COLUMN
VOL.04 古市大藏の岡山表町慕情。
14 December 2019
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岡山のまちづくり・ひとづくりの立役者であり世話人、古市氏による表町を舞台にした考察コラム。
Photo: Masatoshi Kaga text: Sayaka Harada


自助と互恵の精神こそが今必要なものである

これまで私は、表町のみならず岡山という街が今後どうなっていくべきかということについて、多くの意見を述べ、時に議論を交わしてきました。いま、その集大成として一つのキーワードを挙げるとしたら、「互恵」という言葉に尽きます。これは、字の如く「互いに恵み合う」ということ。自分が、という我欲や自己実現だけに重きを置くのではなく、他人や社会との共存の中にどう世界が広がるかということに主眼を置く。この精神無くして、個の成長も街の発展・繁栄もないと私は思います。そして、その前提としていま、個人が持っていなければならないのが自助の精神です。他人の力を借りることなく、自分のことは自分で責任を持って面倒をみるということですね。「自助」を実践せずに「公助」を求めてばかりはいけません。「自分がやらなくても誰かがやってくれる」「自分がこうなったのは親や地域のせいだ」などと人のせいにしたり、他人をあてにするのではなく、まずは依存心を捨て、自助の心を持って自立する。その上で大切にすべきが互恵の精神なのです。この「互恵(ごけい)」を我が社流に解釈したのが「5K=個人・家庭・会社・郷土・国家」という考え方。この五者をそれぞれが互いに大切に恵み合っていこうということを、我が社では全員の共通認識として共有してきました。言うまでもなく、自分や家族を大切にすることは人生でとても重要なことですし、それができる人にトミヤで働いてもらいたい。良い家庭から出勤すれば、良い仕事もできると思うんですよ。企業にしてみれば、お客様のことを考えず自社の儲けだけに走っては、将来的な会社の成功はない。また、地域全体の活気や経済が良い状態でなければ、地場のマーケットは成長しません。つまり、個人・家庭・会社・郷土・国家はすべて同列の上に成り立っているということです。これは企業の在り方だけでなく、まちづくりでも同じことが言えると思います。私は、商人の「三方よし(売り手・買い手・世間)の精神」に、地域・未来を加えた「五方よしの精神」で表町商店街の未来を見据えていきたいと思っています。広義的に捉えると、互恵の精神と「持続可能な開発目標SDGs」の考え方には共通するものが多々あります。2015年に誕生したSDGsは、いま世間にも広く認知されるようになってきました。これが現代の時流でもあるということを喜ばしく思っています。


健康・教育・環境・観光・科学技術という5K

持続可能なまちづくりにおいて、まず考えるべきは、何を中心にして取り組むのかということです。私は、岡山のまちづくりで大きな柱を5つ据えるとするならば、「健康・教育・環境・観光・科学技術」ではないかと考えています。まず、「健康」についてですが、岡山は全国的に見ても医療という分野において非常に秀でている。この健康医療産業をテーマとするならば、医療、食、フィットネスなど、紐づくものがずらっと出てきます。岡山市も、「運動・栄養・食生活」といった健康につながる活動をすると、ポイントが貯まり、地域のお店や施設で使うことができる「おかやまケンコー大作戦」という事業を展開するなど、行政としても力を入れています。私自身も、表町桃太郎ジムを通してこの分野に貢献したいという思いが強くあります。また、「教育」という観点も大切です。かつての岡山が全国に知られた教育県だった時のように、「教育県・岡山」の復活を目指す。そして、世界中から優秀な学生が集まれば、どれだけ地域が発展することか、と想像しただけでワクワクします。観光・環境・科学技術にしても、この「5K」の何がトップになっても、その裾野は大きく広がっており、様々な業種が関わりながら発展することができるのではないでしょうか。そして、ここで重んじるべきなのが、先に述べた自助の精神です。これは個人だけでなく地域においても同じことが言えると思います。災害など有事の際は別ですが、基本的には地方も自主性と個性をもって自立すべきだと思うのです。隣県である広島は、スポーツでの振興が非常に盛んな地域です。2017年の総務省家計調査による世帯ごとのスポーツ観覧料は、全国平均の5倍超である3900円と全国でもダントツのトップ。もちろん広島カープやサンフレッチェ広島の影響力は大きいと思いますが、それだけではありません。昨年は世界最大規模のアーバンスポーツの祭典が行われ、広島駅に巨大広告が出現するなど、街をあげてスポーツイベントを盛り上げようという気概が感じられました。まちづくりは地域全体で一丸となって取り組むものです。そのとき、個人がバラバラに好き勝手やっていては、魅力が分散してしまうのではないか、ということを危惧しています。「岡山ってなんでもあるよね」は言い換えれば「岡山って何にもないよね」にもなり得るからです。何か一つでも突出したものがあれば、日本中、いや世界中から人を惹きつけられる場所になると思います。「しょせん岡山だし」と自分たちで限界を決めてしまうのではなく、とにかくナンバーワンを目指すべきなのです。個人も企業も地域も、皆が一丸となってトップを目指す、やはり、こうした情熱が大切ではないでしょうか。それが、私のやってきたことの集大成とも言える「互恵」の精神を抱いた、持続可能なまちづくりに繋がっていくと思います。

〇古市 大藏(株式会社トミヤコーポレーション 代表取締役 会長)
11945年岡山市生まれ。世界の一流品を扱う時計・宝石の専門店を岡山県内に11店舗展開する㈱トミヤコーポレーションの代表取締役会長。岡山商工会議所副会頭のほか様々な地域経済団体でも役職に就き、長年に渡って岡山のまちづくりに尽力し、地域を担う若手の育成や教育にも携わっている。商人の精神「三方よし(売り手・買い手・世間)」に(地球・未来)を加えた「五方よし」の精神で地域の未来を見据える。

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