何も知らないクッション
アパレル大手のファミリーセールで買ったカウボーイ柄のクッション。 数回の引っ越しを経ても捨てることなく、ジップが壊れても使い続けています。 何が自分にとって大切なものか。そんな問いの答えもこれに詰まってる気がする。
「20年近く使い続けているこのクッションは、とあるセール会場で買ったもの。きっとインポートだとは思うんだけど、どこのブランドのモノなのかもよく分からない。これについてそこまで深く語ることもできないし、何ならジップが壊れてしまっている。それでも使い続けているって、これこそ、捨てられないモノでしょう(笑)。でも、このクッションを捨てずに持っているっていうことは、自分を体現していることのような気もします。どこかに属したり、記号的なアイテムを身につけたりすることが苦手だし、良いとされているものが絶対にいいわけじゃないっていうのが基本的なスタンス。洋服でも音楽でも、知識を得るほど知識に頼りがちになってしまうし、世間的、業界的に最上級とされているものを盲目に信じてしまう人が多すぎる気がしていて。高価で評価されているものを身につけていれば良いっていう概念は絶対違う。やっぱり自由でいたいし、自分の感覚を信じて生きていたい。東京でも、ファッションや雑誌に対して既存のカッコいいとされているものが本当にそうなのかっていう疑問を感じてきている人が増えている気がします。もっと未完成のものだったり、あまり知られていない地方にこそ、可能性がある。これから展開していく自分のアパレルブランドでも、そういった洋服の盲点やトレンドの隙間みたいなところを表現していきたい。ど真ん中を一歩引いて俯瞰するこうした視点は、トレンド中心地からちょうどいい距離感の学芸大学っていう場所で育ったおかげかな」。
○梶 雄太 (スタイリスト)
1998年よりスタイリストとして活動開始。ファッション誌、テレビの他、広告や映画など活動の場を広げている。俳優、女優をはじめ、性別・世代を越え、 オリジナリティ溢れるスタイリングはファッション界、音楽界からも絶大なる支持を受けている。昨年に続き岡山県拠点のカジュアルウェアブランド SETTOより 梶雄太が全面監修を手がけるフォトブックシリーズ「理科子2」が今春発刊。今後は自身が監修するアパレルブランドを本格的に展開予定。
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