FEATURE
未来の社会の在り方を体現。 地域と企業を繋いだ 産学協同プロジェクト。
12 June 2023
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特集:岡山の未来 SPIN OFF

今回PLUGがピックアップするのは、塩飽大工をルーツに持つ老舗企業“まつもとコーポレーション”と今年開学30周年を迎える“岡山県立大学”によるオフィス共同改修プロジェクト。固定席での集中作業が多い設計部という特性に留意しつつ、ABWやフリーアドレスを意識した新しいオフィスの形を実現。その経緯と結果を取材した。



出社したらどこでも自由な席に座って仕事ができるフリーアドレス。業務内容によって、働く場所や時間を自由に選択できるABW。いずれも固定席で集中して仕事に取り組むことが多い“設計”には難しそうな働き方だ。しかし、まつもとコーポレーションは岡山県立大学の畠准教授と共に新しいオフィスを作り上げ、設計部に合ったフリーで身軽なスタイルの構築に成功した。まつもとコーポレーションは、江戸から明治にかけて天下にその評判をとどろかせた塩飽大工をルーツに持つといわれる。塩飽大工は備前や讃岐を中心に多くの仕事を手がけ歴史的な建造物をあらわしてきた。一方の畠准教授の研究室も、普段テーブルや椅子として使っている木材を組み直して簡単に大人一人の個人空間を作れる災害ユニットを考案し「キュービクル・最低限のシェルター空間国際コンペ」で最優秀賞を受賞するなど、木材を扱う第一線の研究者である。両者が行うプロジェクトは、どのような経緯をたどり、何を体現したのだろうか。


エンゲージメントを育むオフィス。岡山県産の木材で作られた大学×企業による共同プロジェクト。


今回の共同プロジェクトでリニューアルするのは、まつもとコーポレーション設計部のスペース。業務上、他フロアのように完全なフリーアドレス化は難しいため、随所に工夫を凝らし、働きやすさはそのままに風通しの良い空間へチェンジした。集中を妨げないよう個別のスペースを確保しつつ、開放的なフロアが完成した。



Planning

風通しの良い空間を実現使いやすさと作業効率もアップ

Office furniture planning


書類や参考書籍などが多い設計部。以前は資料が所狭しと置かれていたが、リニューアルを機に部署全員で整理整頓を実施。収納と作業のスペースをデザイン的に住み分けることで、使いやすさと作業効率もアップ。現在は、個々のデスクを一部カスタマイズして自分好みの収納を作り上げているスタッフも。デザインによるアイデアと工夫が業務にも相乗効果を生み出し、今まで以上にイノベイティブなオフィス空間が誕生した。


両脇のデスクに挟まれたテーブルは、打ち合わせ用のスペースとして上部には常に何も置かれていない状態をキープ。下部が収納になっており、資料を取り出し、広げて話し合う、というスムーズな動線も確保されている。



窓下の格子にも県産の木材が。実はこの窓下、オフィスのどこからでも視界に入りやすい場所。PCから視線を上げた時、コーヒーリフレッシュやトイレ休憩の時、立ち並ぶ格子を見たらちょっと心が軽くなりそう。こうしたディテールも「来る価値のあるオフィス」を作るための重要なファクターになっている。



Furniture
使いやすさを追求動線を邪魔しない家具を作り上げる

Office furniture planning


PCを置く机、書類を収納するデスクワゴン。さりげなくあしらわれた間仕切りも今回制作されたオリジナルの家具だ。働く社員の動線を邪魔しないよう、「どんなデザインだと使いやすいか」を徹底的にヒアリング。学生たちは自由なアイデアを発揮しつつ、実際の使い勝手もしっかりと考慮。大学・会社双方のプロジェクトメンバーでミーティングと試行錯誤を重ね、現在のカタチに仕上がった。社員からの評判も上々だそう。


目立つところに大きな節があったり、家具の角がほんの少しずれていたり。これは、岡山県産の木材を使うことにこだわってプロジェクトメンバーが試行錯誤した手作りの味。棚は製材を持ち込んで現場で組み立てたものもあり、手作業ならではの風合いも。ずれといっても使用感はまったく問題なく、使っているうちに愛着が湧いてくるという人がほとんど。従来のオフィスにはない有機的な佇まいが魅力だ。




