石川康晴の哲学塾 Vol.16
×Maynard Plant(MONKEY MAJIK)

メイナードの人間性やバックボーンに共感してファンもスタッフもすごく良い人たちが集まっている、そんな風に感じます。大切なのは「リアル」でいること。ですね!

石川)モンキーマジックはメジャーデビューを果たし、いまでも宮城県仙台市在住のバンドとして活動しています。二〇一一年に起きた東日本大震災では、バンド活動を休止してまで被災地のボランティアに取り組まれました。メジャーのアーティストが、現場で泥だらけになりながら炊き出しや瓦礫の処理をする姿に多くの人が感動を覚えましたし、僕自身もメイナードを尊敬しています。改めて、音楽活動を休止してまでボランティアを行った思いを教えてもらえますか。

メイナード)それはすごくシンプルです。バンドとしてのポリシーでもあるし、個人としても「フレンドシップイズファースト」っていうのが僕の中にプライオリティーとしてあると思うんです。もちろん仕事も大切なんですけど、人間として単純に地域や家族やフレンズのために何かしなくちゃいけないっていう思いの方がすごく強いんです。震災の時は状況的に仕事なんて考えられる状況じゃなかった。事務所には迷惑をかけましたけど、普通に会社に勤められている方に比べても被災地のために行動しやすかったということもあります。でも、それはロジック的な説明で、正直音楽なんて役に立たないと思ったんです。家を直せる人とか、お医者さんとか、人を助けられる人たちがとても羨ましく見えました。僕がギター片手に歌っても何にもならない。もちろん、もっと状況が落ち着いてくれば音楽が人を癒す事もできるって言う事を分かっていても、悲観的にならざるをえなかった。一番強烈だったのは、捨てる物と捨てない物を分別するときに、CDは捨てる方に回ってしまう、ゴミなんです。自分が同じ状況でもそうしたと思います。ボランティアに勤しむ中で、音楽ってどうでもいいとまで思うようになる時期もありました。

石川)あれだけの震災のような急事には、何が重要で何が重要でないかが厳しく現れる。それをメイナードは強烈に感じたんだと思うんだけど、毎日ボランティアに通う原動力はどんなところから湧いてきたのでしょうか。やっぱり喜んでもらえる事へのやりがい?感謝される事へのやりがいが繰り返しに繋がったのでしょうか?

メイナード)ボランティアに行くときに、最初は正直もっと暗い雰囲気なのかなと思っていたんです。家族を失った方もいるし、家が無くなってしまった人もいる。もちろん元気では無いんですが、行ってみるとみんなすごくポジティブなんです。それに、自分のお弁当を持って行くと、被災地の人が、僕が持っていったお弁当よりも立派な食事をありがとうっていって自分の分を僕にくれるんです。すごい人たちだなって。逆に被災地の人に自分が励まされたような気がしていました。

石川)東北の人の優しさが、逆にメイナードのモチベーションになったという事ですね。クロスカンパニーも早期から復興支援という事で被災者一〇〇人雇用や全店舗への募金箱設置など、様々な支援事業を展開してきました。震災直後には被災地域で勤務する社員の実家を訪問して励ましに回ったりもしましたが、東北の人たちはたくましく、どんな状況でも他人を大切にする素晴らしい人柄に出会いました。秩序を保って毅然と行動する国民性は世界からも賞賛されましたが、日本が誇るべき人たちだと思います。

メイナード)僕の場合は特に仙台の人たち。強い人たちを目の当たりにして、自分が仙台で活動していて良かったなと心から思えたし、誇りに思えました。毎日八時間くらいの作業でしたけど、どんなに泥だらけになっても、クタクタになっても被災者の人たちの苦しさに比べればこんなの何でもないって。自分が何か素晴らしい事をしているんじゃなく、当たり前の事をしただけなのに、逆に勇気をもらいました。震災をポジティブに捉えるのであれば、そういう東北の人の素晴らしさとコミュニティの強さを再確認させてくれた事だと思います。改めて仙台が大好きになりました。

