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一時代の女性譚_Vol.11 女性目線
22 June 2022
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それぞれの業界で活躍する大人の女性たちに、昭和中期の岡山の写真を見せながら 「理想の女性像」「男らしさ、女らしさ」「令和の女性の生き方」などについて考えを訊いた。
彼女たちの言葉に、貴方は何を思うだろうか。


既成概念を否定しインディペンデントであり続けたい。

○表町の昔の写真、私の周りの大人たちは表町に携わる人たちばかりだったから、リアルに肌感覚で栄枯盛衰を感じてる。昔は街がヨコに広がってたのがショッピングモールの進出でタテに吸い上げられた感じ。私自身としては自分の知っている「街」が消滅していてもそれは歴史の一コマだから、感傷に浸るのも年寄り臭くってイヤ。街はどんどん姿を変えていくものだし、私たちはこれからの時代を生きていくんだから。今回はジェンダーの問題を語る、と言う話だけれど、私セルフイメージは闇市の戦災孤児なんです。面倒を見てくれる大人もいない、ただ毎日毎日を精一杯生きている、男だとか女だとか言い出せるような状態じゃないノンセクシャルな存在。そこから言わせてもらうけどね、働きたい女性が社会進出できないんなら改善しなければいけないけれど、現実に日本の女の人ってそこまでガツガツしてるの?正直なところ「面倒くせー」とか思ってるんじゃないかなぁ、と穿った目でみてる。男らしさ女らしさの問題、男も女もそれぞれに、強く優しくあること、だと思う。人がその人の持つ性分から真に強さ、優しさを発揮した時、結果それが男らしさ女らしさの表現になるんじゃないですか?尊敬する女性はナシ。オンナ性を発揮して何かを成し遂げている人なんて私と対極の人間だから。でもね、影響を受けたのは1970年代、パンクムーブメントを受けて初めてバンドを組んで立ち上がった女性たち。男の真似をするか男に媚びるしかなかったのをブチ壊し て、ただありのままの自分をさらけ出した彼女たち。あれを見て「あー、自分らしくあれば何やったっていいんだ!」って。

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矢吹絵美
ロックショップ『Blackmail』店主

◯1966年、岡山市生まれ。1984年にオープンした伝説的ショップ「Blackmail」の立ち上げに参加。店長として当時の若者から絶大な支持を受ける。岡山におけるストリートカルチャーの最盛期をつくった立役者のひとり。現在は岡山市表町でオーナーとして同店を継承。オリジナルのオーダー革ジャンや各種ウェアをラインナップ。

◯(捨てられない服)25年ぐらい前、自分が「ブラックメイル・ガーデン」にいた頃作った第1号の革ジャン。手探りのスタートでしたがご好評をいただき、現在は主力商品になりました。

Instagram @blackmailokayama

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「和を以て尊し」とする女性の感性が、地球を守る。

○高梁市吹屋地区の「吹屋ふるさと村陶芸館」で、ベンガラを使った陶芸の講師などしています。今の世の中は、ものづくりに短時間で素早く仕上げることが求められていて、技術が深く伝わらなくなっている気がします。芸事や技術は、昔から伝わる方法で時間をかけてじっくり習得したもののほうが物質的にも圧倒的に強い。高梁の吹屋地区は古い町なので、封建的な考え方がいまだ残っています。町おこしの活動をはじめた20代の頃は「女のくせに」「若いとダメ」と言われることもありましたが、陶芸の技術がじっくり成熟していくのと同じように、長い時間を町の人と共に過ごす中で、多くを学び、分かち合いながら今では自分も教える立場になりました。女性はそもそも、論理じゃなく「和をもって許せる」という感性がどこかで働くんだと思うんです。だからといってジェンダーギャップを声高に唱えるのではなく、もっと自然に、リベラルに考えたい。男性は母乳が出せないし、筋肉量が多いとかいうのも当たり前のことで、それは差別じゃないですよね。太古から、女性が生まれながらにして命を守り、人とつながることで育ててきた母性や感性はこれから先も変わらないと思いますが、つい最近まで参政権が無かったとか、同じ仕事なのに男女で給料が違うといった不平等は変えるべきかと。これまでの女性は政治に自分の能力を反映することはなかなかできなかったけれど、現代女性にはその能力もあるし、情報発 信もすごく上手。大臣や議員には、備わった感性を生かし、生活感覚ある女性になってほしいなと思ったりします。ボタン一押しで地球が滅ぶかもしれない危機の瞬間、最後の最後にストップを決断できるのは、男性ではなく母たる眼差しを備えた女性だと思うので。

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田邊典子
陶芸家

◯1960年、高梁市生まれ。1990年、「吹屋ふるさと村ベンガラ陶芸館」館長に就任。地元住民と共に株 式会社吹屋を設立し、「カフェ燈」「町家ステイ吹き矢」「千枚」をオープン。吹屋の町おこしにも尽力し「宵あ かり」や「花めぐり」などのイベントも企画・運営する。

◯(捨てられない服)10 年間愛用するブラウスと、『キャピタル』のスカート。ブラウスはバイアス仕立てで裾のカットがきれい。 スカートは何にでも合わせやすくていつでも気軽に着られるから好き。

Instagram @cafeakari

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ファッションも「らしさ」も正しく多様化。

○「ファッションが正しく多様化する世界」を目指し、2020年にアパレル製造業に特化した受発注システムを提供する「patternstorage株式会社」を立ち上げました。元々パタンナーとしてアパレル企業に勤めるなか結婚で夫の家に引っ越すことになり、子育てをしながらキャリアを続けるにはフリーランスしかありませんでした。男性と比較して女性は結婚・出産でキャリアを変えざるを得ない現状はまだ根強くありますよね。3人の子どもの乳児期にも細々と仕事をしていましたが、保育園代等を賄う売り上げを上げる事が出来ず、思う様に働けないジレンマが常にありました。理想の女性像はココ・シャネル。「男だから・女だから当然」のような考え方とは違い、シャネルには「精神的・経済的に自律した存在」でいる事の強い意思を感じます。例えばコンビニの女性専用トイレの様に一方を不自然に持ち上げ一方に不自由を強いる考えは公平とは言えないと感じます。根底には悔しさの様なコンプレックスがあるからか今も「女性初」という表現は好きになれないで居ますが、今は言葉に過剰反応せず「使える個性」の一つと捉えられるようになり、気にならなくなりました。これからの世の中は、男女関わらず、もっと自分らしい生き方を大切にできる世界になればと願っています。過去、あらゆる差別が解放されてきた歴史に は必ずその為に活躍した人物の存在があると思っています。当社の提供するサービスも、アパ レル製造業に根深く残る非効率や非生産的な部分を変え、個人の「こんな服が着たい」という表現に寄り添える世界を作れる様、自社のみならず業界の在り方も見据えてアップデートを続けていきます。

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今井恵子
起業家

◯1982年、岡山生まれ。中国デザイン専門学校を卒業後、「ジョンブル」に 7年間勤務。結婚・出産を機 にフリーランスに。2013年にパタンナーとして起業。2019年に「中国地域女性ビジネスプランコンテスト」 で大賞を受賞。2020年にpatternstorage株式会社を設立。 

◯(捨てられない服)職業柄ですが、自分が着用するというより、凝ったディテールのものや、旧式のミシンを使わないと 縫えないものなどパタンナー目線で残しておきたい服をコレクションしています。

https://patternstorage.com/

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