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T-SHIRT&ME Vol.1_YUKKYUN
10 November 2022
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Beauty of youth。 Wasted youth。
何なら100円以下でも手に入れようと思えば手に入る、 世界で一番自由度が高いおしゃれの入り口、それがTシャツ。 一生背負って生きたいと思わせてくれたグッドフレーズも 恋に落ちた彼が好きだったバンドも、計算し尽くされた企業ロゴも…。 独自の世界観で活躍のフィールドを広げる岡山出身の《DIVA》と 当誌がローカルファッションシーンで注目する6人のキーパーソンに 自分のお気に入りについて語ってもらいました。

PHOTOS BY. Shinichiro Uchida(SUPC)




Vol.1

YUKKYUN

Age.27
DIVA

ただの男の子、になれる。

ブラウスLOVE。カジュアルファッションはほとんど着ない。 そのセンスと言動が世間を圧倒する《DIVA》ゆっきゅん。
選んだTは大好きな歌姫たちのツアーグッズ。 彼にしかできない着こなしで、Tシャツの世界を拡げてくれた。


Tシャツはあんまり似合わない、って思ってた。

ゆっきゅんをまったく知らない人に、彼を伝えることは難しい。見た目や性別、ありきたりな枠組みに嵌めようとすると、嵌めようとした側が痛い目にあう。視るたびにふれるたびに新しい価値観を纏い、もしくは脱ぎ捨てて、まるで違う生き物のように変幻自在な存在感を放っているので、知る言語すべてを駆使したとしても、彼を表現しきれずにほぞを噛む。  
世間がゆっきゅんをはっきり認識したのは2016年、彼が青山学院大学在学中の21歳のときのこと。玉城ティナや蒼波純、菅本裕子らを輩出したことで知られる、講談社主催の「ミスiD」オーディションであった。史上初の男性ファイナリストとしてゆっきゅんを目のあたりにした際の衝撃は、瞬間で称賛へと変化し、さらに時を待たずに「もっと見たい」「もっと知りたい」渇望になっていった。声に後押しされるように、ルアンとの男女2人組によるポップユニット「電影と少年CQ」の誕生へとつながっていった。独自演出による楽曲と芝居でのライブ「ギグ」が大きな話題となり、世の中をざわつかせるには十分なセンセーションとして知名度が日に日に高まっている。

2021年3月に大学院を修了し、同年5月、26歳を迎えたと同時に「DIVA Project」のセルフプロデュースを発表。「DIVA ME」「片想いフラペチーノ」を配信リリースし、そのエンタメ性の高さに注目が集まった。その後も修士論文の研究対象であった少女マンガおよび邦画についての深い造詣や、独自の世界観を展開する軽妙なトークが話題に。『ユリイカ』『キネマ旬報』での執筆や、映画や舞台出演など、音楽のみならず活躍の幅広さはとどまることを知らない。
「こんなこと言っちゃうと元も子もないかもしれないけど、Tシャツってあんまり持ってないし、私には似合わない、ってずっと思ってたんです」。確かに、ステージやPVなどを見ても、ゆっきゅんが選んでいるのはきらびやかで、デコラティブなファッションが目につく。この日選んでもらった3枚も、大好きな歌姫たちのグッズが中心だ。黒Tだけは「DIVA Project」のものだが、いずれもゆっきゅんが愛している人と活動に付随したものだ。「でも、このグッズTをこんな感じに着こなせるのは、逆に私しかいないのかもしれないなって」。 Tシャツだと 「ただの男の子」になれる。
衣装はもちろん、普段の装いもシャツやブラウスが大好き。襟がないファッションは落ち着かない。カジュアルファッションはせいぜいジーンズ程度で、Tシャツはたぶん、10枚程度しか持っていないし、そこまでお金をかけようという気にもなれなかったと話す。
「本当、よっぽど好きって感じなければ買おうなんて思わなかった。ブラウスLOVE過ぎて。好きな歌姫たちの想いを自分のそばに置きたいがための推し活みたいなものですよ」。とは言えゆっきゅんの言う通り、アーティストの顔が大胆にプリントされたグッズTシャツをここまでエレガントに、モードに着こなせるのは並大抵のセンスではない。
「服はいつも、『これだー』っていう感覚だけで選んでるから、そこに条件や法則はないんです」。ゆっきゅんの場合、Tシャツは好きな《人》ありき、だがファッションであることには違いないと言う。「ただのグッズとは思っていないから、やっぱり服として着こなしたい。こういう大胆なプリントも服として、好き」。確固とした自分の世界を持つゆっきゅんだから、グッズがグッズで終わらないのだろう。
「ネックレスやチョーカーがあれば、Tシャツも自分らしく着こなせるって分かってからは、以前よりTシャツを好きになれたかも。着てみたら意外と似合うし、ただの男の子になれる服だなあって。でもやっぱり、音楽とは切り離せないものですね。好きな音楽と好きな人、それがないと始まらないし、成り立たない」。  
愛する歌姫の一人、リナ・サワヤマのグッズTシャツもわざわざ海外から取り寄せていると話すが、出せる上限額はせいぜい8000円程度と考えている。
「あゆや大森さんみたいに、人気アーティストのグッズはロット数が多いから価格も低くなりますよね。あゆTは3000円くらいじゃなかったかな。あゆの場合は全国に流通してるから、昔のTシャツをフリマなどで買おうとしてもそこまで価格が跳ね上がることはないですね」。
グッズを手に入れるためにゆっきゅんも通販サイトやフリマサイトを活用しているんだそう。 「人生最高額のTシャツはこの、大森靖子さんのものです。『意識高いT』シリーズは毎年リリースされていて、ずっとずっと欲しかったTシャツ。今回紹介した一枚も、19歳のときに、お金がない中でがんばって買ったものだから、すごく思い入れが強い。私にとってはかけがえのない宝物なんです」。

