COLUMN
VOL.24 道
27 October 2021
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葬祭業界と地域社会の活性化に邁進し、儀礼文化の形骸化に警鐘を鳴らす井上万都里が連載する対談企画。
それぞれの道を強い意志で歩み続けるゲストの言葉から、あなたの人生を切り拓く明日のヒントが見える。

「人生を変えるボディデザイン」フィットネス事業への挑戦

井上)今回は久しぶりに宗教や儀礼文化以外にテーマを据えるスピンオフ企画です。池田さんが立ち上げた「RETIO BODY DESIGN」は2017年に問屋町、2019年に東岡山と立て続けに2店舗をオープンさせ、コロナ禍や競合の林立が続く中でも圧倒的存在感を顕しています。イノウエホールディングスのグループ会社“ライフトランス”による新倉敷店が、2021年5月にフランチャイズモデルとして誕生。11月には、上村さんとお義兄さま、兄弟お二人で手掛ける津高店のオープンが控えています。

池田)約10年間、不動産事業に携わってまいりました。その中でもともと趣味の一つだったウエイトトレーニングで私自身の人生が大きく変わったこともあり、「カラダを変えることにより人生を変えることができる」という信念で手掛けているのが「RETIO BODY DESIGN」です。

井上)私がFCに参入したのは、「フィットネス事業に興味があった」とか「ブームだから」とか事業性そのものに旨味を感じたわけではないんです。以前より池田さんの仕事ぶりや生き様、言動一つひとつを間近で見ていて「ぜひとも協力したい」と考えたのが何よりの動機。もちろんレシオというブランドがビジネスモデルとして魅力的だったことは否定しませんが、どんな時にも私は常に《人》に着目して事を進めています。おそらく上村さんも同じ考えだったのではないですか?

上村)私は本業のデザインでレシオの事業に携わらせていただきました。ブランディングやPRデザインを展開する中で事業の方向性や未来についてもお話しいただき、深く関わることができました。そのうち、池田さんの想いや理想をさらに推し進めるためには自分自身もオーナーとして参加するのがレシオブランド確立の一助になるのではないか、と思い至りました。デザインアプローチを行う観点からも、今後さらにFC展開が進めば、FC店への直接サポートも必要になってきます。実際のFC店側の視点を持っておくことは、今後ますます重要になるに違いないと思ったのです。

ビジネスパートナーとして、かけがえのない友人として

井上)今後レシオというブランドがさらに高みを目指していくためには冷静で客観的なビジネス視点は必須になりますね。FCオーナーというビジネスパートナーとしての立場だけでなく、これまで築いてきた友人としての立場からも、今後の課題に共に向き合っていきたいと思っています。

池田)井上専務には不動産事業時代から、多岐にわたって支えていただいています。今回の起業で悩んでいた際にも有用なアドバイスをいただいたばかりでなく、夢に向かって背中を押してくださった恩人です。上村さんにもデザイン面はもちろん、出店エリアの競合状況など細かにレクチャーしていただき、お二方は私にとっても、レシオにとってもビジネスパートナーを越えた大きな存在です。

上村)昨日今日の関係ではないですもんね。池田さんは、私とは違って緻密に事を積み上げていくタイプ。同じ経営者として、これまで池田さんの考えや姿勢から学ばせていただいたことも多くあります。これからもファミリーとして、仲間として共に上を目指していきたいと考えています。

空前のブームの中で不可欠のファクター《人》

井上)今後、個人個人の健康志向や、企業が福利厚生の一環として“健康”へ着目することがムーブメントとして定着しつつあります。池田さんが時流に着目し、これまでになかったフィットネスとしてつくられたのがレシオです。コロナ禍で逆風が吹くだろうと危惧されていたフィットネス事業ですが、予想を超えた一大ブームとなってあらゆるジムが林立している状態です。そうした中にあって、私はレシオの最重要ポイントは《人間力》に尽きるのではないかと考えています。ブランドとして完成されたデザインや設備の充実、プログラム内容なども大切ですが、それだけでは到底足りない。いくらハード面が良いジムでも、お客様と直接対するのは《人》なのですから。

