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EDITORS PICKED OUT OKAYAMA UNDER 30 THE POWER OF #01
22 April 2021
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direction: Yusuke Yamamoto
photography: Shinichiro Uchida (SUPC)

GENERATION no.1

REP MY LOCAL HIP HOP=祭り

地元を誇り、それを表現する。いわゆる「レペゼン」するという行為は、
ラッパーやDEE-JAYが積極的に取り入れる傾向のあるカルチャーだが、岡山県・津山地方は知る人ぞ知る
ヒップホップとレゲエシーンが息づく街であり全国的にも独特の存在感を示す稀有な土地だ。
田舎であるという逆境をバネにしつつ音楽で地域を押し上げようと挑み続ける、津山にはそんなアーティストが大勢いる。
しかし、地元である岡山県民があまりにもそのことを知らないのではないだろうか。
今回フォーカスするTKGも、津山を拠点に活動するラッパーの一人。
並々ならぬ郷土愛を津山弁でトラックに乗せるのが彼のスタイルだ。彼が実現したいのは、
もっと仲間たちが地元でオーソライズされた世界——
ヒップホップには、祭りのように地域をアツく鼓舞できる可能性がある。


◎TKG Age.24 ラッパー(RED DOGS)
1996年 美咲町生まれ。津山を拠点に活動する音楽クルーRED DOGS(レッドドッグス)に加入して
DJからキャリアをスタート。現在はラッパーとしての活動を本格化させ、
昨年1ST TAPE「LOCAL BOY」をリリース。2021年、庭師として独立起業予定。
Instagram_@tkg_reddogs   
youtu.be/NxcChJfV08w




「いなたい」。
田舎くさい、泥臭い、垢抜けない、素朴な、ダサい、といった意味の俗語だが
「田舎臭いけど、どこか格好良い」「上手くないけど、味わいがある」
といった肯定的な意味合いで使われる言葉でもある。
TKGというラッパーネームはTAMAGO-KAKE-GOHANの頭文字。
彼は出身地、岡山県・美咲町が発祥とされる卵かけご飯の略称を選んだ。
ネーミングも、リリックも、フロウも「いなたい」でいい、それがいい。
アーティスト然とするんじゃなくて、等身大の自分のままで勝負する。
それが彼のポリシーであり、持ち味だ。
「格好つけのチャラチャラした連中に“いなたい”言葉をくらわしたい。
ギャングスタラップと津山弁は凄く親和性がある。だからリアルなんだ」。
うわべだけの人間関係、見せかけばかりのビジュアルが氾濫する現代に、
TKGは「いなたい」、本質の言葉を掛けていきたいという。


◎location: 食堂かめっち(岡山県久米郡美咲町原田2155)


現場仕事にリアルな言葉がある

庭師とラッパーのパラレルキャリア

 彼はラッパーと同じくらい、庭師という仕事にもプライドを持ち、情熱を注いでいる。たとえ音楽だけで食べていけるようになれたとしても、この仕事は辞めないと断言した。「地元で仕事をしながらだからこそ、リアルが曲に乗っかる。それに、津山の街を巡りながらでしか浮かんでこない言葉もあります。何より、現場仕事が好きなんで。それに、音楽以外の仕事をしながら夢を目指せることや、ビジネスでのドリームも掴めるっていうことを後輩たちに示したい」。それは、彼自身が見た先輩たちの背中でもある。津山では高校生たちが公園でサイファーする光景も珍しく無い。彼も年齢的にすでに中堅だ。だから、同じ様に生き様を見せたいと、庭師として独立起業することを決めた。TKGのヒップホップは、どこまでもリアルな生活と共にある。「ありのままの津山人として歌っていく。都会への憧れよりも、地元を押し上げることへの使命感の方が遥かに勝るんです」。




音楽で繋がる、オール・ツヤマ

TKG曰く、津山の音楽シーンには先輩・後輩の礼儀はあっても、封建的な政治やヒエラルキーなどは皆無だという。年齢や所属レーベル、クルーの境界は極めて曖昧だ。縦や横を気にするよりも、同じ「フッド」を持つ仲間としての意識の方が遥かに強い。「誰かが後押ししてくれるのを待つんじゃなくて、自分たちで地域を押し上げるんだっていう気持ちが強い。音楽シーンで岡山の都市部よりも津山の若手の方が勢いがあるのも、そういった地元意識が脈々と繋がっているからだと思う」。彼はアーティストとして高みに挑戦したいというモチベーション以上に、この仲間たちと一緒に音楽をやっていたいという気持ちが大きいのだという。野心は消さないが、自分にとって何が大切なのか、既にはっきりしているようだ。それは、郷土であり、仲間であり、リアルな日常。そして、願わくば、それがもっとオーソライズされた世間だ。


テクニックや小手先の演出ではなく、魂を言葉に乗せてぶつけてくるかの様なステージでのギグ。実は人前に出るのが苦手というが、この日も力強い津山弁が炸裂していた。TKGライブ予定はインスタで。


[右から順に/上段] da-ra、 DJ.OREO、 シュン、 イル、 ラリゴスタグラム、 ドコア、
[下段] JIN、 SORA、 TKG、 アトム

この撮影のために集まったTKGと同世代の仲間たち。
ラッパーやDJ、カメラマン、ビデオグラファー、デザイナーなど、「音楽」を共通項に繋がる津山の若手だ。
5/3先輩ラッパーである4prideが企画する津山の未来を支えるイベント
“SAVE The TSUYAMA STREET”の開催が決定しており、写真のメンバーも多数参加予定。
ぜひ津山のバイブスを生で体感して欲しい。
※感染症対策を行っての開催となります。

◎EVENT_SAVE The TSUYAMA STREET
2021.5.3.MON
START9:30 〜 CROSE19:30
@グリーンヒルズ津山
harlem0125@gmail.com



コンテンツ飽和の時代だからこそ地元が面白い

今回、数多くの津山アーティストの若手からTKGをピックアップしたのは、
「どうこりゃft.$ORA」という楽曲があったからだ。地元名産品を冠したラッパーネーム。
負けん気を鼓舞するような岡山弁ゴリゴリのギャングスタラップ、地元の仲間でMV制作まで全てを完結してしまう津山純度100%の潔さ。これこそレペゼンの極地ではないか。私たち岡山県人は、レペゼン岡山をレペゼンせねば、そんな風に思い至った。YouTubeでこのMVを見つけなければ、彼のことを知ることはなかったかもしれない。津山といえばYAS、紅桜、J-REXXXなど全国的にもコアなファンを獲得するアーティストを輩出しているが、10代、20代の若手が先達に影響を受け、続々と活動を表面化していることは、あまりにも知られていない。有名になってからモテ囃すのはやめて、「いま」、「ここ」の地元アーティストを検索していって欲しい。




Check this Out

◎TKG“LOCAL BOY”
津山の隣町、美咲町錦織の LOCAL BOYが村から飛び出して暴れ散らす“いなたい”CD。
全9曲 1000yen(税込)
《TRACK LIST》M1.LOCAL BOY/M2.OSSU/M3.イッペン/M4.烏龍茶 (prod.DJ KAJI)/M5.十人十色/M6.PRAYER ft ILLBUSTA/M7.BOWLING/M8.LA MIA VITA/M9.FORWARD

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