SPECIAL INTERVIEW

まつもとコーポレーション Interview with 岡山県立大学

地域貢献とSDGs 未来のオフィスデザインのその先とは


地域の企業と大学が手をつなぎ、未来のオフィスのあり方を模索した共同研究。企画を主導した二人に、プロジェクトの経緯と今後の展望について聞いた。



赤枝)ゼミの活動を拝見して、畠先生が木(もく)を専門に研究しており、実績も豊富でいらっしゃると知りました。災害ユニットで世界的なコンペの最優秀賞に輝いていることも。ふだん使うテーブルや椅子を組み替えて、災害時、誰でも簡単に必要なユニットを作れる、シンプルかつフレキシブルなアイデアに感銘を受けました。それで当社から共同研究というかたちでオフィス改修を行なっていただけないかと打診しました。

畠)当時、すでに設計部以外のスペースはフリーアドレスが実現しており、設計部だけいわば取り残されているような形になっていたんですね。オフィスを拝見した時に部署の領域が閉じている印象なのが気になりました。この構造だと、そのエリアの中でコミュニケーションが完結してしまう。企業の成長を促すには、オフィスの各場所で偶発的な出会いがあるような構造が望ましいのではないかと。そこで仕切りを取り払い、流動的にコミュニケーションができるような空間にしていこうというコンセプトが生まれました。

赤枝)学生さんの意見も新鮮なアイデア満載で良い勉強になりました。改修で主に使われている3㎝×9㎝の板材は、誰でも手に入る安価で普遍的な建築部材でいう究極のフォーマットといえる素材。普遍的な材料を使ってオリジナルな空間を構築するというのは先生のゼミの遺伝子といえるのかもしれません。

畠)地産地消の概念を木材に取り入れているのも大きなポイントですね。海外の安価な製材が手に入れやすい昨今、地元でとれた県産の木材だけを使うというのは手間もかかるし、とにかく大変なんです。ですが、こちらの企業が塩飽大工にルーツを持っているということもあり、また輸送でかかる環境負荷などSDGsの観点からも地元の材料を使うというのは意義があると考えました。

赤枝)木材の調達では服部興業グループの岡山木材市場さんにご協力いただきました。当社としてもオフィスに県産材を使うというのは非常に意義があり、会社を有機的なものへ変化させる重要なポイント。また木材を扱うノウハウや先人の知恵を受け継ぐというのは持続可能な社会を目指す上でなくてはならない視点でしょう。設計部のオフィスはこのプロジェクトで『行きたくなるオフィス』になったと思っています。このコンセプトをもっと拡大できれば、オフィスはさらに居心地良い空間になるでしょうね。「まだまだアップデートしたい」と二人の話は尽きない。さらなる作業効率や利便性の向上を求め、カスタム可能な家具なども検討中だという。地域の強みを結集した新しいオフィスのあり方。その挑戦はこれからも続く。



PROFILE 赤枝達樹
まつもとコーポレーション設計部設計課長。設計事務所、建設会社を経て同社入社。測量業務に従事した経験もあり、現在はオフィスや医院など幅広い建築設計を行う。サッカー好きでファジアーノ岡山の熱心なサポーターでもある。


PROFILE 畠和宏
岡山県立大学デザイン学部建築学科准教授。宮城大学、筑波大学大学院、千葉大学大学院を経て博士(工学)取得。民間企業での実務経験を活かし、研究と実践の両面で活動。2022年「最低限のシェルター空間国際コンペ」最優秀賞。


プロジェクト主要メンバーをご紹介

今回の共同研究には、まつもとコーポレーションの設計部社員と岡山県立大学畠研究室の学生が参加。それぞれの思いやアイデアを持ち寄り試行錯誤を重ねて実現した。ここで紹介するのは、プロジェクトの主要メンバーたちだ。


(左から順に)
竹内 誠/設計事務所を経て1989年に同社入社。建築設計一筋 40年のエキスパートであり、設計部スタッフをまとめる執行役員設計部長。

長岡 遊来/福山大学大学院修士課程修了の後、2020年に同社 入社。躯体部分の構造設計と建築情報など提案資料の作成を行う。

梅里 歩/岡山理科大学専門学校を卒業後、2018年に同社入社。 技術員として現場を学んだ後、設計部へ異動、現在は建築設計を行う。


(左から順に)
𠮷田 きなり/岡山県立大学デザイン学部を卒業後、デザイナーとし て同社入社。社内報やHP制作を担当。現在は産休育休を取得中。

小林 弘樹/岡山県立大学、同大学院を経て4月より設計事務所に 入社予定。利用者の目線に立った建築設計を行うのが今の目標。

河田 達希/高校、大学と建築を専攻。現在は新庄村の地域おこし 協力隊で木材加工を行う。家具や小物の設計をし、商品化するのが夢。


まつもとコーポレーション
〒700-0822 岡山市北区表町三丁目14番1号 アークスクエア表町1F
tel. 086-230-1155

https://www.matsu-co.com/
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