INTERVIEW
LOCAL PRIDE -Nagasaki-長濱ねる(欅坂46)
11 January 2019
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ローカルを見つめ続けるアイドルの今と、これから。

これほど地元を愛し、地元に愛されるアイドルがほかにいるだろうか。「長崎の仕事もたくさんしたい」と公言する通り、17年末に発売したファースト写真集『ここから』(講談社)は、出身地である長崎市・五島列島での撮影を敢行。翌18年2月、長崎市観光大使に就任すると、その直後に開催された長崎の冬を代表するイベント「長崎ランタンフェスティバル」では、皇后に扮してパレードに出演した。そんな彼女の地元愛に応え、地元の若者たちも奮起。彼女が写真集やテレビ番組のロケで訪れたり幼少期を過ごしたりした「長濱ねる」ゆかりの場所を紹介する「ねるちゃんマップ」を製作し、ファンや観光客らにPR。今を時めく『欅坂46』の超人気アイドルながら、地元との相思相愛ぶりはもはやローカルタレントのようでもある。

島での暮らしと東京への憧れ

上京するまでの17年の間、長崎県内を転々と住み暮らした。友達ができても、一緒に過ごせるのは長くて数年。特定の地に執着したくともできないのは転勤族の家族の宿命だが、そのなかでも彼女が今も心の故郷と傾慕してやまないのが、3歳から7歳までを過ごした長崎県五島列島だ。「2年生のときに九州本土の小学校に転校したので通ったのは実質1年と少しだけなんですけど、当時の同級生とは今も仲良くて、電話やメールで連絡を取り合ったり、帰省のタイミングで会ったり。一学年ひとクラス10人しかいなかったから関係性もすごく密で、同級生というよりむしろ家族のような距離感でしたね。島なのでどこにいても海が近く、校庭の向こうから流れてくる潮風のにおいも、服を着たままみんなで海に入ったときの水の温度も、すごく心地よくて大好きでした」。 そう振り返る彼女だが、かつてはそんな故郷への郷愁など抱く隙もないほど外の世界に恋い焦がれた時期もあった。今から3年前の2015年、欅坂46の1期生オーディションに応募したのも、東京に行きたい一心からだった。「当時からAKBさんが大好きだったのはもちろんですけど、それ以上に、とにかく東京に行ってみたかった。長崎から、見たことのない世界に飛び出してみたかった。オーディションを受けたのは、そのとき自分に作れる唯一のきっかけだと思ったからなんです」。

手放して手に入れた地元愛と、絆と誇り

そして彼女は、見事にその夢を叶えた。長崎を離れ、念願の東京暮らしがスタートして3年あまり。いま彼女は故郷に何を想うのか。「長崎を出る前はもっと広い世界を見てみたいばかりでしたが、いざそこを離れてみると、あの狭さや小ささこそあの町の魅力のひとつだったんだなって今はすごく思います。五島にあるような人と人の強い結びつきは広い都会ではなかなか味わえないし、小さな島だからこそ変わらず守り受け継がれてきた島の文化や暮らしもある。通った小学校が廃校になったり楽しかった思い出の場所がなくなったりしてしまうのは寂しいから、もっとにぎやかな島になればいいなと思う一方で、今も変わらず静かなままのあの島に暮らす同級生たちを、うらやましいと思うこともあります」。 手を放してはじめてその価値に気付かされることは、得てして多い。自由な一人暮らしを始めて親のありがたさが身に沁みたり、恋人と別れてその愛の深さに気付かされたり、あるいは「何もない」と思っていた故郷を離れてその暮らしがいかに豊かだったかを思い知らされたり。けれど、それを「後悔先に立たず」と一蹴してしまうのはあまりに乱暴だ。手を放さなければ、そのありがたさを知ることは一生なかったもしれない。その豊かさに気付けないまま、無為に暗澹と暮らし続けていたかもしれない。失うことと、自ら手を離すことは、きっとまったく違う。その価値を知るためにあえて手を離したのだとすれば、その喪失は失ったもの以上の収穫をもたらす力になる。そして彼女が下した決断は今まさに、人生の拠点を移したからこその壮大な収穫をもたらしはじめている。「こうして雑誌やテレビの取材で地元の話をしたり、写真や映像を通じて長崎の魅力を伝えられるのは、アイドルになったからこそできていること。『長崎ランタンフェスティバル』は祖母が一番好きなイベントでもあったので、お仕事を通じておばあちゃん孝行ができた気がして本当にうれしかった」。一方で、長崎出身のアイドルだからこその使命感もある。 「長崎の人たちにとって、平和を願う気持ちはことさら強いんです。私自身はもちろん戦争を知りませんが、地元にいるころから祖母にたくさん話を聞かされてきました。戦後70年以上が過ぎて戦争体験者たちがどんどん高齢化していく中で、私たちにはその歴史や平和への願いを語り継いでいく責任があると思います。平和特番に出演させていただいたこともありますが、長崎という地に生まれ育った一人として、若い人たちが未来の平和を真剣に考える入口を作れたら、それほどうれしいことはないと思います」。

存在感を増し続ける欅坂46のチーム力

そんな彼女にとって、地元愛を再認識し、地元との絆をいっそう深めるきっかけをくれた「欅坂46」の存在はどこまでも偉大だ。
「アイドルにもいろんな形があると思うんですけど、最近すごく感じるのはグループのひとりとして活動できることの意味。一人でロケに行ったり番組に出演することもあるんですけど、だからこそチームで一緒に活動するときのパワーの大きさとか、楽しさが実感できるというのはすごくあって。一人ではできないことも、メンバーがいるからできるし届けられるっていうことってたくさんあるな、って感じるんです。好奇心は旺盛な方なので、これからもっといろんなことに挑戦して、メンバーと切磋琢磨しながら成長していけたらいいなと思います」。

○長濱ねる
アイドルグループ「欅坂46」メンバー。長崎市出身で、3歳から7歳まで五島列島で育つ。 地元県立高校在籍中の2015年に「欅坂46」1期生オーディションを受験し、2016年の1stシングル「サイレントマジョリティー」の収録曲「乗り遅れたバス」でデビュー。2017年12月に発売した初のソロ写真集『ここから』(講談社)は発売初週に9.8万部を売り上げ、女性ソロ写真集週間売上部数歴代2位を記録。 2018年6月、JR九州の『第3回 九州魅力発掘大賞』で特別賞を受賞。 1998年9月4日 生まれ。

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