INTERVIEW
ストイックに地産地消を目指す、青山雅史さんの 人生の軸が垣間見える一本。
21 June 2023
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不定期連載:HIS WATCH WATCH&PEOPLE

誰ひとり意識していなかったとしても 結果的に地産地消が実現されていることにこそ意味がある。
-熱い想いは心の奥底に秘め、ひたすら地道に岡山県産のお茶を各地に届ける「引両紋/ひきりょうもん」の青山雅史さん。愛用する時計は、 友人とともに訪れた店で偶然出会った一本。 彼の生き方を形容するタイムピースがここにある。



追い求めるのは、いつだって理論よりも数字よりも 「かっこよさ」だった。


山で生まれ育ち、22歳で引両紋を立ち上げた青山さん。世間ではまだ地産地消という概念が浸透しておらず自身の実績もなかったため、商品の取扱いを打診したスーパーマーケットでは門前払いされる日々が続いた。その後、全国展開を目指して上京。百貨店での販売も行うようになり、初めは上手くいったもののライバルの巧みな販売手法に徐々に売り上げも減少。焦燥感を抱えながら過ごしていたある日、岡山県における茶葉の消費量が県内の茶葉生産量に対して十倍以上であることに気がつく。
「やっぱり岡山のお茶は岡山で売るべきだ。今飲まれている他県産のお茶を県内産に入れ替えることが出来れば--」。

進むべき道を見据えて岡山に戻ると、今度は県内での販売に注力した。その頃になってようやく、地産地消という言葉が世間を賑わせるようになっていた。しかし、青山さんは理想だけを一人歩きさせず、あくまで岡山のお茶を県内で消費する文化を作ることを軸に捉え、インパクトのあるワードに引っ張られすぎてはいけないと考えていた。
「地産地消という言葉が先にくるのではなく、結果的に地産地消になっているという状態がかっこいいと思うから」。
彼が自身のビジネスを表すその一言こそが証明だ。縁あって県内のスーパーでの商品取り扱いが始まると、青山さんが描く将来像に共感した人々が次第に集い、県内各地に引両紋のお茶が並ぶようになった。しかし、それでも地産地消という概念そのものを全面に押し出そうとはしない。
「たとえば、引両紋は岡山県内の病院に年間100万本に上る紙パックのお茶を提供しています。そのお茶を口にした方のうち、それが岡山県産のお茶であると意識している方は、おそらくほぼいないでしょう。それでも、結果的に地産地消を実現できている。それで良いと思うんです」。
どこにも流されず、自分で本質を見極める青山さんのスタイルが垣間見えた。

そんな彼が公私ともに大切にするのは、数字よりも〈かっこよさ〉。数式には表れることのない曖昧さを含んだ概念だからこそ模倣されることはないと胸を張る。岡山県産の茶葉を県内に浸透させる上でもこの軸は常に彼の根底にある。
「僕はただ、岡山のお茶を岡山の人が飲むという文化を作りたいだけです。その軸を中心に据えて、かっこいいのはこっちだ、と思う方を選んできました」。
たしかに引両紋のブランドにも青山さん自身の装いにもその感覚的なこだわりが表れている。青山さんといえば自他ともに認める〈収集癖〉の持ち主。ファッションからインテリア、趣味の分野でも思い立ったら暇がない彼のその癖、きっかけは小学生の時に出会ったナイキ エアマックスだった。
「かっこいい!っていう気持ちよりもなによりも、まず純粋に”モテたい”という気持ちが原動力でした(笑)」。
そう冗談交じりに笑う彼だが、靴もTシャツも時計も趣味においても、物事を極めるうちに、気づけばモテるかどうかはどうでもよくなって、周囲の評価は意味を失さなくなると語る。自身が思い描く高みをただひたすら目指し、市場価格やレアリティよりももっと深くにあるものの価値を見つけることに没頭するようになる。しかし、こと時計に関してはコレクターではないと彼は言う。
「コレクターには必ずと言っていいほど収集の軸があります。でも、僕は時計に関しては、タイミングと縁だと思っていて。無理に探したり何年も待ったりはしない。人生のいろんな節目で、その時に出会ったものを選び、一つひとつ大切にするようにしています」。


そんな彼の左腕で存在感を発揮するのは、〈IWC ビッグ パイロット ウォッチ トップガン モハーヴェ・デザート〉。米海軍の航空基地のあるモハーヴェ砂漠をイメージした本モデルはIWCには珍しいワイルドなデザインだが「これしか持っていないからそもそもIWCっぽさが分からない」と笑う。偶然や運命で形づくられる彼の”粋”。青山さんにとって時計とは、人生の節目の記憶。

「遠い記憶で、郵便局に勤務していた父が局長に就任した際に母から腕時計をプレゼントされていた。数年後、局長としての節目を迎えた時、母が贈ったのはまたもや腕時計。お下がりは当時高校生だった私が貰いました。そんな思い出も相まって、腕時計は人生の節目に寄り沿うものであり、いずれ自分の手から離れるとも思っています。今は預かっているような感覚です」。




His Watch

IWC BIG PILOT’S WATCH TOP GUN EDITION “MOJAVE DESERT”­­­

サンドカラーのセラミック製ケースを採用し、 高度な技術を集結した「トップガン」ウォッチシリーズを 継承する特別なモデル。
Ref: IW506003
ケース径 46mm、自動巻き、 セラミックケース、布製インレイ付きラバーストラップ
¥2,200,000(税込)





PROFILE あおやま まさふみ
1987年5月、岡山県備前市生まれ。株式会社引両紋代表取締役。茶摘みをしていた祖母の影響で日本茶に興味を持ち、22歳で株式会社引両紋を起業。お茶のブランド展開においても、当初百貨店を中心に販売をしていたが、「岡山県産のお茶が岡山県内で消費される文化」を目指して、スーパーや量販店での販売、さらには病院や介護施設での提供に拡大。 岡山県産のお茶が岡山県内で消費される文化を目指して精力的に活動する。4月にコンセプトショップ「と、」をオープン。

と、
岡山県赤磐市馬屋726
営業時間10:00~18:00(L.O. 17:30)
定休日:火曜日
お支払いは現金のみ取扱い

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