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「地元の名店を絶やさない」地元実業家が集結、のれんの復活へ
07 December 2023
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「常にそこに在った」街に染み付いた老舗ののれん。その名前とともに想い起こさせる味の記憶は、懐かしさとともに「もう一度味わいたい」と欲求をかきたてる。 2023年10月、1年前に惜しまれつつ閉店した津山の名店「とん㐂(き)」が、再び街に戻ってきた。

とんかつの名店「とん㐂」復活へ

津山市で“とんかつと言えば”必ず名が挙がる老舗「とん㐂」が閉店したのは2022年10月のこと。大阪の有名ホテルでフレンチのシェフを務め上げた店主が創業者から引き継いでから約36年、夫婦で奮闘しながら地元の味として愛され続けてきた。高齢化と後継者不在のために閉店を決意した後もテイクアウト専門でしばらく経営継続していたが、先代の甥である真木祐治氏が「地元に根付いた味を絶やしてはならない」と、地元若手実業家の仲間に声を掛け、見事再起を果たした。

地元産木材を使用した家具製造から内装まで幅広く手掛ける株式会社脇木工(久米郡美咲町塚角1838)の脇優太氏。そして遊戯施設やゴルフ場など、アミューズメント事業を展開する全秦通商株式会社(津山市鍛治町37)の全本明令氏。さらに会計士の真木氏と、新進気鋭の若手実業家3名が集い、株式会社明優(めいゆう)を設立。真木氏が味の継承と経理面を、脇氏は店舗設計を、全本氏は社外折衝をとそれぞれの得意分野を持ち寄った形だ。

「味の再現がもっとも難関でしたね。先代に託されたレシピはありましたが、微妙な味の調整に試行錯誤を繰り返しました。おかみさんのお墨付きをいただけたことでここまでたどり着くことができました」。 遠方からファンが駆けつけ「再現してくれて嬉しい」と喜びを伝えられる。現在は平日のランチ営業(11時〜14時)のみ、看板メニューだった「ロースカツ定食」「ヒレ定食」「カツ丼」「みそカツ丼」の4種の提供に留まっているが、追々に在りし日の名物メニューの再現も目指しているという。

進化と継承、次世代に伝える価値


「より多くの方に味わってほしい」と以前の住宅地から、アクセス良好な街の中心部に移転。脇木工が手掛けた新店舗は、《津山らしさ》を感じられる木材をふんだんに用い、あたたかく静謐なたたずまいにリニューアルされている。 一方で《変えない》価値もある。「おなじみの豚のロゴイラストや、有田焼の食器は創業時から受け継がれているものです」。守るべき価値と時代やニーズに合わせた《進化》のバランスを保ち、昔ながらのファンの想いを汲みながらも、次世代に長く伝え続けるための提案が程よく混在している。 地域に根ざしてきた老舗であっても、後継者不足や原価高騰など現代を覆う社会問題の壁に行く先を阻まれている名店は少なくない。「とん㐂」の復活は地域への《想い》があちこちから集まったことで成し遂げられたプロジェクトである。人の想いが途切れない限り、地域の味としてこれから先も長く、永く愛されるための「在り方」を示してくれている。


とん㐂
岡山県津山市二階町58
TEL.0868-35-0909
営業時間.11時~14時(13:45ラストオーダー) 定休.土日祝
Instagram @tonki_tsuyama

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