上村)公式サイトはもちろん、SNSで事業内容もプログラムも何もかもすべてが公にされているので、真似しようと思えば難なくできるのかもしれません。また、ハードに関しては、施設を建てロゴデザインや内装を創り、設備を整えればある程度の体裁は整います。フィットネスブームの中にあっては、私たちが一からつくり上げたブランドもデザインも、模倣されるのはもはや想定内。実際によく似たレイアウト、デザイン、すでに目にしていますしね。しかしブランディングという観点でみれば、上部だけで「ハイ完成」とはなりません。絶対に追いつけない価値が《人》だと考えます。

池田)もし私たち経営陣がレシオの意義をハード面の充実やメソッドに置いていたとしたら、スタッフたちはきっと今のようには育っていないと思っています。そうした考え方は表に出さずとも必ず伝わってしまう。私たちがレシオとは《人》であると位置づけ、人材育成と教育を徹底し、何よりも信頼する仲間として尊敬の念を忘れない。それこそがどこにも真似できない、レシオだけの価値をつくり出していける要因です。

井上)確立させたブランドというのは、たとえ店舗が違っても違和感を抱かさせない価値。レシオにとっては《人》がその価値であり、またこの先も永遠にブラッシュアップしながら追い求めていく不滅のテーマでもあります。イノウエホールディングスも創業以来徹底してきたのが人間力の育成です。これからレシオもFC傘下企業が増えていくことになると思いますが、ブレることなく《人》の価値形成を行っていかなければならないでしょうね。

上村)FC事業は良好なシナジーをつくり、関連企業すべてに波及させていかなければなりません。「レシオ=《人》」の構図はすべての共通認識として進めます。私たちはそれぞれ、本業を別に持つ身ですので、レシオの育成ノウハウが本業にもいい影響を与えていけるという期待感も正直なところ持っています。

「安心感」と「求心力」の積み重ねで人は動く

井上)レシオのブランド力が高まれば高まるほど、私は次に事が起きる前に手を打っておく必要があると考えています。オープン当初の時期や事業が拡大している最中にお客様からいただけるのは驚きや新鮮さ、興味といったいわば“ポジティブな感情”がほとんどです。しかしそれが常態化して当たり前になってくると、同じサービス内容であったとしても“期待はずれ”となってしまうものなのです。評判の高さとはお客様の期待と比例していて、少しでも応えられなければ一気にネガティブイメージにつながってしまうもの。高みにあるほどに、堕ちるときは上るときの何倍も早い。エヴァホールもそうした葛藤を続けてきました。お客様の期待にずっと応え続けていくためには、店舗もスタッフも、企業そのものも、常に進化し続ける必要があるのです。

池田)現在岡山県内では現行の3店舗に加えて合計10店舗の展開を見据えていますが、県外は淡路島洲本の1店舗のみに“あえて”留めています。手を広げすぎると行き届かなくなり、ブランド力、人間力が失われる可能性が高いという理由です。求心力を失ったブランドは価値が失われ、そうなってしまうと競合とは価格勝負するしかない。それは私たちが目指しているものとは大きく外れています。ブランドとして無二の価値《人》を育成していくために、ポテンシャルの高い人材を採用するのはもちろん、長く充実した研修期間を設けています。3〜4ヶ月の研修期間に行うのは「レシオ」というブランドを徹底的に理解していただくこと。研修終了後も管轄の責任者とじっくり膝を突き合わせて対話を繰り返すことを常に心掛けてやっています。具体的な行動を指図するのではなく、想いやビジョン、どうなっていきたいのかという未来図を共に描くことが大切なのではないかと私は考えています。