類稀なるマルチな才能を持ってして、周囲の想像を超えることで私たちを翻弄しているようにも見えるが、ゆっきゅんの骨子としてあるのは《音楽》であり、《DIVA=歌姫》だ。
「好きな人とか、好きな音楽はあるけど、『こうなりたい』的なロールモデル像は持っていないんです。好きなものが多すぎるから、それを全部融合して、自分なりに解釈していきたいってイメージですね」。好きな歌姫は浜崎あゆみや大森靖子といったアーティストだが、見ているところ、好きな部分が少しずれているかも、と話す。「彼女たちの好きなところは、歌詞の持つ世界観。孤独感というか。自分が表現する側になってはじめて《歌詞》だけが持つチカラを知ることができた気がしています」。
音楽に触れはじめた2000年前後は、浜崎あゆみや宇多田ヒカル、椎名林檎ら歌姫の全盛期。同時にモーニング娘。をはじめとしたアイドルミュージックも、ゆっきゅんを虜にした音楽だ。
「音楽を聴く、というよりもカラオケが大好きだったんですね。だから歌っていて自分にしっくりくる、《歌詞》が大事で、好きになる要因だった」。
当時、アイドルはもちろんのこと、歌姫たちはその言動や見た目、ファッションにおいても世の中の女性のアイコンだった。皆がこぞってメイクやヘアスタイルを真似て、彼女たちに同一化しようとしていた時代だが、ゆっきゅんはハイテンションなミュージックに乗せた《歌詞》の中にひそやかに流れている、歌姫たちの孤独だが誇り高い世界観に一人、共鳴していたのだ。高校時代までを岡山で過ごしたゆっきゅん。高校文化祭の舞台でアイドルの真似をするなど、目立ちたがりでひょうきんな面もあったが、その目的は自己表現ではなく《目の前の相手を笑わせたい》。
「今の活動にも通じているものがあると思います」。  さらに2014年に大学進学のため上京した際には、もっと貪欲に《吸収したい》気持ちが強かったという。「部活も吹奏楽で、音楽は大好きだったけど、それ以外の芸術にも知的好奇心が溢れてました。大学での専攻は映画学でしたし」。
当時は今よりももっとずっと、東京と地方の差が激しかった時代だ。
「私は家がシネマクレールも近かったのでミニシアター系の映画も観ていたのですが、Twitterで東京の文化人たちがこぞって話題にしていた山戸結希監督の作品は東京でしか観られなくて、ずっとここにいるのはキツい!と感じていました」。
岡山にいたのでは観れない世界を観たい、ただその気持ちが大きく、自らが表現者になることは考えてもみなかった。「自分が通用するなんて思っていませんでしたしね。見た目も、能力も。でも、上京して数週間が経ったころ『自分は表現する側だ』って気づいたんです(笑)」。そうして、ゆっきゅんの現在の基となる、アイドル活動が始動することとなる。もっと面白い世界を観るために。

