石川康晴の哲学塾 Vol.18
×Chara

家族はもちろん、まわりのひとを大切に思う気持ち、それをきちんと愛情表現しようとする素直さ。私たちがいまこそ向き合わないといけないものを音楽を通して教えてくれるアーティスト。

母娘アンバサダーを起用したグロバールブランド「KOE」

石川)今秋スタートするクロスカンパニーのグローバル新ブランド「KOE」は、私の経営者生命を懸けたブランドです。自社既存ブランドの国内での展開のほか、アメリカのトムブラウンを買収したことで世界的コレクションブランドのクリエイティビティやブランディングを知り、中国への出店で海外展開の難しさや世界のマーケットを体感した、それら全ての経験がここに凝縮されています。“Mode for everyone”というコンセプトを掲げ、モードのエッセンスと日本人ならではの感性を取り入れた服を、レディース、メンズはもちろんのこと、キッズ、ジュニア、マタニティまで展開。家族皆さんで楽しんで頂ければと思っています。そして今回のブランドでは、ファッションを通じて平和や愛の大切さを訴えていきたい。世界では安価に服を製造することを追求した結果、人権や労働環境を軽視した劣悪な製造現場が実在し、心ない製造者によって環境破壊を引き起こすケースもあります。KOEは「地球の声を聞く」といったテーマに基づき、環境負荷を限りなく抑制し生産背景にも配慮した中でクオリティの高いものを生み出していこうという取組み、「フェアサプライチェーン」を目指しています。いわば、アパレル業界を変えるというミッションを持ったブランド。モード、平和、愛、家族、こうしたKOEのキーワードと向き合い、表現してくれる人を熟考した中でアンバサダーのイメージにCharaさんが浮かびました。更に娘SUMIREさんと初の母娘共演。今後KOEのカタログや店頭ビジュアル、広告等に登場して頂くだけでなく、CMやイメージムービーの音楽も手がけて頂きます。このアンバサダーの依頼を初めて聞いたときどんなことを考えられましたか。

Chara)ブランドへの思いや世界観をすごく丁寧に説明してくださったことに好感を持ちました。それにしても凄い人数でお越し頂きましたよね(笑)。お仕事させて頂く中で、何より人同士のコミュニケーションが大切だと思っているので、お引き受けするうえで熱意を持った方がたくさん関わられていることを感じることが出来たのは大きかったです。私は基本的にはミュージシャンだという自覚が強いので、楽曲を制作すること、歌うことが一番の仕事だと思っています。ただ、今回のアンバサダーのお話は、私のバックボーンやイメージ、存在そのものを必要としてくれている、純粋に嬉しいですね。KOEのコンセプトやテーマにも素直に共感できたし、資料を見ていて「小さな声を聞く」っていう一文を見つけた時にいろいろとインスピレーションを受けました。聴いてくれる人、ひとり一人を抱きしめるように歌いたいなとか。今回制作した楽曲にも繋がっていて、岡山に住んでいる幼い姪っ子が雷雨のあと、空に架かった大きな虹を見た時のエピソードをイメージソースにしています。レコーディングにも参加してもらいました。いつか姪っ子と共演したいなと思っていたので、KOEのおかげで早速願いが叶っちゃいました。

愛は技術、ピュアは疑問と好奇心素直な気持ちが想像力を生む

石川)Charaさんも岡山に在住していたこともあるということで、また御縁を感じます。KOEのビジュアルもおかげさまでブランドの世界観を反映した素敵な仕上がりになりました。早くたくさんの人に見てもらいたいですね。それでは、早速深い質問ですけどCharaさんにとって愛とは何でしょうか(笑)

