NEWS
Kansai Noguchi Exhibition《一初》
09 June 2024
#TAGS
  • ♯ART
  • ♯NEWS

陶芸家、現代美術家としていま最も業界から熱い視線が注がれる注目のアーティスト野口寛斉。6月9日より、氏の中四国初となる個展が岡山県・建部町のギャラリー《一初(いっぱつ)》にて始まった。陶器や書画を中心に約100点の作品が並ぶ、過去最大規模の大型エキシビジョン。今回、プラグマガジンでは準備中の会場で特別に時間を頂き、野口氏にショートインタビューを行った。

野口 寛斉 | Kansai Noguchi | 1982年 福岡生まれ。音楽家として2013年にNYへ渡り、イサム・ノグチの作品にインスピレーションを受け、帰国後、アーティストになることを決意する。2015年、彫刻家のアシスタントとして働いていたことがきっかけで陶芸をはじめ、翌年にはミッドセンチュリーモダンにインスピレーションを得た陶器レーベルとしてKANSAI NOGUCHI STUDIOを立ち上げる。その後、国内外で個展を開催し、陶器、 版画、水墨画、抽象オブジェなど制作し続けている。

-中四国では初となる個展の開催。開催までの経緯と今回の見どころを教えてください。

「昨秋、友人でもあり《一初》の共同起案者でもある橋爪悠也氏の個展『EVERY DAY IS A GOOD DAY – 日日是好日 – 』を観に初めてこの場所を訪れました。その時は、単純にかっこいい空間だなと思ったのが率直な感想です。こんなにすぐ自分の個展をさせてもらう運びになるとは思ってもいませんでした。音楽をやっていた時代に日本中いろんなところを巡りましたが、なぜか岡山は通り過ぎるばかりで(苦笑)。縁もゆかりも無かった自分と岡山を結びつけてくれたという意味でも、一初は既に思い入れのある場所になっていると思います。今回、百点を超える作品を展示させていただくのですが、これは過去最大規模の作品点数。私の作品に興味を持ってくださっている方にとっては、これまでにないスケール感と見応えのあるボリュームを愉しんでいただけると思います。これまではギャラリースペースよりも雑貨店やインテリアショップなどでの展示が多かったのですが、最近はアートピースに寄った表現が増えてきたこともあり、発表の場所にも変化が必要だと感じていました。そういう意味でも、古い日本家屋を再生した《一初》の空間と私のいまの作品には親和性があると感じています。」

-「野口寛斉 “Kansai Noguchi Exhibition” Interview 03」で、「使うものから切り離したくない」と話されています。ご自身の作品における「日用品」と「作品」の境界はどんなところにあるのでしょうか。

「アートピースに寄ったものをつくると、次は日常で使ってもらえるようなものをつくりたくなります。その逆も然り。これは自分の中で揺れ動いていく部分ではあるのですが、振り切ることなく、どちらの要素も感じられるものをつくるよう心がけています。大切なのは人との距離感。離れすぎず、近すぎない、そんな距離感を意識しています。」

-「野口寛斉 “Kansai Noguchi Exhibition” Interview vol.1」で話された「理想の形」とはどういうものか、イメージされていることを教えてください。

「完成されているが、どこかに『人間が残っているもの』。モダンなものを意識はしていますが、完璧さの中にも人間を感じられるディティールや造形がある、それが自分にとっての理想の形なのだと思います。」

-「縄文土器、李朝、古代ギリシャ彫刻がもつ素朴さと抽象的表現の相性を、私は探している」とご自身のホームページで記述されています。岡本太郎やファッションデザイナーの山本寛斎さんなど、芸術家やアーティストには縄文時代に魅せられる方が少なくありません。野口さんは縄文時代のどこに惹きつけられたのでしょうか。

「自分にも明確にはわかりません。ただ、それは言語化しづらいものという意味で。興味深いのは、ギリシャ彫刻や朝鮮の陶器など、文化の交流も無かった時代に生まれた世界各地の創作物には縄文式土器に通ずるディティールや一定の共通点、面白さを見出すことができるんです。それらは総じて《人間の本能》に訴えかけるもの、理由なく良いと思える何かを宿しているもの。私が希求する『オリジナル』はそこにあるのだと思っています。」

「一初」に会場入りしてから制作した大型の書作品を描く様子

-真珠を粉砕した塗料など、特殊な素材使いも特徴的ですが、画材や原料の選び方で重視していることはありますか

「素材を意識的に探しているわけではなく、必要としていたら寄ってきた、というのが実際のところ。真珠との出会いも偶然で、最初は“古臭いな”とあまり良いイメージは持っていませんでした。でも使ってみたら大きなプラスをもたらしてくれた。どんな素材も《出会い》と捉え、作品に活かしていけたらと思っています。」

一初の茶亭に展示された花器
書画や花器のほか、湯呑みや小皿なども多数

-野口寛斉はアーティストとしてどこに向かっていると思いますか。

「右も左もわからない場所に野口寛斉を投げ込んで、どうなっていくのか何ができるのかをじっと俯瞰しているイメージです。自分の中に入り込むのではないから、僕なんだけど僕じゃない、自身を表現しているとは言い難いんです。心が自然と揺れる、言葉では言い表せないものをつくっていきたい。進む先に答えがあるかどうかわかりませんが、追い求めて行くことこそが作品をつくる理由だと思っています。」

-最後に来場される方へのメッセージをお願いします。

「《一初》と《野口寛斉》、ここでしかできない鑑賞体験があると思います。何卒、大勢のご来場をよろしくお願いします(笑)。」


野口寛斉展 Kansai Noguchi Exhibition
会場   一初 (岡山県岡山市北区建部町中田171)
会期   2024年6月8日(土) – 7月7日(日)
営業時間 12:00~17:00  水・木曜日定休
https://ippatsu-okc.com/pages/exhibition-20240608

Categories:
Tags:
BACK TO TOP