現在は参議院外交防衛委員長として活躍している。SNSによって数多の国会議員の中でも抜群の存在感を発揮する小野田。「政界のジャンヌ・ダルク」など、冠される名には現状打開への期待が垣間見え、一部から「いずれは総理に」の声も挙がっているが、本人はこれを固辞。あくまでも《正義の味方》であることにこだわっている。今回小野田が対峙したのは、来年成人を迎える高校生たち。政治に対しての意識もそれほど高くないと推察されるが、彼女は何を語り、どう関わっていくのか。この日最後の授業の幕が上がる。
悪事と理不尽を許さない《正義の味方》が目的
今日はここに来れるかどうかドキドキしてましたが、無事飛行機が飛んで良かったです。小野田を知ってる方おられますか? えっ、結構おられるのね。私が高校の頃なんて、自分の選挙区の議員が誰か知らなかったよ。皆さんすごいね! 2023年9月まで防衛大臣政務官という役職に就いていました。各省庁ごとに大臣・副大臣・政務官の「政務三役」っていう3トップみたいな役があって、政務官は大臣、副大臣の補佐をする役割。防衛省は国を守る機関なので、例えば某国がミサイルを撃ってきた等何か起きた時は即座に集合して対応をしたり、国会で防衛省への質問の答弁も担当します。 委員会は、法案を決めるために環境のことなら環境委員会、教育のことなら文部科学委員会みたいにジャンル別に細分化されています。法律を作るには、まず総理大臣と各大臣が揃った閣議で法案を国会に提出する事を決定します。その法案を審議をするのが各委員会です。外交防衛委員長の仕事は、外交防衛に関する法案を審議する際に、野党と与党をうまく調整しながらの議事進行です。大切な役割ではありますが、自分の意見は言えず、、正直、私にはあまり合ってはいないかも。他には、海外の要人がいらっしゃった際にはその国の外務大臣や外交防衛委員長と会談したり、国交を深めたりする仕事もあります。 私が政治家をやっている理由は《正義の味方》になるため。政治家は単なる手段だと言えます。世の中には、おかしなことがたくさんはびこっていると思っていて、特に法律を守る、守らせるの部分には理不尽があちこちに転がってるので、それを是正していけたらいいなと思っています。外交防衛に携われるのは国会議員だけですが、同じ省庁ばかりに限定されずにいろいろなところで悪を正し理不尽を解決していく姿勢は貫きたいと考えています。
理不尽を変える力を
政治家は持っている
そもそも私は政治家っていうものは日本のために、日本の未来を本気で考える人しかなっちゃ駄目だと思うんですが、寝てて遊んでて不祥事を起こして…みたいなイメージを持たれるような議員がいるのも事実だから、全議員がもっと身を正さなくてはいけないですよね。 政治家の仕事は本当に終わりがない。365日休む暇なくやることがいっぱいあって、土日は行事があるし、年末年始も新年会とか挨拶回りとかあって休めない。年収2000万とか言われてますが、税金等諸々の天引き後の手取り額はトラックドライバーの妹に負けている時もあるしお金が儲かる仕事ではない。バッシングばっかりだし誰にも褒められないし、タイパとか稼ぐ仕事として考えると割にあう職業ではないですね。好きだからやれてます。 ついこの間、外国人永住資格取消しについての法案審議がありました。日本の永住資格を取得するためには要件がいくつかあります。外国人永住資格は更新が必要ないため(編集部注:在留カードは7年毎に更新が必要)、資格を取得したら要件無視で税金を滞納し始める、みたいな悪質な方もいました。取消しには反発もありましたが、永住資格は権利ではないし、資格要件を守りさえすればいいだけ。ちゃんと守っている方もいる中で、要件違反放置が許されるのは理不尽だ、 絶対変えてやる!と頑張りました。 それから奨学金問題も。日本人学生の給付型奨学金予算が70億、対して外国人学生は180億だった。これはおかしいと声を挙げていき、現在日本人の給付型奨学金予算は2500億を超えました。 おかしいことや理不尽を変えていく力、この力を政治家は確実に持っている。私の場合、ビシバシと悪いところを変えていける《正義の味方》でいられればそれでいいんだけど、政治家だからできることがある。誰も理不尽な目に遭ってないね、よかったよかったって、にっこり笑って死にたい。人生の時間を政治に費やすのは、自分にとっては決して無駄ではないと思ってます。 いま、政治不信が相当大きくなっていて、皆さんも「政治家ってなんなん」って思っているかもしれませんが、目立たず地道にがんばってるすごく優秀な議員が水面下にはたっくさんいるんです。皆さんには、切り取られている上辺のパフォーマンス部分ではなく、正確な情報をしっかり見極めてほしいと思っています。
無駄に思える時間でも自分を守る盾になる
物事を一方向から見ない
疑問を持つことが大切