Chara)いきなり深い〜(笑)。そうですね、私にとっては愛って一言でいうと、歌うこと。古風な家庭だったので、もちろん愛情は一杯もらいましたけど分かりやすい表現はなかったかな。日本人の多くは一緒だと思うんですけど、家族で面と向かって愛してるよなんて言われることないじゃないですか。感謝の気持ちの表現も握手とかお辞儀とか、ハグなんて最近になってようやく一般化してきた言葉だと思うし。そんな中で、歌っていうのは愛を伝える手段としても昔から惹かれていたように思います。音楽には人と人を繋げる力があって、楽器の力も借りながら言葉では表現できないことを伝えることができるから。私はまだ身近な人が亡くなって失うっていう経験をしたことないんですけど、回りには結構いて、その人たちの話を聞いていても、やっぱり生きているあいだに愛してるよってことを伝えることは大事だと思う。エーリッヒ・フロムの「愛するということ」っていう著書の中で、愛するとは技術だって書いている部分があるんですけど、その通りだなって。もっと若い頃に愛は技術だなんて言われてもピンとこなかったかもしれないけど、大人になって分かる気がします。相手への愛情の伝え方ってすごく大事。恋愛でも、惹かれた理由を言葉でうまく説明されたらグッとくるじゃないですか(笑)。

石川)特に日本人は奥ゆかしいというか愛情表現は苦手なのかもしれませんね。相手への愛情を言葉で説明するというのは、考えてみるとすごく難しいことのように思います。人とコミュニケーションを図る上で、愛情に限らず自分が思っていることや考えていることをどんな手段で表現するのか。僕は二十三歳で起業してからずっと経営者をしてきましたが、年齢を重ねるほどすれてくるというか(笑)。大人になると純粋な部分が摩耗していろんな物事を少し穿った見方で捉えてしまったり、子供のような自由な発想ができなくなってくるように思うのですが、Charaさんは、イメージもそうだけれど実際にお話をしていると、すごくピュアな人だなという印象を覚えます。楽曲制作にもきっと活かされていることなのだと思いますが、大人になってもピュアな部分を維持する秘訣なんかはあるのでしょうか。

Chara)ミュージシャンやアーティストって想像力が凄い人が多いと思うんですけど、それも言ってみればピュアなんだと思うんですよね。例えば、小さい頃はいまよりも好奇心があって、何か分からないことがあればすぐに周りの人に聞いたりしていたと思うんです。でも、大人になると何か疑問に思っても見過ごしてしまったり、分かったふりをして誤摩化してしまったりする。ピュアって純粋っていうことだけれど、自分の中にある疑問や好奇心に素直でいることが大切なんだと思います。きっとそれがビジネスでも創作活動でもイマジネーションとして発揮されるんじゃないかな。

石川)ピュアでいるということは、正直でいるということに繋がるのかもしれませんね。ビジネスシーンでは特に毎日の時間やスケジュールに追われて、日常のちょっとした疑問を後回しにしてしまったり、好奇心を押さえ込んでしまったりすることもあると思います。しかし、そういった見過ごしてしまっているものの中にこそ使えるヒントやアイデアが隠れているのかもしれません。経営者としてもピュアな心を持ち続けることが大切なように思います。実はいまインタビューさせてもらっている部屋は、社員が未来について語り合う「未来妄想室」というところ。今春の東京本部移転に伴って作りました。先ほどのお話を聞いて、ここでは社員同士、普段の業務からは少し意識を切り離したピュアな気持ちで話してもらえたらと思いました。

母として子育てと仕事の両立、大事なのは時間の長さより中身。

石川)Charaさんはアーティストとして活動しながら二児のお母さんとして子育てもされています。世の中には結婚や出産、子育てを境に仕事を辞めてしまう女性も少なくはありません。もちろん、社会全体がもっと女性が働きやすい職場環境を拡充していくことは必要ですが、子どもや家族との時間を何よりもたくさん確保したい、優先させたいといった女性の思いも強く影響しているようです。Charaさんは女性の仕事と家庭の両立に対してどのように思われますか。

