INTERVIEW
LOCAL PRIDE -YAMANASHI-小泉文明(株式会社メルカリ取締役社長兼COO)
29 April 2019
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証券会社を経てミクシィ、メルカリとそれぞれの時代におけるベンチャー成功例筆頭と言うべき2社のトップとして、また様々な企業の社外取締役として活躍中。小泉社長の原体験から成功へのヒントを探す。

《エアマックス95》から知った市場価値の変化

「雑誌が大好きなんですよ」。株式会社メルカリ取締役社長兼COOという、ITベンチャーのアイコンとも言える小泉社長から出たのは意外にもアナログ媒体への憧憬。山梨県の小さな町に生まれた。「南アルプス、富士山、八ヶ岳、茅ヶ岳。この4つの山に囲まれた風景を横目に、45分歩いて登校していました。本当に自然しかないところでしたから、年に数回訪れる東京が楽しくて仕方なかった」。まもなく甲府の中高一貫校に通いながらふれた、甲府にある一軒のセレクトショップから小泉氏の原点が垣間見える。「中高時代は《裏原ファッション》にはまって、雑誌も読み漁りましたし、店には週3〜4日通っていました。」その頃《エアマックス95》の社会現象的なプレミアム化を体験。「モノの価値って変わるんだ」。 手に入れた時期、市場価値、相手。同じものの価格が何倍にもなることを知った小泉氏は、セレクトショップで培ったファッションへの知識やセンスを生かして、大学時代までネットオークションでの個人売買で利益を得るまでになっていた。そのまま続けていても問題はなかったはずだが、小泉氏は違った。「これはビジネスではない、と感じました。ちゃんとまっとうな仕事に就いて、企業経営を現場で学びたい」。大手証券会社に入社し、IPOやM&Aのアドバイザー業務に携わることになる。

IPOを通して企業構築に深く関わる

やがてDeNA、ミクシィなどITベンチャーを中心に、IPOだけでなく事業戦略や組織構築など全般的なコンサルティングにも関わるようになっていた。「ミクシィの笠原さん(創業者・元社長)には『世界初のSNS企業の上場を実現しましょう!』と話していました。笠原さんは驚いていましたけどね。でも私は、mixiはこれからのインターネットのプラットフォームに必ずなると思っていましたから」。この証券会社時代は、大手の看板を背負いながら、《クライアントの企業価値が上がるのなら何をやっても良い》というスタンスで、自由に行動させてもらっていた。「やりたいようにやれて、非常に楽しく携わらせていただきました」。 社外取締役・監査役として関わった企業は7社、内6社が上場に成功している。現在でも《資金調達のスペシャリスト》として名を馳せている小泉氏だが、証券マン時代の経験が大きく生きている。「会社を運営していく上で、課題になりやすいのは《人と金》。実はこれらは問題に当たるとき同じ傾向が見られるんです。『こうなったから次はこうなる』といった予測がある程度できる。どちらも時期がとても重要です。やり方はセオリー通りなんですよ」。

成功の鍵はどれだけ打席に立ったか

今でこそ飛ぶ鳥を落とす勢いのメルカリだが、創業当初は資金調達にも苦慮したという。「資金調達は困難を極め、30社以上から断られまくり。有名なネット企業経営者にも『ヤフオク!には勝てないと思う』と言われていました。名経営者と言われる方ほど、厳しい意見でしたね。でも実は、皆さん気づいていなかったことがある。《PCからスマートフォンへの変遷》です。外部環境の変化にいち早く気づき行動出来たのが大きかったと思います」。創業期は、何度もトライを続けた。「どんなすごいバッターでも打率は3割。要はバッターボックスに何度立ったか、どんな球を打ち続けたか、だと思うんです。繰り返している内に信用は積み上げられていく。失敗も繰り返す内に成功へと近づいていると考えています」。 また、ジャイアントキリングに対しても怖さはないと語る。「会社が大きくなると、利益確保の絶対条件が故に冒険ができず、動きも鈍くなる。それらと逆のことをしていれば外部変化に柔軟に対応できる組織になれると思っています」。外部環境は、ネット業界では8年スパンで変化していると見ている小泉氏。今全盛を誇るスマホも淘汰の憂き目に遭う可能性は低くない。「スマホに依存し続けていては、次に淘汰されるのはこちらです」。

コンシューマサービス中心は《地方》

次なるステージはもちろん《世界》。まずはアメリカでの定着を目指す。「自分自身の、というよりは《みんなの夢が叶う、楽しんでもらえる、サービスを創る》のが《夢》」。個人でエンジェル投資も行っているが、儲けるよりもベンチャーを応援したい気持ちが強いと話す。小泉氏の《利他的性格》が感じられる言葉だ。 そして、東京よりも地方が中心となってくると言う。「メルカリのコアなお客さまは地方に暮らす方たちです。《TOKYO》だけ見ていては現実を見誤る可能性があります。地方に住んでいる一般的な方々の生活をどう変えるかが重要だと思っています」。 故郷山梨への思いも年々深くなっている。「評価の高まっている《グレイスワイン》は同級生が製造。ワインと食、宿などをテーマにした事業ができないかと模索しています。食と農業に携わってみたい」。山梨の風景が根底にあるからこそ、東京へ、世界へ憧れた。その憧れがなければコアユーザーである一般大衆の気持ちが理解できなかったに違いない。自分のポジションを理解し、社会にフィットさせることに長けている小泉氏が、これからの時代をどう変えていくのか、心底楽しみだ。

○こいずみ・ふみあき
1980年山梨県出身。早稲田大学商学部卒業後、2003年大和証券SMBC(現・大和証券)入社。投資銀行本部にてインターネット企業の株式上場などを担当した後、2006年ミクシィ入社。取締役執行役員CFOに就任しコーポレート全体を統括。退任後はベンチャー企業を数社支援し、2013年メルカリに入社。2014年同社取締役に就任。2017年4月、創業者の山田進太郎氏から引き継いで取締役社長兼COOに就任。

○株式会社メルカリ(Mercari, Inc.)
株式会社メルカリは、「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションに、フリマアプリ「メルカリ」の開発・運用を行っています。世の中では多くのモノ・サービスが生産・販売されていますが、誰かには価値があるのに捨ててしまうなど、地球資源の無駄になっていることが多いと私たちは考えています。「捨てる」をなくすために、個人間で簡単かつ安全にモノを売買できる「メルカリ」を日本とアメリカで展開しています。

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