皆さんはもうすぐ投票ができる年齢に達しますよね。日本は投票率が非常に低くて問題になっていますが、私は高ければいいとは思っていません。オーストラリアでは投票に行かないと罰金が科されるので投票率はとても高いんですが、これには問題があります。政治に興味がなく「誰でもいい」と思っている人が、ただ罰金を払いたくないからという理由で投票所に行く。するとタレント議員とか、名前を知っている人とかに投票したくなりませんか? 「とにかく投票に行け」と言われて出た結果が自分たちの国のため地域のために十分に考慮された民意なのか、それともマスコットキャラクターを選ぶような人気投票に過ぎないのか、票数だけみてもわからないんですよ。 だから、安易に投票先を決めずに、政治家本人の一次ソースを見てほしいな。SNSで普段どんな発言をしているかを見ると、どういう人間性かがわかります。「とりあえず当選する」が目的の政治家か否かとか、選挙前は写真をじゃんじゃん上げているのに、当選したら更新ピタッと止まってたりしてない?とか。 それから皆さん、ショート動画好きでしょう? ショート動画めっちゃ簡単に騙されちゃうんで気をつけてほしい。少し前に私のショート動画が上がっていました。放課後児童クラブ施設の増築に関する内容でした。子どもが増えて施設を増築する場合は国から増築費の補助が出るんですが、大規模マンションなどが急にできたりした場合は、子どもの増加は一時的なので増築よりプレハブレンタルの方が迅速でコスパも良い。でもレンタルには補助金が出ない。仮設施設にも補助金を出すべき、出そうよ補助! という質問をしました。 動画はその「補助出して!」で終わっていました。実はその後「OK、出しましょう」と続いているんです。しかも、その質問をしたのは初当選直後の8年前。その場で解決した問題が、まるで現在進行形の課題であるかのように取り上げられてしまっているんです。その動画についているコメントも「小野田さん、もっと言ってやれ」と。いや、もう言ったし、8年前にとっくに修正されてるし。こういうところを見ると、やはりショート動画は誤解を生む危険性が高く、正確な情報源にはなり得ないんだなと感じました。 動画が切り抜かれていたら、その前後の文脈を確認することが大切。誰かを言い負かしたり、攻撃したりするような内容になっていたら疑問を持ったほうがいいかな。その人が本当に問題改善を目指しているのか、それとも単に相手を批判したいだけなのかは、じっくり見ていくとわかってきます。その人の話し方や内容、建設的な提案をしているかどうかなども含めて、日頃の言動を自分で確認することが重要だと思います。 人は、ときに考え方が偏ってしまう事もある。「これは嫌い、これは好き」でカテゴライズしがちですよね。わかりやすいし、受け入れやすいから。でもこれって実はすごく危険なこと。私が地方議員をしていたとき幹事長に言われた「リンゴは表から見たら赤いけど、裏を見たら緑かもしれない」という言葉。一部の表面だけを見ても全体の色は分からないんです。物事を多角的に見ること、決めつけないことがとても重要だと思っています。そういう私も決めつけてしまうこともなくはないので…反省します。
信念をブレさせない自己確立の高校時代
高校時代の私は、ほんとーになんにもしませんでした。ただひたすら漫画を読み、ゲームをしてたかな。もし高校生に戻れるなら大人がみんな口をそろえるであろう「勉強」をします。英語をします。見た目で英語話せそうと思われるのがキツくて(苦笑)。英語やっときゃよかったなとはすごく思っているんですけど、漫画とゲームにのめり込んだ時間が今の私を作ってくれたといっても過言じゃない。ストーリーに泣いたり怒ったりしながら、私の心がどう感じるのかを確認していきました。自分と向き合っていくことで自分の中の大切なものを確立させることで「政治家になる」信念をブレさせないための土台づくりができた気がします。自分のなりたいビジョンが確実に決まってる人や、それに向かって何をやるべきかが見えてる人は、その道に向かうことに時間を費やせばいいと思うし、やりたいことがあってもどうすればいいかわからないとか、ちょっとまだ何をしたいかわからないっていうときは、いろんなことにもがいてみるのも良い。自分が何が好きか、何ができるかって自分を確認する時間ってすごく大事だと思います。
《大切なもの》があれば人生に無駄なものはない
タイパを再優先して行動することを、決して悪いこととは思いません。人生の時間は限られているので、一生のうちに何に時間を使うかを決める権利は皆さんにあります。だけど、《大切なもの》だけはタイパを無視して、思う存分無駄な時間を使ってほしいと思います。 私の高校生時代の「何もしなかった時間」はすべて無駄になっていません。議員になる前のいろいろな仕事をしていた時間も、です。タレント議員になれなかったからモデルは無駄だったと思われるかもしれませんが、モデルをやっていたおかげで、歩く姿勢がキレイだとめっちゃ褒められたりしていますしね。経験したことはすべて、自分の《大切なもの》に肉付けされていくので、大切なものさえしっかりと見失わず、貫き通していれば無駄なことは何 ひとつありません。 大切なことに時間を使うために無駄を省くのはとてもいいことだと思います。その代わり必要ないと思うことはタイパを考えて切り捨ててもいいんじゃないかな。 私の好きなゲームのセリフで「人生は長くもないけどね、決して短くもないよ」「まわりの風景を見る暇もない旅なんて、寂しいからね」というものがあります。 人生という長い旅の中で、目的地に着いた後に振り返ったとき、途中にどんな山があったか、どんな川が流れていたか、どんな花が咲いていたかがわからなかったら、ちょっと楽しくないと思いませんか。最短時間で目的を達成できたとしても、中身の薄い思い出になる気がします。皆さんの大切な人生の旅の中で、必要な肉付けをしっかりと行い、周りの景色も見ながら、不要なものは効率的に排除しつつ、楽しい人生を送ってほしいと思います。
自分にとって大切なものに思う存分時間を使う
無駄に見えてもしっかり肉付けがされていく
STUDENT IMPRESSIONS
生徒の感想文
THE END.