石川)震災からどのくらいして本格的に音楽活動を始めようと思い始めたのでしょうか。

メイナード)五ヶ月くらい経ってからです。震災後初めて楽器を持ったんですけど、演奏してもなかなか気持ちが入らないというか。音楽って楽しいなんて浸れる気分にはまだなれなかったんです。少しずつ仙台が復興していく中で、自分がまた音楽活動を始めるとき、「音楽っていいよね」じゃなくって「音楽を使っていかに人を助ける事ができるか」っていうツールに変わっていました。メンバー四人で、いかに音楽でお金を集めて被災地の役に立てるか。イベント名もすごく考えました。Tシャツやグッズを作って売れればお金になる、そういう意味でイベントのタイトルの考え方や演奏する曲順まで変わってきました。そこで生まれたのが、東日本大震災復興支援プロジェクト「SEND愛」です。チャリティーライブSEND愛、最初のライブは大阪で開催しました。すごくたくさんの人が集まってくれて、チケット代だけじゃなく設置した募金箱にもたくさんの寄付をしてくれた、本当に感謝しています。もちろん、いざステージに立てば純粋に音楽を楽しむ自分やお客さんに喜んでもらいたいっていう気持ちで歌っている自分がいるんですけど。ここまでのヒーリングプロセスは少し長かったです。すごく良いお客さんで、ライブをしていてだんだん歌う事の楽しさも蘇らせてくれました。悲観的じゃなく、いまでも音楽ってどうでもいいよねって思っていますけど。少しずつ、自分が歌う事の意味があるのかなと思えるようになってきていると思います。

石川)ミュージシャンならではですね。その場のオーディエンスが音楽の力を再確認させてくれた。そんなライブを経て、改めて曲作りを始めようと思ったきっかけは?

メイナード)フレデリック・バックというカナダのアニメーション作家さんが昨年の十二月に亡くなりました。スタジオ・ジブリにも影響を与えたと言われている人なんですが、震災前に曲を書いてくれないかと依頼されていたんです。しかし、あの大震災が起き、僕がボランティア活動をしているのも知っていたので作曲の話はそのままになっていました。彼が亡くなったのを受けて、もう一度彼の作品を見たんです。代表作に「木を植えた男」という作品があるのですが、人知れず荒野で植樹を続ける男を描いた作品で、彼の行動により森が再生していくというストーリー。それを見て、震災の復興とも重なり、自分の中で何かミステリアスな力が働いているような気がしてなりませんでした。もちろん、まだまだ以前のような気持ちで百パーセント曲を書けている訳ではないのですが、彼の作品がやらなければいけないと気持ちを駆り立ててくれました。未来に希望を持とうと。

石川)アーティスト同士、何か見えないところでインスピレーションを交換し、メッセージを送り合っているのかもしれませんね。ところで、被災地のボランティアもそうですが、もう一つメイナードにすごく感動させられたことがありました。テレビのニュース番組で見て知ったのですが、震災後いち早く台湾でライブを開催して現地の人たちにお礼を言っていましたよね。テレビの前で感動したのを覚えています。震災直後に、各国からも義援金が送られてきましたが、当時台湾はアメリカやそのほか大国よりも遥かに多くの金額を日本に送ってくれました。国土で考えても人口で考えても、凄いことだなと思っていたんです。本来なら総理大臣や国家の要職がまずお礼を言ってもいいほどのことなのに、誰よりも早く現地に訪れ、ライブでお礼を言うメイナードの姿はさながら日本代表のように映り、友人としてとても嬉しかったし誇らしかった。私も台湾からの多大な援助を知って何か恩返しをしたいと考えていましたがアパレルでできることがなかなか見つからなかった。音楽という表現方法に羨ましさも覚えます。