上村)津高店も今まさに研修の真っ最中ですが、池田さんのメソッドで教育されたスタッフと初めて相対したときはポテンシャルの高さ、イキイキとした表情や行動に「すごい!」と感動を覚えたほど。スタッフに高い意識が浸透し、本当の意味での信頼関係が築かれていると感じました。

井上)私は常々、経営者に特に必要な要素は「安心感」と「求心力」だと思っています。数字は確実な要素ではありますが、生み出すのはスタッフの存在です。高い意識とモチベーションを持ち続けられる環境をつくることができるのはリーダーのみ。「このリーダーなら間違いない」「絶対に自分を裏切らない」という想いを引き出す、行動の積み重ねによって《人》を動かすことができるのです。

激動時代に必須の「タフネス」とは

井上)今後のフィットネス事業においても、またこれからさらに激動の時代を迎える背景からも「タフネス」というキーワードが浮かび上がってくるのではないかと思っています。皆さんが考える「タフネス」についてお伺いしたいのですが。
池田)行動の元になるのは「格好良くなりたい」「痩せたい」などの願望が多くを占めます。身体をつくっていくことは、最初はとにかくしんどいし、楽しいものではないかもしれませんが、一つの成功体験がきっかけで変わっていくものです。私が考える「タフネス」とはまず、苦手にも立ち向かうこと。フィジカルを鍛えることで、精神も鍛えられるものだと考えています。

上村)私自身はまだまだ「タフネス」にはほど遠く、皆さんに及ぶべくもありませんが、人生をより豊かにできるのは《友》の存在だと思っています。自分の限界はたかが知れているので、もし《友》がいなければ上を目指す意義も感じていなかったかもしれません。先輩や後輩、年齢キャリア関係なく《友》の存在こそが人生をより豊かに、「タフネス」にしてくれるのではないでしょうか。

井上)私が考えるのは《継続力》です。フィットネスへの目的や最終目標が具体的に定まっている人というのは来られる方の1割程度だと思います。それ以外のほとんどの方が「健康になりたい」「痩せたい」といった曖昧な願望によるものでしょう。そうしたうっすらとしたイメージのままでいかに継続するか、それが最も難しいことだと考えます。1日24時間という限られた時間の中で、相手が存在する物事に関しては人はすんなり動くことができます。しかし“自分ごと”になると後回しにできてしまう。そうした気持ちに打ち勝って《継続》していくこと、それが今後必要な「タフネス」の姿だと考えます。



◎井上 万都里 (株)ライフトランス 代表取締役社長
儀礼文化研究所の創設など文化伝承にも貢献する葬儀社、株式会社イノウエホールディングス専務取締役。オカヤマアワード副会長、葬儀社による全国大会ネクストワールド・サミットの実行副委員長も務める。


◎池田 光陽 (株)ケイアイリンク 代表取締役
10年間不動産会社で勤務後、独立。不動産事業をメインで行う傍ら、不動産×フィットネスの可能性に着目しフィットネス事業を始動。「RETIO BODY DESIGN」を展開中。

◎上村 祐貴 (株)トータルデザインセンター 代表取締役社長
2012年に代表取締役就任。「はしながおじさん」「シゴトの図鑑」など児童福祉プロジェクトにも携わり、様々な地域事業、ブランド仕掛け人として多くを手掛けている。

◎RETIO BODY DESIGN 新倉敷店
2021年5月に倉敷市内第一号店としてオープン。イノウエホールディングスのグループ会社、株式会社ライフトランスを経営母体とした「RETIO BODY DESIGN」のFCビジネスモデル。洗練されたデザインと充実した設備はもちろん、独自のプログラム構築と卓越したマンパワー。レシオのメソッドを余すことなく網羅し、好評を博している。
住所:倉敷市玉島爪崎981-1/電話:086-526-8000/Instagram:@shinkurashiki_retio

◎株式会社イノウエホールディングス
住所:倉敷市二日市511-1/Tel:086-420-1000/http://inoue-gr.jp/

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