田中知之(FPM)SOUND CONCIERGE_vol.03

第三曲「ホテルと音楽の在り方」

「New Basic For New Culture」をコンセプトとしたライフスタイルブランド「koé」。2018年1月、渋谷のど真ん中にブランドコンセプトを体現する場としてhotel koé tokyoが誕生した。設計・デザインは谷尻誠、吉田愛が率いるサポーズデザインオフィス。ステイ/ファッション/ミュージック&フードの3つのキーワードを軸に、「今」と「未来」、「日本」と「世界」、そして「日常」と「非日常」が相反しながらも融合する、まったく新しい文化を創り出すことを目的としたホテル併設型の複合施設だ。海外からも注目を集め、いまや渋谷の新たなランドマークとしてすっかり定着した感がある。田中氏はオープン時から何度もDJとしてここでイベントに出演しているが、日中の来店は実は初めてだ。「〝ラウンジ・ミュージック〟というジャンルが確立しているように、ホテルと音楽は切っても切り離せないもの。でもかなり長い間、たとえば、インストゥルメンタルなどの単なるBGM的な位置づけは否めなかったんです。それを一変させたのがニューヨークの『ソーホー・グランド・ホテル(Soho Grand Hotel)』に代表される新しいコンセプトのホテル。何年も前、アメリカのツアー中にそうとは知らずに訪れる機会があったんですが、これまでの単なるBGMとは違ってもっと音楽がホテル空間の中心に据えられていたことが当時は斬新でした。小ぢんまりしたダンスホールも設けられていて、『これはすごいな』と。自分自身が早い時期からそうした体験をしていたこともあって、『日本でも早くこんなホテルができないかな』と思っていました。ここ数年で、『hotel koé tokyo』の他にも、渋谷神宮前の『TRUNK(HOTEL)』など、ただ〝泊まる〟だけでない新しい価値観を創り出しているホテルが次々と登場しています。特にここは食と酒、音楽のどれもがほどよく溶け合った、バランスのいい空間に仕上がっているなという印象です。」田中氏による「FPM」は〝都会で生活する人のサウンドトラック〟というコンセプトを掲げてスタートされていますが、ホテルという生活空間でのDJはまさに腕の見せどころではないかと。2月に開催された1周年パーティーでもフロアを心地良く揺らすプレイは流石でした。「『hotel koé tokyo』はロケーションといい、コンセプトといい、1年前のオープンの時はそれはそれは騒がれましたよね。まさに鳴り物入りでの登場。スピーカーも単なるBGMのための機材ではないし、入り口から〝音楽ありき〟っていうのはすごい。オープン前から話題性あるアーティストのブッキングもすでに決まっていたし、音楽に対する並々ならぬ熱量を感じます。渋谷に〝音楽との出会い〟を新しく創ってくれた。新たな発信の場を与えてもらえて、DJとしては本当にありがたいと思います。」本日は併設されたベーカリーレストラン「koé lobby」で人気の「グラタンランチ」を召し上がって頂きながら選曲をお願いします。「実は昼間に訪れてきちんとメニューを頂くのは初めて。こちらはパンが有名ですが、エビグラタンにあえてコロッケが付いているのがいいですね。それでは、本題に。今回はジェイムス・ブレイクの最新アルバム「Assume Form」から「Don’t Miss It」を選曲します。ジェイムス・ブレイクはエレクトリカル・ミュージシャンとして評価が高いのですが、今回のアルバムを聴いても、とても優れたヴォーカリストでもあることを再認識させられました。ジャズシンガーでありトランペッターでもあるチェット・ベイカーを思わせる。トラヴィス・スコットをはじめ、メトロ・ブーミン、ロザリア、アンドレ3000と、これまで発表した3枚のアルバムにも増して意欲的なゲストを迎えたニューアルバムですが、ゲスト陣のそれよりも、彼自身の歌声がとても素晴らしいものに仕上がっています。とはいえホテルのBGMとしては少しエキセントリックで、エクスペリメンタル・ミュージック(experimental music:実験的音楽)であるかもしれません。でもそこはあえて、この世界的にも新しい形態のホテルに似合う1曲として選んでみたいと思います。」

田中知之(FPM)/DJ,プロデューサー

‘97年『The Fantastic PlasticMachine』でデビュー以降、8枚のオリジナルアルバムをリリース。リミキサーとしても、FATBOY SLIM、RIP SLYME、布袋寅泰、くるり、UNICORN、サカナクション、Howie Bなど100曲以上の作品を手掛ける。『オースティン・パワーズ:デラックス』や『SEX AND THE CITY』への楽曲提供の他、村上隆がルイ・ヴィトンの為に手掛けた短編アニメーションの楽曲制作や、世界三大広告賞でそれぞれグランプリを受賞したユニクロのウェブコンテンツ『UNIQLOCK』の楽曲制作を担当するなど、活躍の場は多岐に渡る。DJとしては、日本国内はすでに全都道府県を制覇、海外でも約60都市でのプレイ実績を誇り、近年でも出演イベント数は年間100本を軽く超える。国内の有名フェスは元より、米国のコーチェラ・フェスティバルやイギリスのレディング・フェスティバルなど海外の有名フェスへの出演経験も多数。ジャンルという固定概念に縛られる事の無い豊富な音楽知識に裏打ちされたプレイスタイルは、国内外のハイブランドのパーティーDJとしても絶大な信頼を得ている。http://www.fpmnet.com

編集者PLUG

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