メイナード)全世界からの義援金の額を何かのきっかけで知って、凄すぎて驚きました。聞いたところによると、政府までも国民に訴えて国を挙げて寄付を送ってくれたのだとか。本当に感動しました。たいした事ができたとは思っていませんが、ただただありがとうを言いたくって。この台湾でのライブも、音楽って少しは役に立てるのかなっていう事を教えてくれました。以前からラブコールを頂いていたこともあって実現したライブなので、ぜひまた訪れたいと思っています。

石川)思い返すと、メイナードとの出会いはアース&ミュージックエコロジーのCM制作がきっかけでしたね。宮﨑あおいさんを起用する前の、同ブランド最初のCMソングをメイナードのソロプロジェクトであるblanc.から楽曲提供してもらいました。これはライブにも行く一ファンとして教えてほしいんですが、メイナードの音楽はどのようなタイミングやきっかけで、変化してきているのでしょうか。最初のblanc.の頃はリスニングにも心地よいハウスミュージックの要素が強かったように思いますが、モンキーマジックとしてはJPOPでもあり、ロックでもある。いろんな要素を持ち合わせていますが、アルバムをリリースするごとに、リスナーとしてその音楽性の変化を感じています。最新アルバムの「DNA」もすごく進化しているなっていうのを感じて。個人的にも全体のメロディラインが気に入ってヘビーローテーションで聴いてますよ!

メイナード)出会う人たちに影響を受けています。最初の頃は同じ仙台在住のアーティストFreeTEMPOこと半沢武志さんの影響があったと思います。実際に半沢さんのアルバムの中で歌わせた頂いた事もあって。それがきっかけでblanc.の活動が始まりました。自分がこのジャンルや音楽性でやっていきたいというよりは、人との出会いによるところのほうが大きいと思います。m-floのTAKU TAKAHASHIさんやFantastic Plastic Machineの田中さんなんかともフューチャリングさせてもらう中で大きな影響を受けました。モンキーマジックは基本的にはJPOPロックという路線を踏襲していたのですが、今作の「DNA」は、メンバー四人のバイオリズムがちょうど重なって生まれたサウンドという感じがしています。それぞれがシークレットで好きだった音楽だったり、日常生活の中で感じたお互いのインフルエンスが調和したアルバムだと思います。震災以降、曲の書き方も変わりましたが、歌い方も変わりました。例えば、「アイシテル」や「あいたくて」もこれまでと違う意味を込めて歌っています。バンドとしても進化できたんじゃないかな。

石川)僕自身JPOPも大好きなんですけど、人前で聞いたり、部屋でリスニングしようとした時に、何だか気恥ずかしさを覚えるようなこともあると思うんです。でも、メイナードの曲は、英語詞の曲も日本語詩の曲も、どれもすんなり入ってくる。流すだけで空間をクールに演出してくれるような力があると思うんですよね。毎日聞いていますよ!僕の車には、メイナードのCDが常に置いてあります(笑)。

メイナード)こんな言い方は生意気ですけど…センスいいですね!(笑)ありがとうございます!

石川)昨年はアジア・北米など初のワールドツアーも大成功したようですね。昨年の十二月二十三日に僕もコンサートを見に行かせてもらいましたが、小さな子どもから四十代、五十代まで客層がかなり幅広いなということを感じました。更に、何だか知的でインテリジェンスを漂わせるような人が多かったように思います。もちろん、メイナード達の音楽が好きで集まっている事は間違いないですが、ボランティアや音楽を通じて復興支援までするバックボーンや人間性に共感した人たちがファンとして応援してくれているんじゃないかと。すごく品が良いお客さんばかりでしたね!ただ、MCで「皆さん、今日は天皇陛下の誕生日です」って言ってた、あれはすごく衝撃でしたよ。

メイナード)カナダと日本のハイブリッドバンドというネーミングで音楽活動していると面白いオファーも頂けるんですよ。以前、日カ修好八十周年で天皇皇后両陛下がカナダを訪問される際、そのパーティーの席で演奏させてもらうという大変貴重な機会を頂きました。更に、その後各テーブルに分かれて食事をするのですが、何と美智子さまのお隣に座らせていただいて。英語も堪能な方で、緊張している私にとても気さくに話しかけてくださいました。光栄なことですし、ファンになりました!それで、ついつい。

石川)モンキーマジックは、メイナードの弟ブレイズと、日本人ドラマーのタックス、ベーシストのディックで構成されるバンドですが、コミュニケーションする上で気をつけている事なんかはありますか?

