岡山のまちづくり・ひとづくりの立役者であり世話人、古市氏による表町を舞台にした考察コラム。
SDGsで表町が選ばれるまちに
SDGs (エスディージーズ)という言葉を、最近よく耳にするという方も多いのではないでしょうか。これは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成された普遍的な目標のことです。昨年、SDGsの達成に向けた世界初の国際会議が岡山市で開催されました。さらに岡山大学が「ジャパンSDGsアワード」特別賞を国公立大学で唯一受賞するなど、ここ岡山でもSDGsへの機運が高まっています。コチャエを運営する表町ルネサンスでは、表町で実践すべきSDGsとは何かということを考え、取組みをスタートしました。17ある目標のうち、私が着目しているのが「全ての人に健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」「働きがいも経済成長も」「住み続けられるまちづくりを」の4つです。まず、健康と福祉について。岡山市は他都市と比べて健康寿命が短く、生活習慣病の一人あたりの医療費が高いという統計があるそうです。2025年には65歳以上の高齢者の割合が人口の3割を超えると言われており、医療費や社会保障など様々な問題が山積している日本。我々は「岡山市の健康寿命ランキングを日本一にする」をミッションとして、表町桃太郎ジムを今年10月にオープンしました。キャッチフレーズは「心・体、みんな元気で表町」。筋力の衰えた年配の方も安心して使えるリアクションレジスタンス機能搭載のトレーニングマシンを導入しており、筋力アップやダイエット等の目的の他に機能改善や介護予防の実現を目指した、あらゆる年齢すべての人の健康的な生活を促進できる場所でありたいと思っています。次に教育について。カフェアンドスペース・コチャエでは、コンサートや各種カルチャースクール、セミナーなどを開催しています。私は表町を文化の薫る街にしていきたいと以前から言ってきました。その実現のためにも、ここが町の寺子屋のような存在として、学習という側面だけでなく教養というものを与えられるよう尽力していきたいと思っています。最後に仕事について。いま盛んに働き方改革が叫ばれていますが、これが「働きやすさ」の向上だけを目指すものになってしまっては本末転倒だと危惧しています。労働時間や福利厚生ばかりに目を向けるのではなく、「働きがい」のある仕事づくりが、最も重要ではないでしょうか。私は表町桃太郎ジムやコチャエを通して、やりがいのある仕事、雇用を生み出していきたいと思います。また、起業支援においても、能力的に突出した人だけでなく、普通の人ができるビジネスモデルを一緒に考えてあげることも、私の使命ではないかと思っています。ここまで、表町におけるSDGsへの取組みについてお話ししてきました。これらを実現した先にあるのが、サスティナブルなまちづくり。私が取り組んでいきたい、表町のまちづくりなのです。
まちづくりは持続可能でなければ意味はない
ビジネスの商圏を世界規模で事業を展開するグローバルビジネス、日本国内を商圏とするドメスティックビジネス、地域に根ざした商売をするエリアビジネス、と分類してみます。全国や世界を相手にする大企業は岡山にもありますが、岡山の経済を引っ張っていくべきは、県内を基盤に商売を行うエリアビジネスの企業と言えるのではないでしょうか。なぜならば、自社ビジネスの繁栄のためには地域経済の振興が必要不可欠だからです。トミヤは、もっと商圏の狭いタウンビジネスに分類できるかもしれません。しかしそんなビジネスモデルにも関わらず、九州や大阪など遠方からもお客様が来てくださるようになりました。さらに言えば、ここに来るのだから後楽園を観光して美味しいものを食べよう、という人の流れをつくることも、私の役割だと思ってやってきました。自分たちの街を基盤としながら、遠くからでも足を運ぼうというファンをつくる。私は、そんな価値のあるビジネスが出来る商人をここに集めたいと思っています。その昔、県下の有力な商人を集めて形成されたのがこの表町でした。そしてここから、天満屋をはじめ多くの商人たちが岡山県を代表する企業に成長し、さらに木下サーカスやストライプインターナショナルなど、世界に羽ばたくような企業も生まれています。若い人には、現状をそのまま受け止めるだけでなく、こういったルーツも含めて表町を知っていただきたい。そして、小さな視点で見るのではなく、広い視野をもって全国から人を集めるために何ができるのか、ということを考えていってほしいと願っています。前述したように、持続可能でなければ、まちづくりにはなりません。どれだけ目新しくインパクトのある取組みだったとしても、それが単発で終わる花火では意味がないということです。私はこの表町を、本当の意味で持続可能と言えるまちにするべく、SDGsという考え方も取り入れながら、人生を懸けて関わっていきたいと思っています。
○KOTYAE カフェアンドスペースコチャエ
カフェ&企画型イベントホールを備えた多目的スペース。コンサートやカルチャー教室、ワークショップなども定期的に開催している。古市氏とニッティ・グリッティの小笠原氏が共同出資して設立した、表町ルネサンスが運営。
岡山市北区表町3-5-19 / TEL:086-206-7788 / 営業:11:00~19:00/ 定休日:火曜日
○表町桃太郎ジム
表町2丁目、旧エターフェビルにオープン。「心・体、みんな元気で表町」と掲げ、筋力増強やシェイプアップ、機能改善や介護予防など、多様な目的に対応したジムとして注目されている。
岡山市北区表町2-6-64雷電館3F / TEL:086-237-2111 / 営業:8:00~22:00 / 定休日:水曜日
○古市 大藏 /(株)トミヤコーポレーション代表取締役 会長
1945年岡山市生まれ。世界の一流品を扱う時計・宝石の専門店を岡山県内に10店舗展開する㈱トミヤコーポレーションの代表取締役会長。岡山商工会議所副会頭のほか様々な地域経済団体でも役職に就き、長年に渡って岡山のまちづくりに尽力している。また、地域を担う若手の育成や教育にも積極的に携わる。