Chara)特殊な職業なので一概には比べられませんけど、子育てしながら仕事をする方が良い仕事ができるんじゃないかなと思います。子育てができるんなら、たとえ転職したとしてもどんな仕事でも出来る気がするし。それだけ大変なこと。私は子育てって最高のクリエイティビティだと思っていて、我が子と接する中で、あとで自分に返ってくるものはすごく大きいと感じます。新たな気づきだったり、心からの感謝の気持ちだったり。そういったものを得た人が社会で働く方が良い仕事ができるはずだし、社会にとってもプラスになる気がします。クリエイティビティと言えば、料理一つにもお母さんらしさがでてきますよね。我が子との時間が短くなることを残念がる人もいると思いますが、私は時間の長さよりもどれだけ濃密な時間を過ごせたかの方が大切だと思います。海外だと家族で食事をするのは週末だけで、ほとんどは外食という文化の国もある。ただ、週に一回の家族団らんでも、自分ならではの手料理を食べてもらったり、一緒に料理を作ったりとか、どれだけお互いにとって密度の高い時間、会話を交わせたかがやっぱり大事じゃないかな。私もツアーなんかで家を空けることもありますが、一緒にいられない時間を嘆くよりも一緒にいられる時間を楽しむことにしています。

石川)どんな状況でもプラスに考えるのが充実したライフスタイルを送る一番の秘訣なのかもしれませんね。ところで、いま着用頂いているのもKOEのワンピースですが、すごくお似合いです。若いお母さん達にもぜひ着ていただきたいですね。

Chara)いまは楽曲も無料でダウンロードできたり、ブランド物もコピー商品が出回る時代。でも、本物には目には見えないところで創作の葛藤や背景にある世界観が宿るもの。私は母親として子どもには本物を吸収して欲しいという思うし、それを伝えるのも母親の役割だと思っています。食品の安全に気を使う人は増えてきたかもしれないけど、身に纏う物にもたくさんの人が同じように心がけて欲しいですね。KOEのお洋服は、人権や労働環境、自然環境にまで配慮して作られている。そういった背景を知ってもらえれば共感してくださるお母さんは大勢いると思います。それに、コーディネイトに取り入れやすいモードテイストなので普段から着られると思うし、私はデザインも含めてKOEのお洋服気に入っていますよ!

石川)Charaさんにそういって頂けると嬉しいですね。

Chara)アンバサダーですからね、当然ですよ(笑)。

石川)この秋九月二十六日、いよいよ岡山市北区中仙道に「KOE一号店」がグランドオープンします。オープン当日は、Charaさんにインストアライブをお願いしています。KOEに期待してくれている皆さん、そして、岡山のCharaさんファンの皆さんにメッセージをお願いします。

Chara)KOEの世界観に共鳴して足を運んでくれる皆さんは、素敵な人たちだと思います。ファッションはもちろん、環境問題や世界平和なんかにもきっと意識の高い人たち。そういう人たちとなら、ライブでもいいバイブスが走る予感がしています。KOEのアンバサダーとして、ブランドの背景にあるものまで皆さんに自然と感じ取って頂けるように頑張りたいですね。岡山の皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。

Chara/ミュージシャン・女優

オリジナリティ溢れる楽曲と独特な存在感により人気を得て、ファッションでも注目を集める。1996年には女優として出演した岩井俊二監督の映画「スワロウテイル」が公開され、劇中のバンドYEN TOWN BANDのボーカルとして参加して制作されたテーマソング 「Swallowtail Butterfly〜あいのうた」が大ヒットとなる。デビュー20周年を迎えた2011年には、キューンレコードとの契約を発表。未だ制作意欲の衰えを見せる事なく、作品発表を続けている。

石川 康晴

株式会社クロスカンパニー 代表取締役社長。1970年岡山市生まれ。岡山大学経済学部卒。京都大学大学院在学中。94年クロスカンパニーを創業。99年に「earth music&ecology」を立ち上げ、現在では他ブランド含めグループ全体で1000店舗まで拡大。2011年9月には中国に進出。宮﨑あおいを起用したテレビCMでも注目を集める一方、女性支援制度の充実、地域貢献活動へも積極的に取り組む。内閣府男女共同参画推進連携会議議員。

編集者PLUG

シェアする