メイナード)四人ともすごく仲が良いんですよ。ケンカもありますけどほとんど兄弟喧嘩ですね(笑)。僕があまり意見を通しすぎないように気を使っている部分はあるかもしれません。バンド結成を呼びかけたのは僕だし、立場的にも比較的意見が強くなりがちなので。何かを決める時に多数決になったとしても、マイノリティを否定しないようにも気をつけています。

石川)この企画は、ゲストの哲学を訊いていくということをコンセプトにしています。僕は「Think different, Just do it.(人と違うことを考え、そして即行動!)を大切にしているんだけど、メイナードが人生の中で大切にしているのはどんなことでしょうか。

メイナード)人間て、こうでありたいっていう願望があると思うんですけど、目標としているのはリアルであることです。人の前でしゃべる時、インタビューを受ける時、家族といる時、何かをしている時、それが全てリアルじゃないといけないと思っています。かなり若い時からこのことは意識していますね。例えば、高校生のときお父さんが変な車で迎えにきた時に「恥ずかしい」と思ったらそれはリアルじゃないんです。横に友人がいて、恥ずかしくても自信を持って自分のお父さんだよって言える事がリアルなんです。リアルだと思っていれば恥ずかしくないはずだから。できない時もありましたけど。彼女の前とかだと「お父さんちょっとあっち行って」みたいな(笑)。リアルでいるっていうことは、自分の人生のテーマの一つでもあります。

石川)人間どうしても自分を格好よく見せたいとか、良い人間に思われたいっていう感情があるものですが、それを抑えて等身大の自分を受け入れるというのはすごく良い哲学ですね。最後に、仙台という地方を拠点に活動するメイナードから、同じく地方都市である岡山で頑張るバンドマンやミュージシャンにメッセージをお願いします。

メイナード)岡山には何度かライブで行った事がありますが、街もクールだし、何よりお客さんがすごく熱気に溢れていて感動したのを覚えています。すごくパワフルでした。モンキーマジックとしてもまたぜひ訪れたいですね。仙台も音楽が盛んですが、岡山の方がずっと前からミュージックシーンは盛り上がっていると聞いています。すごく素晴らしい街に育てられているんだということをラッキーだと思って、チャンスを掴めるようにこれからも頑張ってください。

石川)僕もファンの一人として、メイナードの益々の活躍を期待しています!

Maynard Plant (MONKEY MAJIK)

仙台在住の4ピースハイブリッドロック・バンドMONKEY MAJIKのヴォーカルとギターを務める。2011年1月には 「東北観光親善大使」 に任命されるなど、東日本大震災復興支援プロジェクト 「SEND愛」 を主催し東北復興支援に向けた活動を継続している。また昨年は、アジア・北米など初のワールドツアーを成功させるなどバンドとして精力的に活動を行っている。ソロ活動時のアーティスト名は「blanc.(ブラン)」。

石川 康晴 

株式会社クロスカンパニー代表取締役社長。1970年岡山市生まれ。95年クロスカンパニーを設立。earth music&ecologyを立ち上げ、現在では他ブランド含め、国内店舗数約560店舗まで拡大。一方、女性支援制度を中心とした社内制度の充実、環境活動や地域貢献へも積極的に取り組み、東日本大震災で被災者100人の雇用を行ったことでも話題となった。内閣府男女共同参画局推進連携会議議員。国立岡山大学卒。

編集者PLUG

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