COLUMN
VOL.01 古市大藏の岡山表町慕情。
09 February 2019
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岡山のまちづくり・ひとづくりの立役者であり世話人、古市氏による表町を舞台にした考察コラム。

現代に商店街は必要か

昨今、全国で商店街の衰退が嘆かれています。要因は多々ありますが、時代とともに消費者の購買行動が変化したことも大きく関係しているでしょう。コンビニやショッピングモール、ネット販売などの出現で、消費者は商店街で買い物しなくとも事足りるようになりました。では今後、商店街というものは必要なのか?結論を言えば、商店街が「ものを売るためだけの場所」ならば、衰退するのは目に見えています。しかし商店街が、人と人の交流の舞台であり、街の歴史や風土を感じられる場所であるのならば、その存在意義は多いにある、と私は思っています。表町商店街は、岡山城が築城された420年前からこの地に根付いてきました。城下町の建設に際し、県下の有力な商人が集められ、商人町が形成された。それが岡山の中心的商圏となっていったのです。現在の岡山には、中心部と呼べるエリアが3つあると私は考えています。一つ目は、岡山の学問やスポーツの象徴と言える、総合グラウンドや岡山大学などを擁した西口から岡山大学周辺のエリア。二つ目は、ビッグカメラやイオンが参入し、どの地方都市にも劣らないほどに発展してきた駅前エリア。そして三つ目が、かつての城下町だった旭川から西川の地域です。では、本当の岡山はどこなのでしょうか。岡山ならではという意味では、この3つ目のエリアだと私は思います。観光地として岡山を考えても、地域の歴史や文化を語る上で欠かすことが出来ない場所でもある。今後このエリアを維持発展させるのならば、商店街の機能は絶対に必要なのです。量的な拡大は難しいかもしれません。しかし、質的な変化であれば十分に可能性はある。例えば、上之町や下之町など表八ヶ町と呼ばれる町内には、古く城下町の頃から残る稲荷やお地蔵さんなどが随所に鎮座しており、紐解けば歴史のある場所です。その歴史、文化をきちんと発信し、観光客だけでなく、岡山の方々にも改めて、地域のルーツを知っていただく。この土地の歴史や文化を商店街に集約するという取組みを通して、表町商店街が持つ魅力に今一度スポットを当て、歴史や文化の薫る場所として再建していきたいと私は思っています。

人と人、人と郷土を結びつける舞台であれ

商店街における重要な要素の一つが、人と人との交流の舞台であること。昨年9月にオープンした「KOTYAE(コチャエ)」は、人と人、人と郷土を結びつける拠点づくりを目指してつくりました。カフェに加え、企画型イベントホールの機能を持たせたのも、そうした目的のため。コンサートやカルチャースクール、セミナーの開催を通じて、老若男女問わず多様な方が集まるスポットにしていきたい。また、文化を体験・発信する場所としても活用してもらいたいですね。2022年には、千日前地区に新しい岡山市民会館が完成します。今は空き店舗が目立つ表町南部の地区が、それに向けて再び活気を取り戻すための布石としても、私はこの地に、新たな賑わいの拠点をつくりたいと思っています。表町商店街の活性化は、一朝一夕に成し遂げられることではありません。一つひとつの取組みを積み重ね、継続していくこと、これに尽きると私は考えています。

商店街の本分、商店として興盛していくために

今後の表町商店街のあるべき姿について述べてきましたが、やはり外すことができないのは、本来の商店としての機能。商店を興盛していくためには、各個店の商人としての努力や後継者不足という課題にも向き合っていかねばなりません。全国的にも深刻な問題である後継者不足。時代の変化とともに商店の経営は厳しくなり、子どもに後を継がせたくないと思う商店主、商売を継ぎたくないと思う子の世代が増えてきた。それでは商店街は持続できません。個店ごとに、商品や商売に磨きをかけることは当然の帰結であり、さらに場合によっては、業種転換ということも考えるべきではないでしょうか。500年の歴史を持つ、羊羹の「虎屋」でさえ、ずっと同じものだけを売っているわけではありません。洋菓子の要素を取り入れた新しい商品を作るなど、時代に合わせて変化、進化しています。過去に固執しているのでは、次世代に生き残るのは難しい。トミヤでは、光学機器のライカや音響メーカーのバング&オルフセンといった商品を取り扱っていますが、これは本来時計店が取り扱うはずのない品物でもあります。しかし、より豊かな生活を提案する企業でありたい、という当社の概念とは一致します。ときに柔軟に業態を変化させるとともに、いかに地域の人に必要としてもらえるか、感動を与えられるかといったことを真剣に考え抜く姿勢こそが、商店街に問われている。商店街は必要ない、と見放してしまうのは簡単なこと。私は、これからも残りの人生をかけて、表町商店街に寄り添い、新たな可能性を引き出す努力をしていきたいと思っています。みなさん、表町商店街においでんせぇ!

○KOTYAEカフェアンドスペースコチャエ
表町の活性化と地域文化のグレードアップを目的に昨年9月に開店。カフェ&企画型イベントホールを備えた多目的スペース。コンサートやカルチャー教室、ワークショップなども定期的に開催している。貸切りスペースもあり、用途に応じて1時間から貸出あり。表町商店街の、新たな賑わいの拠点として注目されている。
岡山市北区表町3-5-19 / TEL:086-206-7788 / 営業:11:00~19:00/ 定休日:火曜日

○古市 大藏 /(株)トミヤコーポレーション代表取締役 会長
1945年岡山市生まれ。世界の一流品を扱う時計・宝石の専門店を岡山県内に10店舗展開する㈱トミヤコーポレーションの代表取締役会長。岡山商工会議所副会頭のほか様々な地域経済団体でも役職に就き、長年に渡って岡山のまちづくりに尽力している。また、地域を担う若手の育成や教育にも積極的に携わる。

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