《DIVA》になったことで どんどん原点に戻っている。

ゆっきゅんのビジュアルや思考には、人を引き込む独自の世界観がある。その中でも「DIVA ME」のPVからは、少しウエットでサブカルチャーなドラァグクイーンの影響を感じるのだが。
「あまり考えたことはありませんでした。それぞれの場所で美しく輝いているドラァグクイーンの姿はすごくかっこいいし、面白いし、素敵だなって感じます。でもちょっと違うかな」。
ゆっきゅんの存在を表す言葉は、やはり《DIVA》に集約されている。「《DIVA》を言語化するならば、『誇り高くあろうとする』意志やたたずまいのようなものだと思う。観てくれる人たちにも感じてもらいたいし、そう生きてほしいと思っています」。
セクシャリティの表現もあまり意識していない。
「《DIVA》を好きな男の子が、好きすぎたので《DIVA》になりました、みたいなイメージですね。ビジュアル面は、まだ引き算を覚えてないので、とにかく足したい。腹筋鍛えたり、ラメでコテコテにしたり。でも、このプロジェクトで《本来の自分》に戻っています」。ユニットやコラボも経験し、様々な人たちに会う中で今が一番《しっくりくる》と話す。「私はこういう姿で、こういう考えで。MVにしてもアルバムの楽曲にしても、どんどん原点に戻っているのを感じています」。
「DIVA Project」も一周年を迎え、5月には初めてのワンマンライブも決行された。
「コンセプトは『みんなDIVAになる』。ライブから帰る頃には今までのわだかまりやしがらみがどうでもよくなってしまうような、『つまんない仕事、思い切ってやめちゃうか!』みたいな前向きな気持ちになってもらおうって企画しました」。
デビュー曲「DIVA ME」の中にある、自分らしい過ごし方の中にも《DIVA》を目覚めさせたいという気持ちが、ここにきて大きくなった結果なのかもしれない。
「やりたい音楽はダンス・ディスコチューンみたいな《踊れる》もの。でも何も考えずただ踊れー、ってのは私には無理。それぞれ、感情や考え方は持ったままでいいと思う。私が考える《DIVA》は、孤独な魂のためにあるものだから。必ずしもインディペンデントでなくたっていい、自分の中の小宇宙を、誰にも奪わせないで生きてほしい。歌の3分、4分の中だけでも、聴く人にはそんな気持ちになってほしいと思っています」。
誰しもの中にある《孤独》、それは決してネガティブばかりではないはず。
1STアルバム『DIVA YOU』からほとばしるのは、日常へのエールと、《孤独》と向き合うことの深みや面白さ。ゆっきゅんワールドに触れることで、自身も救われたという《DIVA》の、美しくも情けなく人間臭いたたずまいを、自分の中にも見つけることができる。


(紹介したTシャツについて)
◯着用してるのは浜崎あゆみさんの20周年記念グッズで、2018年のさいたまスーパーアリーナでのライブで販売されていたものです。すぐに売り切れてしまったけど、どうしても欲しくって、探しまくって通販で手に入れました。 ○白地にプリントのものは、大森靖子さんのオリジナルグッズです。2014年9月にデビューされて以来、毎年リリースされている「意識高いT」シリーズの中の1枚。どうしてもどうしても欲しくて、待って待ちまくって再販でようやく、手に入れたもの。私にとっては《宝物》なんです。 ○黒いTは、ソロ活動「DIVA Project」始動を記念してつくったもの。受注生産だったんだけど、すごい人気をいただいたので再販が決まりました。早くリリースしなくちゃと思いつつ、事前準備に追われてるトコロ…(待ってくれてる方ごめんね)。プリントはシルクスクリーンなんだけど、サイズによってちゃんと版の大きさを変えている。イラストレーターさんに「普通はそこまでしないよ」って言われたけど、そこはちょっとがんばって、こだわってつくりました。


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ゆっきゅん
DIVA  / Age.27

◯○1995年5月、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術専攻修了。修士論文のテーマは「少女マンガ実写化映画の変遷」。ルアンとの男女2人組による、サントラ系アヴァンポップユニット「電影と少年CQ」(「ユッキュン」名義)としてのライブ活動を中心に展開中。同時に個人プロジェクトでは、映画やJ-POP歌姫にまつわる執筆から演技、トークなど活動の幅を広げている。映画では、出演作に『21世紀の女の子』、監督作に電影と少年CQ『Pa.Pa.La.Pa.』がある。2021年5月より開始したセルフプロデュース「DIVA Project」にて、「DIVA ME」「片想いフラペチーノ」の配信をリリース。2022年3月には1stアルバム『DIVA YOU』のリリースと、ワンマンライブ「自由が始まるDIVA Your Stage」を渋谷「WWW」にて開催した。もっとも好きな歌姫は浜崎あゆみと大森靖子。

Instagram:@guilty_kyun
https://www.guilty-kyun.com


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